あの日、何が起こったのか
『ええと、まずは昨日のことからルナちゃんに説明するわね』
ルルイエの書き込みから始まった昨日の命名式の顛末についてである。
大悪魔六柱が集まり、全員の頭文字を一つずつ上げて(ここ重要!とのこと)名前を決めた。その結果先程の『ブリヴァル』に決まったとのこと。
「寝てたからわからなかった・・・」
『前代未聞過ぎてもう語り草よ』
『どっかの誰かがごねるからいかんのだ』
『は?』
『あ?』
「ㇲトーーップ!!次やったらもう見ませんからね」
『『ごめんね』』
話が進まないと思ったルナから待ったが掛けられ、再び話は戻る。
『ルナちゃんは呪術に関しての知識とか、耐性とかが未知数なとこあるから真名を隠さないといけない』
「真名を隠す?」
自分の名前を名乗るといろいろとややこしそうだし、今度は人間としての身バレが怖いところである。
それだって呪術の紐づけ程度には十分に効果があるだろう。そう思っていたルナにバエルが補足する。
『隠すといっても名乗らないわけではない。メジャーなのは逆さ読みとかじゃ。文字に意味があり音にも意味はあるが順番を入れ替え、文字をバラせば名を使った呪術は容易く避けられるのじゃ』
BRIVALと浮かび上がった文字。それを逆さに変えて
「ラヴィルブ?」
『ルルイエの文字とバレると悪魔受けがすこぶる悪いので省くべきじゃろう』
『なんでよー!』
『頭文字を省くことでイメージアップしつつ、名前から彼女の容姿を探られぬようにする』
「イメージアップ・・・?」
ルナはきょとんとしていたがアモンが教えてくれたことが事実だとするならルルイエは魔界では相当な嫌われ者らしい。だとすると確かに抜いたほうがいいのかもしれないが・・・。
「可哀想じゃありませんか・・・?」
『ルナちゃん優しい!ほんとそれよ』
『通り名でわざわざイメージダウンする可能性あるの厄ネタすぎるじゃろ。却下じゃ却下』
「書かなかったら・・・は無理か・・・そうなるとアナグラムとか・・・」
『そうじゃのう・・・そうなると真ん中の文字を入れ替えて・・・Barvil、バービルとかどうじゃ?』
『・・・いいんじゃない?ルナちゃんは?』
なにか含みがありそうな書き方にルナは少し嫌な予感がしたがバエルは自分の名前が頭文字のままなのでうれしそうだ。
『それではBarvilで決まりじゃな!それではワシは仕事があるでな、失礼する』
『それじゃあねえ・・・くくく』
バエルはどうやら仕事があるようだ。最後の書き込みが沁み込むように消えるとそれきり何も書かれなくなった。
ルナは悪魔になったこと、そしてそれに重ねて真名、そして今通り名が決まったことにちょっとワクワクしていた。
「バービルかぁ、ちょっと書いてみます!・・・えっと・・・あれ?」
ルナがBの文字を書こうとすると何故か消えてしまった。残ったのはARVILの文字だけだ。
「Bが消えちゃう・・・なんでだろう?」
『ふふふ、お爺ちゃん自分の文字が使われるのに嬉しすぎて失念してたみたいねぇ』
「どういうことです?」
『バエルの名前を自分の名前の一字として使える悪魔は限られるわ。真名と順番が一緒だし、『隠す』って自分で言っちゃってるから真名を明かすときじゃないとルナちゃんは名前にBの文字は使えないわ』
どうやら名前の複雑なルールに触れてしまったようだ。しかしそれでは何故ルルイエは大丈夫なんだろうか?
『私が大丈夫なのは簡単よ、私は魔界で役職についてないもの。それにルルイエは長く使ってるけど真名じゃないし』
「そうなんですか?」
『魔法使いを自称するものが真名で会話やサインなんかするわけないでしょう?ルナちゃんもこれから悪魔として生きていく際にはそれを使いなさいな』
残った文字、ARVIL。読むとアービルになるだろうか。
『書いてるけど目視されない文字、他者には書けない文字。真名隠しには持ってこいね・・・くくっ』
してやったりといわんばかりのルルイエ。自分の文字は残しつつバエルの文字を名前から消せたので嬉しいらしい。
(結果としてアモンさんが頭文字になってるけどそれは言わない方がいいんだろうな・・・)
そんなこんなでルナの悪魔としての通り名が決まった。
三種の生物の特徴を持つキメラ型の悪魔、アービルである。後にバエルの孫だのルルイエの愛弟子だの。清らかな悪魔だの色々な名で呼ばれることになる。




