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『ユリア! 緊急事態だ。すぐ王宮へ向かってくれ』
『師匠、緊急事態、ですか?』
『王都の南側にAクラスの魔獣が出たんだ』
『わかりました。準備してすぐに向かいます』
『ああ、頼んだよ』
私は持っていた荷物を足元に置いて声を掛けた。
「ランドルフ様、行ってきますね!」
「ニャー」
「えっ!? ランドルフ様が、目覚めた……?」
ランドルフ様がふわりと私のところへ来て頭を擦りつけてくる。
思わず私はふわふわの毛を確かめるように撫でてしまった。
ランドルフ様は気持ちよさそうに目を細め、しっぽをふりふりしている。
「ランドルフ様、元に戻らないのですか?」
「ニャー」
どうしよう。ランドルフ様は猫から変身する様子はない、というか腕輪がないから元に戻ることができないのね。
『ユリア、まだか?』
『はっ、はい! いますぐ向かいます』
私はランドルフ様を見て話しをする。
「ランドルフ様、今からジョーン師匠のところに行きますが、一緒に行きますか?」
「ニャー」
ランドルフ様は私の肩にヒョイと乗り、ついて行くことにしたみたい。
いつものように扉を開け、王宮のジョーン師匠の執務室へと入っていった。
「師匠、Aクラスの魔獣がでたってどういうことでしょうか」
師匠は私を見るなり、すぐにランドルフ様に気づいた。
「ランドルフ、目覚めたか。ランドルフのことは後でいい。今は魔獣だ。ジャンニーノや他の魔術師たちも対処に出ているが、苦戦しているようなんだ。全く……」
師匠はこれだから、と小言が始まりそうだ。
「師匠、私も討伐に参加した方がいいということですよね?」
「ああ、そうだ。今、ジャンニーノにユリアを送るように話をしておいたから。すぐに送るよ」
「わかりました。では行ってきます!」
師匠が魔法円を床に浮かび上がらせ、私はその上に移動すると、ランドルフ様はひょいと私の肩から降りた。
どうやら師匠の元に残るみたい。
「ランドルフ様、行ってきます」
こうして私は王都の南側へと転移した。
この先に魔獣がいるらしく、人が近づかないように騎士達が立っていた。
「やっぱり人がたくさんいて物々しい雰囲気になっているわね。すみません、通して下さい」
「君は……。ああ、ジャンニーノ筆頭はあっちにいるよ」
私はローブを着て胸にジョンソン師匠のバッヂをしていたからだと思う。まだ正式に王宮魔術師にはなっていないから騎士服は着ていないんだよね。
私は騎士に教えられた方向に歩いていく。
敵までけっこう距離があると思うんだけど、怒声と金属音が響いてくる。
やはりAランクというだけあって手ごわいみたいね。
騎士や魔術師が一体の魔獣に群がるようにして攻撃している。
どんな魔獣なのかとめを凝らしてみると、七つの頭に七つの角、七つの目を持つ巨大な魔獣だ。黒光りした鱗に覆われ、大きな牙を持ち、鷲のような尻尾をしている。
「えっと、確か、この魔獣の名前は……」
「キリムですよ、ユリア様」
「ジャンニーノ先生! ご無事でしたか?」
「ええ、私はこの通り。怪我一つしておりません。ですが、そろそろ騎士や魔術師たちに疲労が見えています。怪我人が出る頃でしょうね」
「急いで倒さないといけないですね」
「ああ、倒すのは騎士にやらせてください。ユリア様は補助に」
「わかりました」
確かに私一人でも時間はかかるけど、倒せなくはない。
でも、そうすると騎士や魔術師から不満があがるわ。みんな誇りをもって仕事をしているからね。
ジャンニーノ先生は直接戦ってはいないみたい。
魔術師たちへ指示をしたり、魔法円を展開したりして補助を行っている。
「では行ってきます」
見た感じ、魔術師は魔術師同士で助け合い、騎士は騎士同士で言い合いながらも連携を取っている。
もう少しお互いをカバーし合えばすぐに倒せそうな気もするんだけど。
私は両方を少し観察した後、騎士たちの補助に付くように動いた。
「今からキリムの動きを止めます。その間に一斉に攻撃をお願いします」
騎士達に聞こえるように声をかけた後、私は詠唱を始めた。
キリムのような巨大な魔獣の動きを止めるには相応の大きい魔法円が必要になるため、詠唱を使った方が安定するのよね。
「よし、出来た! キリムの動きを止めよ!」
そう言いながら魔獣の足元に大きな魔法円を展開する。
「今です!」
私の声とともに騎士たちはキリムに斬りかかった。騎士たちの力が足りないのか、キリムの鱗が固いのか、あまりダメージを与えられていないように思える。
よし、力が足りないなら彼らに身体強化の魔法を使えばいいよね。
私は片手で魔法円を維持し、もう片方の手で身体強化魔法を彼らに掛ける。
「身体が軽い! 助かる。いくぞー!」
騎士達の士気は上昇し、キリムへの攻撃を再びはじめた。
キリムは抵抗しているが、騎士の攻撃には及ばず、頭が一つ、また一つと切り落とされていく。
このまま魔法を維持していれば倒せるわね。
私はホッと胸を撫でおろした。
「全く……。相変わらず貴女のでたらめなその力の使い方。誰に似たんでしょうかね。ほらっ、魔法円が不安定になっていますよ。このままだと抑え切れない」
ジャンニーノ先生はため息を吐きながら、私がキリムを抑えている方の手に手を添えて魔法円の強化をはじめた。
ようやくっ、ようやく更新再開しました!
皆様お待たせいたしました!第3部解禁です!
週一更新予定にしております。
魔力無し判定の令嬢とともにのんびりお読みいただけると嬉しいです!
LINEマンガ様(縦読み)ピッコマ様(横読み)も絶賛連載中です。是非お読みくださいませ\(^o^)/
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