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命名式とは?

ルナの顔色が戻るのに少しばかり時間が掛かったがその間に再び馬車を取って戻ってきた御者はルナを乗せて再び宮殿への道を進み始める。


「ホントにもう喧嘩しないでくださいね」

「『ごめんなさい』」

「グォン」


二人と1頭がそれぞれ反省しているようなのでルナも気にしない事にして馬車の座席に背中を預けた。


(今日、私は悪魔として本当の意味で生まれ変わるんだよね・・・)


普段ならば乗るはずのない豪奢な内装の馬車の中、ルナは突然の変化にずっと戸惑っていた。元々かなりの楽天家であり、父親の前向きな性格と母親の暢気な性格を受け継いでいる彼女は多少の困難や変化には動じない図太さを持っている。

現に悪魔になる為の儀式であれほど酷い目にあったにもかかわらず数日も経てばその事をさほど気にせずに熟睡できるほどには。


それでも現在進行形で大きなイベントがあるとなれば緊張もする。しかもルルイエが言うにはかなりの大物が待っているのだそうだ。しかし悪魔が凄いと言われたところで学生の知識ではそもそもたかが知れている。

とにかくすごい人、っていうか悪魔が自分の為に命名式という儀式を行ってくれるそうだ。


(えっと、それで・・・命名式ってなんなんだっけ・・・名前を決めて、それで・・・)


正直一杯一杯だった時の話だったし、その後も満身創痍だったしで記憶が色々とふわっとしていた。

さらにその後誘拐騒ぎの被害者としてバタバタしていたし、もっというならもしも事件がなくてももうじき新学期だったのである。どこをどうやっても忙しいしかない時期なのだ。

その中で自分が何か、悪魔についての才能があることがわかって、それで現状を打破するためにその力が必要で、その為にルルイエが用意した儀式を行って悪魔としての仮の姿を得て、それからすぐに誘拐されそうになって。

その後にようやくというべきか命名式という悪魔になった人には避けて通れない重要なもう一つの儀式があると聞かされてこうやって連れてこられたのだ。


「もうじき到着です」


ぐるぐると考え込んでいたのを御者の言葉が引き戻した。ルナが顔を上げると遠くに見えていた宮殿がもうすぐそこまで近づいていた。

西洋風の宮殿は厳めしく、屋根は金属なのか見たこともない色に輝いているし、働いている人も皆人外の特徴を備えている。門を守る番兵も巨大な獣の特徴を備え、まるで柱のような大きさのポールアクスを担いで侵入者を許さない構えでじっとそこを守っている。


「お城だ、ホントに・・・私ここに入って良いの・・・?」

「もちろん、貴女を招いたのは他ならぬここの主ですから」


それを示す様に馬車が迫ると門番はその体躯をもって巨大な門を開き、馬車を招き入れる。


「お疲れ様です」


通り抜けざまに思わずそう言って頭を下げたルナを見て門番は少し目を見開いたが当然のことと言いたげに荒い鼻息で応えた。


「すごいとしか言えないなぁ・・・」


そう呟きながら後ろを振り返ると門が既に閉じていてルルイエと門番が揉める声が聞こえてきた。


「また・・・」

「彼女は全方位に嫌われてますからね」


やがて門をすり抜けて追いついてきたルルイエ。うんざりした様子で馬車の後ろを飛んでいる。


「到着です、それでは補助しますので」

「はい、お願いします」


宮殿の玄関口に到着したらしく馬車はそこで停車した。ルナは御者の手を借りて馬車を降りてみると宮殿の大きさに改めて驚いた。彼女の記憶にはこれほど大きな建物は見たことがない。


「おっきいですねぇ・・・」

「我が主は大きな方なので」


御者はそう言うとお城を見上げてぽかんとしているルナを見て笑みをこぼした。


『さて、少し遅れてしまったから中に入りましょう』

「待ちなさい」


ルルイエがそう言うとルナを連れて玄関を潜ろうとする。それを御者が制した。


「あなたに任せるとまた面倒が増える、ここは・・・」


御者はそう言うと外套を脱いで馬車に掛けると髪を撫でつけて服装を整えるとまるでテクスチャが切り替わるようにして服装と風貌が一変した。


「魔界の序列第二位のアモンが引き続きご案内するのが最良かと」


鳥の意匠をこらした帽子とスーツを纏い、ネクタイを整えながら言う。


「えっ、御者の、人・・・っていうか悪魔の方が?」

「ええ、そうです。他の者に任せても良かったのですが・・・生憎と彼女が居ると皆嫌がるので」

『根性無し、プロ意識ってもんが無いのかな?』

「もう少し品行方正に生きてくれませんかね」


ルルイエはまったく悪びれた様子もなく不満顔だ。ルナは何をやったら此処まで嫌われるのか不思議でならなかった。

ルナとルルイエはアモンの案内で宮殿の玄関を潜った。



「ここが命名式を行うための祭壇になります」


そこから長い廊下を歩き、大理石の床を三人で歩き通してたどり着いたのはまるでドームのような広い空間に床よりも一段高くなった石の舞台。そしてそれを囲むように作られた円形の足場。それらは床に引かれた線で繋がっており六芒星を描くようになっている。

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