素晴らしき妹様
転校してきて数週間が経った。
俺は永井先輩や次元に超能力を教わりながら過ごしている。
そのかいもあってか、二つの能力を同時に使うのに苦はなくなってきた。
いまだにこちらの人たちに比べると発動がぎこちないが要練習だ。
そんなある日のことだ。
「凪……客…………」
一度は俺たちの前でキャラが崩壊した氷上だったが、あの時の記憶は削除したらしかった。
そして今では元のミステリアスクールな氷の魔法使いの厨二病に戻ったというわけだ。
そんな氷上とはこの数週間で仲良くなった。
別に俺の過去のことがあり、それで理解があるとかではない。
あるとかではない。
ここは大事だ!
ある程度学校になじんできたと言ってもまだクラス外の友達などは少ないし、あのめんどくさがりな永井先輩がわざわざ訪ねてくるとは思わなかった。
つまりはわざわざクラスまで呼びにくるような客なんて思いつかないのである。
誰だ? と思いながら入口の方に目を向けると俺は固まった。
「……那……美…………!?」
双神那美。
俺の妹であった。
身内びいきを除いてもかわいらしいその容姿は昔から多数の男に言い寄られていた。
勉強も良いと言うほどではないが悪くもなく、強い心を持った俺の妹には勿体ない程出来の良い妹だった。
「中等部の子……。誰……?」
氷上がそう話しかけてきた。
この学校は日本で最高峰の超能力系学校である。
初等部から大学まで存在していて、中学二年の妹は中等部に所属しているのだろう。
だが、まってくれ。
おかしい。
あの異世界から連れてこられたときは俺一人だったはずだ。
この世界に妹がいるはずがない。
そんなことを繰り返し考えていて、まともに思考できる状態じゃなかった。
「次元!」
俺は気づけば次元の名前を呼んでいた。
なぜ妹がいるのか最も分かる可能性が高い者……。
それが次元であった。
もしかしたら次元がまた趣味の異世界集めで引っ張り込んだとかそんなことを考えてしまった。
俺を引っ張り込んできたことをいつまでも悔やんでる次元がそんなことをするはずないし。
また、そんな無限と言っていいほどある世界の中から同じ世界の、それも俺の身内を引っ張り込む確立など0に近いと言っていいどころかないに等しいのに……。
それほど俺は思考がおかしくなっていった。
俺の錯乱した様子を見てか、しばし思案する様子を見せた後に口を開く。
「場所を変えよう。その中等部の子もいいか?」
俺を目の前に何を言っていいのかわからなかったのだろう。
うれしさや怒りなどいろんな感情が合わさった複雑な表情をしていた那美も黙ってうなずいた。
国立、日軽大学付属異能学特別支援学校
それがこの学校の正式名称である。
日本最大の超能力系学校である日経大、さらにその付属学校は様々な能力者が存在している。
だからこそSSSランクの次元もいるし、様々な珍しい、優秀な能力者も多数いる。
その中には転移系の珍しい能力者も多数いる。
屋上は立ち入り禁止にしたら転移系能力者が悪用する可能性を考慮してあえて解放されていた。
その屋上の端の方に俺たち3人は次元が空間を隔離したうえで居た。
「結論から言おう。双神凪はお主の兄であって兄ではない」
「い、意味わからないぞ。それ……」
「そうだよ。どっちなの?」
俺は震える声で言った。
兄であるのかないのかはっきりしてほしい。
俺はどういうことか分かったが、その可能性を否定しようとする。
見知らぬところでせっかく見つけた知り合い。
前から考えていた以上にその喜びが大きかったようだ。
だからこそその可能性を否定してほしく、俺以外の人が同じ被害にあってないことになるのでその可能性を肯定してほしかった。
矛盾した心情。
次元はそんな心情を知らないように――否、察しがついてるからこそ続ける。
「那美と言っておっとな? 儂の能力は有名だから知っておるじゃろ?」
「う、うん。次元操作。SSSランクだから世界中の人が知ってると思う」
「そうじゃ。そして儂の能力を使えば異世界にもつながる」
そして……。
「儂の能力でこの男を異世界から連れてきてしまった」
あぁ、やっぱりそういうことなんだ。
永井先輩から言葉で分かっていたはずなんだ。
この世界で俺自身がいるならば俺の家族が居たって何らおかしくない。
むしろいない方がおかしいぐらいである。
「どう見たって凪じゃん! 異世界って意味が分からないよ!」
体験した俺と違い那美はまだわからないようだ。
「私がいじめられて凪が倒してくれた奴の名前は!?」
「土田紳也……」
「凪が中学校の時に厨二病になったのはいつごろ?」
「中一の終わりごろ……」
「私の好きな食べ物は?」
「親子丼だっけな……」
「ほら、どこから見ても私の知ってるお兄ちゃんだよ!」
すべて知っている。
土田紳也、それは俺が妹がいじめてる主犯だと知った時に我を忘れて殴り倒しに行った。
がっしりしていて、力も強かったが絡めてなどを使って何とか勝てた。
あるアニメにはまって厨二病になった。
色々と痛いことをして人生最大の恥じである。
親がいない時に俺が作ったのが親子丼であった。
小さかったからかなり下手でまずかっただろうが、それでも俺が作ったことを嬉しそうに食べてくれた。
その後まずい料理を食わせらんないって親に教えてもらいながら練習して親子丼だけはうまく作れるようになった。
それはどこをとっても俺の知ってる妹で、理由が分かってる俺としてはその質問に答えるのはすごく苦痛だった。
「平行世界を知っておるか?」
「小さいときに凪が教えてくれたから知ってるよ」
「こやつはその平行世界の双神凪。この世界の住人ではないのじゃ」
そうだ。その通りだ。
俺はこの世界の凪ではなく別の世界の凪で、目の前の那美は俺の世界の那美ではなくこの世界の那美。
「こやつは超能力のない世界から来ている。その証拠にお前さんの超能力を答えられないじゃろ」
「嘘だよね? 凪と同系統の能力じゃん。 わからないはずないよね!?」
必死に訴える那美。
その姿を見るのはとてもつらく、見てられなかった。
「すまん……」
「一生能力は変わらない。お主の兄の能力はなんじゃ?」
「雷電操作……」
「凪……。能力を見せてやれ……」
俺は今まで練習していたように右手と左手に水の球と竜巻を造り出す。
「う、嘘だ! いつの間に能力が変わったの? 元々雷電操作だったのが変わって家に顔だせなくなったんでしょ? そんなの気にしないって。だから安心して家に帰ってきてよ。ねぇ、凪……冗談だよね……?」
「ごめん……」
俺はそう言うことしかできなかった……。




