13
「すげぇ……そこまでやってくれてんのに何で振ったんだよ、桜姉」
「……って、ない」
俯いた桜に、全員の視線が集中する。
「振って、ないわ」
今、何て、言った?
「だって、あの頃、やたらと小父さんと小母さんが、『うちの娘になってくれ』って、ずっと、言ってきてて。
嬉しかったけど、娘じゃ嫌だった。妹じゃ、嫌だったのよ。」
空耳か?
「それなのに、あんたまで家族になってくれ、なんて言うから……あんたにとって、あたしは妹でしかないんだ、って。
だから断ったのにあれがプロポーズだったなんて、判んないわよそんな事!」
「いや判るよな普通」
「判ると思う僕も」
「流石にこれに関しては私も桜姉様を擁護出来ませんわ」
「あんた達ぃいぃ!!!」
皆が何か言ってるが、頭に入ってこない。
振ってない、その言葉だけが頭の中をぐるぐると回っている。
まだ、想っていていいのか?
まだ、家族になるのを諦めなくていいのか?
何も考えられず、ただ、言えなかった言葉を紡いだ。
「竜一……」
「桜が家に来た7歳の時から、ずっと、いつかお前と家族になりたい、そう思っていた。
同じ苗字になって、同じ家に住んで、そして、いつか、親父とお袋のような夫婦になりたいと、ずっと思っていた。
だが、お前からああ言われて、全部俺の身勝手な欲望だったんだと思った。
そしてあの後、親父達が進めていた、鈴香と洸と夕菜をうちの養子にする話も取りやめさせた。」
「ちょ、マジかよ竜兄!?」
「ど、どうしてですの、竜兄様」
「何でだよ竜兄ちゃん……何で、俺はっ」
「そんな……ごめん、皆、まさかそんな事になってたなんて」
鈴香の両親は生後まもなく事故で他界している。
洸の両親は洸を虐待して親権を取り消された。
夕菜の父親は何処の誰だか判らない。母親は夕菜を孤児院に残し蒸発し、とっくに7年経っている。
桜は生まれてすぐに孤児院の前に捨てられていた。
養子縁組するにあたり、障害となるものは何もない。親権を持っている実の親が今の所1人もいないからだ。
だが、それでも。
「考えた。あの後、本当に色々考えた。
俺が嫌いならそれは構わない。男として見られていなくてもいい。
寮に入る事は決まっていたんだ、二度と会わない事だって出来る。
だが、あれだけ懐いている親父とお袋まで拒む理由は何だろうと」
考えて、考えて、そして、結論を出した。
「待っているんじゃないか、と、思った。
血縁者が迎えに来てくれるのを、待っているんじゃないかと。
その答えに行きついた時、頭の中が真っ白になった。」




