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帰ってきて、そして・・・

鳥のさえずりが聞こえる。朝日が差し込む。


「・・・」


ルナはベッドの中で身を捩った。そして・・・


「あれっ!?家だ!」


がばっと起き上がった。彼女の中ではつい先程まで魔界の王バエルの宮殿の中だったはずだった。


「あれ?あれれ?じゃあ私の・・・えーっと、命名式だっけ、それはどうなったんだろ?」


命名式で自身の悪魔としての力と姿を確立したはずだった。

そこで自分の中の魔力を体に循環させるようにしてみる。


「うーん、えーっと、あ、あれ?」


別に何ともない。特に何も感じない。不思議に思いながら起きて着替えるととりあえず朝ごはんにしようと部屋を出ようとした時だった。


『連絡!連絡!』


窓をコツコツと叩く音が聞こえた。それと何やらカタコトの声も。


「誰かな?」


窓を見るとカラスが便箋を足に掴んで窓を叩いている。ルナが窓を開けてあげると中に入って便箋を渡すとそのまま飛び去ってしまった。


「?」


2つ折りの便箋は白紙だったがルナが広げてみると文字が浮かび始めた。


『おはようルナちゃん。いえ、若き悪魔ブリヴァルというべきかしら』


筆跡に見覚えがあった。おそらくこの筆跡はルルイエだろう。魔法なのかリアルタイムで文字を書いているらしい。


『若き悪魔ブリヴァルよ、バエルである。突然の便りに驚いているだろう。しかし私のような者は手紙くらいしか連絡が出来ないのだ。』


突然ルルイエの文字を押しのけるように力強い筆跡が。名前を見る限り命名式に参加してくれた魔王バエルのようだ。


「なんで二人が同時に・・・」


『ちょっと!割り込まないでよ!』

『貴様こそ控えろ!お前は直で会いに行けるだろうが!控えろ!』


そう思っていたルナの疑問に答えるように文字が交互に現れては消えるのを繰り返している。


(なにやってるんだろう・・・)


途中から自分そっちのけで手紙の文面で喧嘩を始めた二柱。勝手に横線を引いて消しに掛かったり、文字を被らせて読めなくしたり、高度な魔法と道具を使っている筈なのにやってる事が幼稚極まりない。


「まだ挨拶しかしてないのに二人とももう私のことどうでもよくなってるような・・・」


読んでいるだけのルナにこの手紙に干渉する術があるのかはわからない。今現状凄く困っているのに反応がないのはやはり筆跡以外では連絡ができないのだろうか。


ルナは埒が明かないと察し、机に向かうとペンを取った。


「えーと・・・『喧嘩しないでください』っと」


試しに書いてみた。すると・・・インクがすっと沁み込むように消えた。ルナがおおっ!と興味を惹かれていると。


『ほら怒られたじゃん!ジジイのくせに!』

『師匠面してるくせに幼稚なお前が悪い!』


「悪化した・・・」


さっきよりも何割か増えたやり取りが。ルナは結局なんの用事なのかわからないまま椅子に座ってぼーっと文字の羅列が浮かんでは消えるのを見ていた。

やがてお腹が鳴ったので『ご飯食べてきます』と書いて席を立った。



「おはよー」

「おおっ、ルナ?ルルイエ先生と出かけたのでは?」

「向こうで寝ちゃったから先生が送ってくれたみたい。今すごい魔法の手紙でお話してるんだけどほかの人と話し始めちゃったから先にご飯食べる」

「いいのかほっといて」


リビングで朝食をとっていた父親が不思議そうにしていたが当の本人が悠々と朝食を取り始めたので何も言わないことにした。魔法の世界に入ると便利を通り越して不思議な事が起こるものだ。

エルドは魔法関係の、特に治安維持や戦闘、調査の仕事に長く携わっていたのでそういったものの感覚がちょっと麻痺していた。


「あら、ルナ?帰っていたの?」

「うん、ルルイエ先生に送ってもらった」

「そうなの・・・?やっぱり魔法って便利なのねぇ」

「時々隔絶した使い手がいるものだがやはり先生は想像を超えているな」


母親のアリシアは自分用に焼いたパンをルナがむしゃむしゃ食べているのに気付いてエルドの言葉に相槌を打ちつつ再度自分のパンを焼き始めた。エルドが良く食べるのだがルナもそれが遺伝したのかよく食べる。


「もぐもぐ・・・ごくん。ごちそうさま」

「あら、もういいの?」

「うん、そろそろ先生たちのお話も落ち着いてきたと思うから」


アリシアはルナが何を言っているのかよくわかっていなかったがぱたぱたと自室に急いで戻る彼女を首をかしげながら見送った。



「よいしょっと、どれどれ・・・」


ルナは戻ってくると机に向かって再度便箋を見る。すると・・・


『ごめんよー、返事書いてー』

『ごめんねー、何かかいてちょうだーい』


流石に時間が空いたからか喧嘩は収まっていたが別の方向で書き込みが凄い事になっていた。


「わ、凄い量・・・『ただいま戻りました』と・・・」


びっしりと返信を望む文字で便箋が埋まりつつある。それを避けて書き込んでみると埋め尽くされていた文字が整理されて今回の用件がやっと始まった。


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