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「すげぇ……そこまでやってくれてんのに何で振ったんだよ、桜姉」

「……って、ない」


俯いた桜に、全員の視線が集中する。


「振って、ないわ」


今、何て、言った?


「だって、あの頃、やたらと小父さんと小母さんが、『うちの娘になってくれ』って、ずっと、言ってきてて。

嬉しかったけど、娘じゃ嫌だった。妹じゃ、嫌だったのよ。」


空耳か?


「それなのに、あんたまで家族になってくれ、なんて言うから……あんたにとって、あたしは妹でしかないんだ、って。

だから断ったのにあれがプロポーズだったなんて、判んないわよそんな事!」

「いや判るよな普通」

「判ると思う僕も」

「流石にこれに関しては私も桜姉様を擁護出来ませんわ」

「あんた達ぃいぃ!!!」


皆が何か言ってるが、頭に入ってこない。

振ってない、その言葉だけが頭の中をぐるぐると回っている。

まだ、想っていていいのか?

まだ、家族になるのを諦めなくていいのか?


何も考えられず、ただ、言えなかった言葉を紡いだ。


「竜一……」

「桜が家に来た7歳の時から、ずっと、いつかお前と家族になりたい、そう思っていた。

同じ苗字になって、同じ家に住んで、そして、いつか、親父とお袋のような夫婦になりたいと、ずっと思っていた。

だが、お前からああ言われて、全部俺の身勝手な欲望だったんだと思った。

そしてあの後、親父達が進めていた、鈴香と洸と夕菜をうちの養子にする話も取りやめさせた。」

「ちょ、マジかよ竜兄!?」

「ど、どうしてですの、竜兄様」

「何でだよ竜兄ちゃん……何で、俺はっ」

「そんな……ごめん、皆、まさかそんな事になってたなんて」


鈴香の両親は生後まもなく事故で他界している。

洸の両親は洸を虐待して親権を取り消された。

夕菜の父親は何処の誰だか判らない。母親は夕菜を孤児院に残し蒸発し、とっくに7年経っている。

桜は生まれてすぐに孤児院の前に捨てられていた。

養子縁組するにあたり、障害となるものは何もない。親権を持っている実の親が今の所1人もいないからだ。

だが、それでも。


「考えた。あの後、本当に色々考えた。

俺が嫌いならそれは構わない。男として見られていなくてもいい。

寮に入る事は決まっていたんだ、二度と会わない事だって出来る。

だが、あれだけ懐いている親父とお袋まで拒む理由は何だろうと」


考えて、考えて、そして、結論を出した。


「待っているんじゃないか、と、思った。

血縁者が迎えに来てくれるのを、待っているんじゃないかと。

その答えに行きついた時、頭の中が真っ白になった。」

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