一心地、保護者達のあれこれ
二人はそのままエトナ―がいた聖堂へと戻ってきた。途中でエルドにルナを背負ってもらい、そこから追っ手がかかることもなく無事に逃げおおせた。
「なんとか戻ってこれた・・・」
「助かりました、ディーン先生」
「いやいや、生徒を助けるのは教師の務めですから」
エルドとアダムがそんなやりとりをしつつ聖堂の中に入るとマルティナがお祈りをしていて、エトナ―は呑気にも酒瓶を傾けていた。
「おー、帰ってきたな」
「飲んでたのか・・・」
「酔ってないからノーカン」
立ち上がって杖を肩に担いだ姿を見るに足取りはしっかりとしているからなんだかんだでちゃんと待っていたようだ。そしてエトナ―に続いてアルムンドも聖堂のベンチから立ち上がって駆け寄ってきた。
「エルド!無事だったか」
「アルムンド、お前が先生たちを呼んでくれたのか」
「ああ、心配だったんでな・・・その様子だと向こうで暴れたのか?」
「暴れるというほどでもない」
がははと豪快に笑いながら答えるエルド。あれで暴れたつもりないのか、とアダムはどこか遠い目である。
エルドはルナを聖堂に備え付けてあるベンチに寝かせるとマルティナが持ってきてくれた毛布を掛けてあげた。
ルナに怪我がなく、約一名以外ほぼ無傷だったので保護者たちは集まってホッと一息ついたところだった。
『こんばんわぁ・・・』
景色が歪み、そこから滲みだすように金属で刺しゅうを施したローブに身を包んだ女性が現れた。
「ルルイエ・・・!」
どこか呑気な様子のルルイエにエトナ―は杖を取り出して彼女に突き付ける。
「テメエがついていながらなんて様だよ!おおっ?」
「え、何の話?」
きょとんとした様子のルルイエ。当然と言えば当然かもしれないが・・・それがエトナ―の癇に障った
「テメエがお守りをサボったせいでルナちゃん売られるとこだったんだぞこのやろう!」
「え、うそ、いたたた!」
ルルイエをヘッドロックにかけて怒鳴るエトナ―。そんな二人を見てエルドはあたふたするばかりである。
「な、なぜ聖人様がそんなに怒るのですか?!」
「あー、なんというか・・・彼女なら御息女の異変にいち早く気付けたということですよ」
「そうなのですか?彼女が優れた魔法使いということはわかっていたのですが・・・」
アダムはエルドの反応を見て色々と察した。彼は何も知らないのだと。
そしておそらく娘の身に起きている様々な事も。
(どうするべきだろうな・・・)
チラッと二人をみやるとルルイエは器用に首を左右に振り、それを見てエトナ―も黙っとくべきだとアイコンタクトで伝えてきた。どうやらバラすなとのことらしい。ルルイエは完全に私事だろうがエトナ―はこう見えて家族の心情やらを考えられる。一応聖職者だし。
「ん・・・」
アダムは内心でエルドにどういったものかを思案していたがその内にルナが目を覚ました。
「ここは・・・」
「聖堂だよ、気を失っていたみたいだね」
ルルイエが声を掛けるとルナはㇵッとなった顔をして周囲を探るとマルティナを見つけて立ち上がった。
「大丈夫ですか!?」
その場にいる全員が頭に?を浮かべた。しかしエトナ―とマルティナはその意味を理解したのか気まずそうな顔をしている。
「ルナ?なんの話だ?」
「いや、えっと、この人がすごく怯えた顔をしていたから・・・」
エルドは相変わらず良く分かっていなかったがアダムはルナが封印されていた経緯をなんとなく知っていたのでマルティナが犯人であること、しかしながら悪気がなかったことなどを彼女たちの雰囲気から察した。
「気にすんな、ちょいと悪いものを見ただけさ」
「悪いもの・・・ですか?」
「ああ、コイツの術は時々自分の嫌な思い出なんかを思い出させてしまうんだよ」
副作用みたいなもんさ。とエトナ―は言うと小さくなっているマルティナの肩を叩いた。
「そうだったんですか・・・大丈夫ですか?」
「えっ?」
ルナはマルティナの傍に行くと心配そうに彼女を見ている。まだ倒れた時の疲れが出ているのかまだ少し顔色がよくないのがわかったのだろう。
「え?いや、その・・・悪いものを見たって・・・」
「・・・大丈夫です、ほんとうに・・・」
マルティナはあんな目に遭ったにもかかわらず自分を心配してこちらを見つめる瞳に心底申し訳ない気持ちでいっぱいになった。もしかしたら自身は気絶している内に全てが終わっていたから何も言わないだけなのかもしれない。
それでも自分がしでかしたことでこれほどの騒ぎになったことに責任を感じずにはいられなかった。
「ごめんなさい、ルナさん・・・」
「?」
「謝って許されることとは思いませんが・・・」
こてんと首を傾げるルナだったが、マルティナが罪悪感を感じていることだけは理解できたので
「自分の事はいいんです、気にしないでください。私は平気ですからね」
そう言って、彼女の手を取って微笑んだ。マルティナはそれを聞いて瞳を潤ませる。
「いい子だなぁ・・・」
「ほんとに」
「ワシ、体中痛いんだけど治癒の奇跡とか・・・」
「唾でもつけとけ」
「お前さんそれでも聖職者か」
「生憎とな」
マルティナの手を取って彼女を慰めるルナの後ろでルルイエとエルドがほっこり。エトナ―にアダムが愚痴っていた。




