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対決!悪魔VSアダム!

「人でなしとは思っていたが本当に人じゃなかったとはな」


額に短刀を突き刺したまま立ち上がったオーナーを見てアダムは呟いた。


「クソが、お前どこの誰だ?」

「悪党に名乗る名前はない」


オーナーはアダムの返答に苛立ちを混ぜたような笑顔を浮かべ、メキメキと形を変えていく。


「ウゼぇな!おまえよぉ!本当にムカつくぜ」

「悪党に嫌われるというのはまあ、悪くない気分だな」

「殺す!」


アダムの軽口にオーナーはこめかみに青筋を浮かべながら悪魔の本性を現し、角の生えた赤い肌の大男になる。

服は体の膨張に従って一部が千切れたり破れたりしたがシルクハットとモノクルがそのまま残った。


「シルクハットにモノクルか。服のセンスはまあまあじゃないか?」

「そうかよ!」


横凪ぎに振るった悪魔の腕に器用に手を置くとまるで柵を乗り越えるように避ける。そしてそのまま体を捻ると数本の短刀を顔目掛けて投げる。

短刀は固いものに刺さったような音を立てて突き刺さったが・・・。


「悪魔にはそんなものは効かねえなァ!」


今度は悪魔の方がヘラヘラと笑いながらまるで埃でも払うように刺さったナイフを払い落した。


「ふむ、こりゃちょいと面倒だぞ」


悪魔はアダムが自分を傷つける方法を持っていないと思ったのか苛烈な攻撃を仕掛ける。

拳は容易く石の床を砕き、爪は分厚い木製の机や棚を切りさいてしまう。素早い身のこなしでそれを躱し続けていたアダムだったが悪魔は仕事を思い出したのか


「おい!そこの小娘をさっさと運び出せ!」

「ちっ・・・」


悪魔がボーイに指示を飛ばしたのを見て舌打ちをした。別の場所に連れていかれては助け出すのは困難になる。

アダムはチラッとルナとボーイの立ち位置を確認すると腰を落とした。


「潰れろっ!」

「おっと・・・!」


大振りの一撃にスライディングを合わせて躱し、ルナに近づくボーイに詰め寄るとルナを引っ張り起こそうとする手を掴み


「悪いがお触りは許可できん」

「わ、わ、うぐっ!」


慌てるボーイの手首を捻って投げ飛ばした。しかしそれが大きな隙になった。咄嗟に伸びてきた悪魔の手にアダムは無意識に傍にいるルナを気遣ったのである。


「捕まえた・・・ぜっ!」

「・・・ぐっ!」


大きな腕がアダムの足を掴んだ。その筋力はすさまじく、まるで棒切れのように振り回すと壁に数回叩きつけた。

棚は倒壊し、壁にはヒビが入った。悪魔はアダムが動かなくなったのを察すると忌々しい侵入者を睨みつけた。


「手間かけさせやがって、ここまで商売を大きくするのにどれだけかかったかわかってんのか?ああァ!?」

「ごほっ・・・ぐ、それは・・・気の毒だったな」


アダムはそう言うと懐から儀式用の短剣を取り出して悪魔の顔を切りつけた。


「うっ?・・・ぐ、うぎゃあっ!」


使った短剣はエトナ―から預かった儀式用の短剣だった。聖なる加護を得ているのか切り口から煙が上がっており、そのダメージを示すかのように悪魔は悲鳴を上げてのたうち回る。


「うが、が!くそぉ、このクソオヤジが!聖別された剣まで持ってやがったのか!」


見た目以上のダメージがあるのか悪魔はフラフラと顔にできた傷を抑えてなんとか立ち上がったがアダムはその隙にルナの足元に転がっていた木片を拾うと懐から縄付きの分銅を振り回して足に引っ掛け


「ふうぅんっ!」

「う、うおおっ!?」


背負うようにして渾身の力を使って引き倒した。派手な音が鳴り、埃が舞い上がって周囲の物が倒れたり崩れたりと大変な事になっている。


「な、なにをしやがった・・・!」

「トドメの準備ってとこだ」


そしてその木片を杭のように持つと飛び上がって悪魔の心臓を目掛けて突き刺した。


「棘くらいで俺が・・・おれが・・・」

「ただの棘じゃないさ。聖堂の床材だ」


悪魔が目を見開くと同時に刺さった個所から血が噴き出し、煙が上がり始める。


「ぎゃああああああ!!!!」

「効果があって良かった」


ふぅっと息を吐くと体中にできた傷に顔をしかめる。それでもまだなお立ち上がろうとする悪魔にアダムはダメ押しとばかりにその短剣を額目掛けて投擲した。


「こ、ころしてや・・・るっ!?」

「生憎だがそれは断る」


血走った目でこちらに手を伸ばしていたがアダムの方が反応が早かった。狙いを過たず飛んだ短剣は深々と悪魔の額に突き刺さり、こんどこそ悪魔はそのまま倒れて動かなくなった。


「やっとこさ、終わったか」


アダムは息を吐いて安堵したが今度は意識の無いルナを連れて逃げなければならない。

そう思って彼女を抱えて外に続く道へと向かった。


「さて、大騒ぎになるな・・・ん?」


そういえば、とアダムはオーナーが出てこないにも関わらず誰も心配して様子を見に来なかったことを不審に思ったがその答え合わせが目の前で繰り広げられていた。


「娘を返せ!」

「むすめ?!わ、わ、わああっ!?」


ルナの父親であるエルドが門番と取っ組み合いになっている。どうやったのか門はめちゃくちゃに壊されており、単独にも関わらず周囲には警備に当たっているならず者たちが叩き伏せられていた。


「治安部隊上がりとはいえ随分と滅茶苦茶を・・・」


腕っ節に自信がある人だとは思っていたがアダムは大暴れしているエルドを見て呆れるやら感心するやら。


「親というのは強いもんだなぁ・・・」


自分が苦労して見つけ出したこの場所を単独で嗅ぎ付けたらしいその能力もさることながら数人に取り押さえられてもまるで意に返さず吹っ飛ばして大暴れする姿はまるで怒れるゴリラである。


「エルドさん!」

「なんだお前も悪党か!」

「ちがいますよ!娘さんは助けましたから!さっさと逃げましょう!」

「わかりました!こっちへ!」


むん!と丸太のような腕を見せながら威嚇してくるエルドにルナを見せて説得するとエルドは大きく頷いてアダムを先に門の外へ出すと


「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!」


まるで重機のような怪力で壊れた門を動かしてバリケードにしてしまった。


「フー・・・ヒー・・・!これでよし!」

「・・・親御さんにこういうのはアレだが、人間ですよね?」

「もちろん人間ですとも」


すたこらと逃げながらアダムはそう聞かずにはいられなかった。

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