14
4人は、じっと俺の話を聞いてくれている。
「何を思い違いをしていたんだろう。何をうぬぼれていたんだろう。
所詮俺は血の繋がりのない、赤の他人でしかないのに」
何か言おうとした3人を、桜がとめてくれた。
「だがそれでも、もう、手放そうとは思えなかった。
皆がそう思ってなくても、俺にとっては大事な弟や妹だ。
血の繋がりが無くても、法的な繋がりが無くても、それでも。
血縁者が迎えに来る。
養子縁組をしたいと言う夫婦が来る。
18になって、独り立ちする。
何らかの理由で皆がいなくなるまでは、自己満足でもいい、独りよがりでもいい、家族でいたかった。」
4人の顔を見るのが怖くて、下をむいたまま話し続ける。
「親父とお袋が事故で急死した後。
施設長の藤堂さんから、鈴香と洸と夕菜を児童養護施設に戻す、と言われた。
3人まで俺から奪わないでくれと、縋った。
だがそれでも、俺には3人の里親になる資格が足りなかった。
3人を連れて行く、そう決定が下される前日だった。斎が桜と荷物を持って、家に駆けこんできた。
桜は優しいから、もし知られたらきっとどれ程嫌でも帰ってきてくれる。
だから絶対に言わないでくれ、そう頼んだのに、ばらした斎を殴った。
だが、斎は「桜ちゃんの人生を捻じ曲げた詫びは嫁ぐ時にしてやりゃいい、お前が壊れるのを見る位ならいくらでも殴られた方がマシだ」と言ってくれた。」
思いっきり殴って歯が1本差し歯になったのに、それでもいまだに俺を親友だと言ってくれる。
今の職場で働けるのも、斎の紹介があったからだ。
「桜が来てくれて、斎や他の里子の皆や友人達、親父やお袋と親しくしてくださっていた方々が動いてくれて、ようやく藤堂さんが折れて俺が里親になる許可が下りた。
その時、俺は決めた。
鈴香も、洸も、夕菜も、桜も、俺の家族じゃない。
だが、せめて皆がここから巣立つまでの間『家族ごっこ』をしようと。」
それは、きっと。
両親を亡くした俺が出来た、唯一の馬鹿げた自衛策だった。




