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80_女性を置いて行くとお腹が○する呪いです

 瞬く間に巨大なワニは一刀両断され、砂嵐が巻き起こった。俺とキューティクルは思わず目を覆い、砂漠に伏せてその砂嵐が収まるのを待つ他無かった。

 ――はっ……!? は、腹が痛いっ……!?

 何だか分からないが、とてつもなく腹が痛いっ……!!

 腹を抑えながら、ようやく静まった砂嵐に目を瞬かせて砂山の上を見ると、そこには白髪褐色のロリ娘が


「何故置いて行くか――――!!」


 開口一番、潤んだ瞳に怒鳴られた。

 いや、それどころじゃ無いんだ俺は。腹が痛いんだ。


「何なのだ!? ポップコまで連れて行ったら妾は用済みか!? 見損なったぞ小僧!! ばーかばーか!!」


 何だか色々な言葉が混ざって訳が分からない。俺は青褪めた顔で、モンクに何度も頷いた。


「もう二度と妾を置いて行かないと誓え!!」


 俺は何度も頷く。

 そうすると、どうにかモンクは機嫌を直したようだった。同時に、俺の腹痛も何故か治まった。

 何だったんだ、今のは。

 ……まさかアレか? ミヤビが居ないので分からないが、もしかしてこれは――……

 女性を置いて行くと、お腹が○する呪い、的な?

 何だそれは……。本当だったら、割りと洒落にならんな……

 しかし、砂漠まで来てしまったのでモンクのカートに入っているマリンスノーは何だか溶けてしまい、青色の液体と化していた。どうなんだ、これでも売り物になるんだろうか。俺はそのカートの中身を、まじまじと眺めた。


「はう……はっ!? マリンスノーが!!」


 ……やっぱり、駄目だったらしい。


「この!! 馬鹿アルト!! 馬鹿!! どうして砂漠なんぞ通るのだ!! せっかくの売り物がまた一からやり直しではないか!!」

「んなこと言ったって、どうすんだよ砂漠を通らないと俺はセントラル・シティに行けないんだよ!」


 モンクは広大な砂漠を見詰め、ごくりと唾を飲み込んだ。どうやら、汗は太陽の熱だけのせいではないらしい。

 ……確かに、何の忠告もないのにこんな場所、何かがおかしいとは思ったけどさ。もしかして、この砂漠は避けて通らなければならなかったって事か……?

 いや、だってモンクに示された方角上は、これで合ってて……


「立入禁止の看板が、道中で立ってはおらんかったか?」


 ……立入禁止?

 そういやあ、そんなもんもあったような……。そういえばその隣に地図もあった気がするが、俺は何も考えずにそこを直進したような。

 いや、だって立入禁止ったって、パーティーリーダーの称号を持っている俺にはあんまり関係ないから一番近い方が良いかと思ったんだ。本当なんだ。


「ここは、一度迷うと中々抜け出せないと噂の『迷いの砂漠』だ」


 ……普通、迷いのなんとかシリーズって森じゃないの? 砂漠なの?

 砂漠で迷う要素……沢山あるか。確かに。


「モンク、羅針盤とか持ってないのか?」

「持っているが、ここは不思議な魔力に満ちていて使えないのだ……」


 マジか。

 ということは、この広大な砂漠を前に、頼りになるのは俺達の足跡だけって事じゃないか。

 ……ん? 足跡? 砂嵐?

 見ると、先程俺達が通った足跡はワニとモンクの戦闘により、すっかり跡形もなくなっていた。


「普通は、どうにか砂漠を避けて通るために『小町デッカイノー』を通過し、遠回りをするのだ」

「先に言えよそういう事は」

「まさか立入禁止の看板を直進するなんて思わなかったのだ!!」


 ……まあ、そりゃ、確かにな。これは完全に俺が悪い。

 俺が悪いは良いとして、それでもこの砂漠を抜ければ近道なんだろ? 迷いの砂漠ったって、歩いてりゃどこかには辿り着く筈。まして、方角が分かっていれば。

 その方角が分からないんじゃないか……

 あれ? 思ったよりもこれ、ピンチじゃね?

 小町デッカイノーとかいう矛盾に溢れる土地を経由するべきだったんじゃね?


「今から戻るか?」

「……いや、妾にももう道など分からん。錯覚魔法が掛かっていて、入り口と出口を除いてはループする構造になっている」


 ……えっ


「え、いやそれはヤバくね!?」

「だからやばいと言っておるだろうが馬鹿!!」


 どうしよう!! そんな状態になっているとは、これっぽっちも分かってなかった!!

 もしかしたら真っ直ぐ歩いているつもりで、結構曲がっているということも……いや、どこが出口か決まっているんじゃ、それさえも定かでは無いってことか?

 このまま永遠にループする砂漠で生き埋めなんて、まっぴらだぞ……


「……と、とにかく歩こう。立ち止まっていたら暑くて敵わん」

「そうだな……」


 モンクも砂漠用の上着を羽織った。俺達は再び、歩き出す事に。

 でもワニが居たなら、どこかにオアシスはあるという事ではないんだろうか。そこで水さえ補給してしまえば……

 などと考えるが、見渡す限り広大な砂漠。ついこの前までお菓子の街に居たとは思えないスーパードライっぷりである。

 この世界の補正のお陰で早々死にはしなさそうだが、それでもあまり芳しい状況とは言えない。


「……そうだモンク、しりとりをしよう」

「……りんご」

「ゴン」

「……アルト、お前は妾をからかっておるのか?」

「いや、ちょっとくらい笑いがあった方が良いかなって」

「お前のギャグはシュールすぎて全然笑えんわ!!」


 そういえば、先程のワニを食うという手段もあったんだろうか。そうすれば、多少なり水分を……ないな。油ばっかりのような気がする。

 太陽は照っているが、まもなく沈むだろうか。沈み切ったら、今度は寒波に襲われるのかもしれない。

 朝を待った所で、また灼熱の大地に絶望を感じるだけだ。

 ……くそ。俺に地の利があれば、こんな事には。

 それ以前の問題とは、言わないのがお約束ってもんだぜ。


「そうだモンク、しりとりをしよう」

「ン」

「全力で終わらせに来たな……」


 俺達は歩いた――……



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