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実技試験での事件・・・挫折!

「それでは、ルナ・フラウステッドさん」

「は、はいっ」


順番が回ってきた。緊張と共にルナは監督官の前に立つ。


「あまり緊張しなくていいですよ」


監督官はそう言って笑ってはくれるが当の本人である生徒からすればあまりにも気休めだ。ルナも初体験の魔法の行使に戸惑いながらも言われた通りに手を翳した。


「それでは火をイメージしてください、ろうそく程度の火でも大丈夫ですから焦らないで」

「は、はい!」


火を掌に、ろうそくに灯った火をイメージしてそれを出現させる。そう思いながら自身の中に巡る魔力を意識した時だった。


「・・・?」


景色が、傾く。ふらりと、視界が暗転した。


「フラウステッドさん!」

「大変だ!」


ルナが倒れたのを見て試験監督は仰天し、控えていた校医が駆けつけると彼女をすぐに保健室へと運んだ。






「・・・あれ、私、どうなって・・・?」


気が付くとベッドの上だった。頭をぶつけたのだろうか、すこし痛んだ。


「気が付きましたかぁ?」


ルナが上半身を起こして頭に手をやっていると不意に声が届いた。声のほうを向くとぼさぼさの髪の毛とよれよれの白衣が特徴的な中年の男性が椅子に座ってコーヒーを啜っていた。


「魔力欠乏症の症状がでてましたよ、ご無理をなさったようですなぁ」

「魔力欠乏・・・?」


その言葉にルナは世界が歪むような衝撃を受けた。魔力欠乏症とは魔力における貧血のようなもので血を失った人間が不調をきたす様に魔力を失った人間におこる症状だ。普通は眩暈や頭痛が先にくるはずだが・・・。


「倒れるほどとなるとよほど魔力をお使いになったんですな、いけませんよ無理しちゃ」


男性の声が遠い。それからどうやって家に帰ったのかおぼえていなかった。








「どうしよう」


何度目かわからないつぶやき。両親に心配かけた情けなさ、同級生の前で倒れた恥ずかしさ、そしてなにより


「私、魔法つかえないのか」


魔法使いになれないという現実が目の前にぶら下がり続けていた。

今まで思い描いてきた夢が砂のお城のように崩れていく。自分にはちゃんとした量の魔力があったはずなのに。両親は自分が倒れた事を酷く心配して、魔法が使えないことなどは気にもしなかった。慌てずにやりたい事を探せばいいと言ってくれたのでルナは少しだけ余裕があった。だからかは分からないがそんな時にふと、ルルイエの事を思い出した。


「そうだ、先生ならなにかわかるかも」


ルナはルルイエを探しに家を出た。一筋の光明を探すために。


「ここらへんにいたと思うんだけど・・・」


前回テキストのおさらいをした場所を探してみる。周囲を見渡してみると・・・


「おや、なにかあったのかな?」


周囲の景色から滲み出るようにルルイエが登場した。ルナは恐る恐る彼女に自分の身に何が起こったのかを問うことに。


「実は今日の試験で魔法を使おうとしたらすぐに魔力欠乏症の症状が出て・・・」

「魔力欠乏症?ふぅむ、どれどれ」


ルルイエはルナの話を聞いて少し不思議そうな顔をしたがすぐにルナの顔を食い入るように見つめ始める。


「うーん・・・そうだなぁ・・・これは特殊だもんなぁ」


瞳の色がまるでレンズが切り替わるように、瞳孔の形もまるで万華鏡のように切り替わりながら見つめ続けるルルイエ。ルナはそれを不思議そうに見つめていたがやがて瞬きと共に普通の目に戻ったルルイエは結論を出した。


「これはあれだ、君の器と魔力を生成できる量の差が大きすぎるのが問題だ」

「器と魔力の差?」


ルルイエはルナの問いかけにあるたとえ話をした。


「魔力欠乏症が貧血のようなものというのは聞いたことがあるね?」

「ええ、はい」

「君の場合、魔力の量。それ自体は人としては平均よりも多いくらい」


でもね、とルルイエは言うと手のひらにコップを生成してそこに水をなみなみと注いだ。


「これが一般人の魔力と器の関係とする。そこに君の・・・まあたとえ話だから控えめにするが」


そう言いつつも今度はジョッキのような大きな容器を作り出すとコップの水をそちらに移した。


「これが君の器と君の魔力の関係だ」

「・・・え?」


ジョッキには二割ほどの水が入っている。そしてそれに対してのルルイエの言いたい事はこうだ。


「器が大きすぎて『魔力が常に足りない』と体が錯覚しているんだね。まあ、実際器の保護を考えるとそれは当然なんだけど」

「そんな・・・じゃあ魔法は?」

「魔力量を増やす鍛錬を積めば不可能じゃない・・・けど、それは時間がかかるね」


そこでだ、とルルイエはルナにずいと詰め寄った。


「その魔力欠乏症をあっという間に治す方法がある」

「それって・・・」

「そう、悪m「辞めときます」・・・んもぉぉぉ!」


ルナはガッカリもしたが魔法使いになるのが先送りになっただけであると知り、少しだけ気持ちが楽になった。


「とりあえず勉強を続けて、学問から修めていけばいずれは・・・」

「まぁ、不可能ではないね。おばあちゃんになっちゃうかもだけど、どの道魔法を極めるなら一生の事だし応援するよぉ」


ルルイエはガッカリした様子ながらルナが魔法使いの道を諦めて居ないことを一応応援してくれた。


「はい、とりあえず今の学校だと難しいかもだけど頑張ってみます!」


おやすみなさい!と帰っていったルナを見送りながらルルイエは空を見上げる。




「月の位置が・・・間に合うだろうか」


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