三者面談的な・・・?
魔法使いとは、本来ならば仙人のようにへき地に籠ったり、土地の地脈や鉱物を利用して魔術の研究をしたりすることが多い。魔法使いの大半は基礎基本を独学で行うものが多いために流派などが多岐にわたり、実力などもピンキリである。
「それに対しての例外といいますと師事した魔法使いの横のつながりや師匠同士の交流によって広がった人脈などがありますよ」
「そうなんですか・・・私は神官の出自なのでそう言ったことには疎くて・・・」
「仕方ありませんよ、魔法学校の歴史だって魔法の歴史から見ればずっと短く新しいんですから」
実際師匠に恵まれず鳴かず飛ばずで人生を終えた魔法使いもいるし、魔法使いくずれとなって社会に迷惑をかけてしまう人物も。魔法学校ではそういった事を踏まえ、魔法使いの卵たちに少しでも真っ当な知識を持たせて社会で生きていけるようにするために日夜努力を重ねているのである。
「私は特に色々と特殊でしてね。へき地とへき地を繋いで魔法の研究のやり取りを繋いだりして交流を持ってきたんです」
アリシアはルルイエの空間を跳躍する能力を見ていたのでそれで納得した。普通の人間なら何カ月もかかるような距離を繋げるのであれば確かに彼女が色んな土地の魔法使いたちと交流を持っていても可笑しくない。
そして母親としては魔法使いを志している娘にそういった人たちに名前と顔を覚えてもらうのは何かと役に立つだろうとも考える。
(私の見習い時代と同じ感じなのかしら?各地の行事や祭事に参加してお手伝いしながら各地の教会の人と交流したし)
自分も神官の見習いをしていた際にミサや各土地の祭事を手伝う事でいろんな土地の人たちと交流してきた経験があった。
「それで明日当たりにそれを済ませて、ルナちゃんに勉強してもらおうと思って」
「そうなんですね、わかりました。それで、どれくらいかかりそうでしょうか?」
「うーん、泊まりになる可能性もあありますので多少の準備は必要かもしれません」
「大変!それじゃあ急いで支度しないといけない!」
アリシアはルルイエに泊まりになるかもと言われて慌てて立ち上がるとパタパタと走って行った。
そして、数分後。
「これで大丈夫かしら・・・?」
「あの、泊まりと言ってもちゃんと屋内ですが・・・?」
「え、そうでした?てっきり・・・」
どうみても野外向けの装備を持ってきたアリシアにルルイエがそう言うとアリシアはあっ、と言った様子で恥ずかしそうにうつむいた。
「お母さん、準備は自分でするから大丈夫だって」
「そ、そうよね、でも大丈夫?幾つかは持っていた方がいいんじゃない?」
「先生の魔法で移動するなら歩くかも怪しいよ?」
アリシアはそこまで言われるとさすがに引き下がり、キャンプ道具をそのまま片付けた。
ルルイエは真面目に着替えなどを用意させてしまっていることに色々と思うところはあったがとりあえずルナのお泊り込みの外出許可が出そうなので一安心。
「それじゃあ明日、朝に迎えに来ますので」
「はい、先生!」
ルルイエはそう言って家の外に出るとそのまま景色に溶けるように消えてしまった。
「なんだか掴みどころのない人ね」
「・・・そうかも」
ルナはルルイエの不思議な魅力というか、使う魔法などの特殊さを見て同意していたがアリシアはルルイエの中にあるなにか仄暗いなにかを見ていた。
実力というか、そう言ったものではないのだが不思議で底が知れないのだ。
(ルルイエさん・・・私も調べるべきなのかしら)
夫のエルドが偶然見つけてきたというあの女性。ともすればあれは女性・・・というより人間なのだろうかとも思える。
エルドとルナはあまりそういった違和感を感じていないらしいが、日光教の神官という出自がそうさせるのかアリシアは神秘に対して1歩引いた態度が自然になっている。その培った知識や直感がルルイエを不思議な存在として捉えているのだ。アリシアは悪魔祓いの補佐をしていた経験から悪魔や悪霊に対して自分のできる事も良く分かっており、どうしようもない存在には善悪に関わらずあまり深入りすべきでないとも。
(ルルイエさんはちょっと得たいが知れないけど・・・ダメというにはもう遅すぎるわよね・・・)
しかし既に娘はルルイエと師弟の関係であるし、夫のエルドもそれを認める形でもある。聖人との繋がりも持ってきてくれた存在ではあったが、逆にそれがルナがこれから経験することの過酷さを暗示しているような気がしたのだ。
「ルナ」
「ん?どうしたの?」
「辛い事やしんどい事があったら、迷わず私にも相談してね?」
母親のお願いにルナは少し不思議に思ったが自分の中を見透かすような、それでいて自分を心から心配してくれているアリシアにルナは笑顔で頷いた。
「わかった」
「うん、ありがとうね。きっとよ?」
ルナをぎゅっと抱きしめ、アリシアは彼女の頭に頬を寄せる。
今まで何度も家族の無事と幸せを願ってきた。
神に、精霊に、そして先祖の霊に。どうか家族の皆が無事に過ごせますように。ルナが腕を回して抱きしめ返してくれることに幸せを感じながら。




