第16話:学園祭とチクワブの反乱(前編)
今年も、あの季節がやってきた。
そう、学園祭だ。
俺たち2年B組の出し物は、なんと**「宇宙ちくわぶカフェ」**。
発案者はもちろん、我らが担任・化世ヒカリ先生だ。
「地球ノ文化ト宇宙ノ融合——“チクワブ”ニ可能性ヲ見出シマシタ」
「いつも見出しすぎてるんだよ、可能性を!!」
とはいえ、準備期間は妙に楽しかった。試作品の段階では、「ちくわぶティラミス」とか「ちくわぶタピオカミルク(ミルクなし)」とか、狂気と甘味の狭間を彷徨うレシピが乱発された。
それでも、当日が近づくとみんな段々ノッてきて、
「ちくわぶカヌレって意外とアリじゃね?」
「いや“ちくわぶブリュレ”で勝負しようぜ」
と、誰も止められない“ちくわぶ革命”が起きつつあった。
そして迎えた学園祭当日。
俺たちの教室は宇宙風に装飾され、中央には巨大ちくわぶオブジェがドンと鎮座。先生が夜なべして3Dプリンターで出力したらしい。もちろん無許可だ。
「今日ノ目標ハ、1日デ“ちくわぶ1000本完売”デス!」
「多すぎる!地球上のちくわぶ在庫に謝れ!!」
だが意外にも、ちくわぶカフェは人気を博した。
「なんかよくわかんないけどウマい!」
「口に入れた瞬間、銀河を感じた……」
と、謎のレビューがSNSで拡散され、行列までできる始末。
そのときだった。
突如、廊下から怒声が響いた。
「おい! 2年B組は何をやってるんだ!!」
現れたのは、学年主任の荒巻先生。厳格さで有名で、校内では“歩く校則”とも呼ばれる存在だ。
「無認可の宇宙素材を使っているだと!? これは衛生法違反どころか、惑星間輸入規制に触れる恐れがある!」
「そんな法律、地球で適用されんの!?」
しかも悪いことに、先生が使っていた“宇宙ちくわぶ添加エキス”には微量の重力歪曲因子が含まれていたことが判明。
「このままだと、教室がちくわぶに引き寄せられてブラックホール化するぞ!」
「どんな食材だよ!?」
荒巻先生はすぐさま校長に報告。事態は最悪の方向へ。
——放課後。
教室で、化世先生は静かに座っていた。
「……私ノ責任デス。宇宙食文化ヲ、安易ニ披露シテシマッタ」
「先生……でも、あのちくわぶシュークリームはマジで美味かったっす」
「俺、ちくわぶで泣いたの初めてです」
「こんな形で先生が消えるなんて、納得できねぇよ!」
そのとき、先生はにっこりと微笑んだ。
「マダ終ワッテマセン。次ハ——反論ノ場ヲ、作リマス」
「……反論? どこで?」
先生は、持っていたパッドに表示された画面を見せた。
《学園祭閉会式ステージ:使用予約完了》
「公開裁判デス。ワタシハ、地球ノ味覚ト正義ヲ、守リマス」
「絶対に炎上する未来しか見えないんですが!!」
——こうして、化世ヒカリ先生は自らの解雇をかけて、“宇宙ちくわぶ裁判”という前代未聞の戦いに臨むことになった。
続く後編では、まさかの証人と、暴かれる真実と、そして……あのちくわぶが、動きだす。




