79_出会いと別れと目的地、です
どうにかマリードールの猛攻を振り切った俺達は、お菓子の街ポップコを離れようとしていた。
俺はポップコでモンクに金を貸してもらい、装備を整えた。戦士選抜の時よりはいささかまともな長剣と、簡易的な銀の鎧を身に着ける。
――重い。
ただの引き篭もり格ゲーマーには辛い重さだ。
「なんだ、だらしないぞアルト。胸を張れ」
「張る胸もないロリがよく言うぜ」
「なんだと!? 小僧そこに直れ!!」
サムライさんのふんばり剣術、とっても役に立ってます。本当にありがとう。
さて、次なる目的地はセントラル・シティ。ようやく、ワノクニに少しだけ近付く事ができそうだ。早く、ルナと合流したいぜ。
「あれ、もう行くのですか?」
振り返ると、ケントさんと……ルビイさん、だっけ? 魔物使いの二人組が、これまた出発の準備を整えたようで、荷物を持っていた。
ケントさんの胸には、マリードールがしがみ付いている。
「ケントさん達も、行くんですね」
「うん、偶然消息不明だったルビイとも再会する事が出来たし、国にも吉報を持ち帰る事ができるよ。……なんか、魔物も見付かったし、ねえ?」
ケントさんは俺のことを不審な笑顔で見詰めた。
……ごめん。まあパートナーの魔物も居なかったし、良いじゃない。
「助けてくれて、本当にありがとう。礼を言うわ」
「いやあ、マジで俺変態的な事しかしてないんで。礼なんて言わないでください」
俺がやったことは、戦わずに武器を捨て、乙女チック美少女に変身してマリードールを口説き落とした事だけだ。
字面にすると本当に一片の救いも無い所が、非常に俺らしい。
「それじゃあ、ボウモアまで用事があるようだったら、是非、また」
「ええ。また会えたら嬉しいですね」
二人に手を振ると、二人はお菓子の街ポップコに背を向けて去って行った。
さて、俺もセントラル・シティに行かなければな――……。近くを飛び回るキューティクルに、俺は話し掛けた。
「俺、セントラル・シティに行くけど。キューティクル、お前、どうする?」
「もけ――!!」
……わからん。
だがまあ、俺に付いて来るらしいというのは何となく分かった。まあ、手掛かりも無ければ知り合いを当たるしかないか。
キューティクルとはもう少しだけ、旅を続ける事になりそうだ。
俺はモンクに手を振った。
「……どうした?」
「モンクも、ありがとな。ワノクニまで戻ってルナに会ったら、金は返しに来るからさ。故郷というか、お前の拠点はどこだよ」
「妾は大体、マリンスノーを暖国に売って金を稼いでいるから、ユキグニから南セントラルを往復しているが……」
「分かった。それじゃ、またな」
「えっ、ちょっ」
俺は背を向けて、歩き出す。セントラル・シティの場所も分かった事だし、さっさと向かわなければ。
モンクは何か、重大なものを無くしたかのような顔で、俺の後ろ姿を見詰めていた――……。
どうも、この先は砂漠を抜けなければならないらしい。特に水の用意もしていなかった俺は、灼熱の砂地獄の前でウダっていた。
道中で見付けた杖を突いて、買ってもらったロングコートを羽織り身体を隠すが、喉が渇いて仕方がない。
「……キューティクル、だいじょぶか」
「もけー……」
キューティクルもいささか元気が無くなってしまったようだ。
まあ、この暑さじゃ仕方ないか……。そして、夜になればきっと恐ろしく寒いのだろう。セントラルまではそこまで離れていないから、一日も歩けば到着する筈なのだが。
一日歩く前に干乾びそうなのは、俺だけかな。
「……お前、俺よりモンクに付いて行ったほうが良かったんじゃねー?」
「もけっけ、もっけっけ」
……どうしてだろう。なんとなく、『あのロリに付いて行ってもご主人に会える見込みがない』と言われたように感じる。
俺の気のせいかな。
キューティクルはついに力尽きたのか、砂漠に落下した。
「おい、しっかりしろ。こんな所で倒れる訳にはいかないぜ」
「もけえ――」
……仕方ない。体感ではペットボトル一本分くらいしかないが、水をやるか。モンクもポップコからセントラル・シティまではあまり行き来しないから、砂漠の存在に気が付かなかったのだろう。
遠回りをすれば、砂漠を通らないで行けたかもしれないが……。
「ほら、水だ。飲めよ」
「もけー」
俺はキューティクルに水をやった。
「ももも」
……何故、飲みながら喋る。そういう仕組みなのだろうか。
瞬間大きな音がして、俺は後ろを振り返る。
「ゴゴゴ」
……なんか、でっかいワニがいた。
「……爬虫類って、普通こういう所には居ないよね? 近くにオアシスでもあるの? どうなの?」
「ゴルゴサーティーン」
「おれのうしろに音もたてずに立つようなまねをするな………おれはうしろに立たれるだけでもいやなのでね……」
アホな事言ってる場合じゃねー!!
俺はステータスウインドウを開き、すかさずワニの状態を確認……って、そんな事をしている暇も無かった!
ワニは据え膳食わぬはなんとやらと言わんばかりの勢いで、俺に飛び付いてきた!!
「キューティクル!! 戦うぞ!!」
「も、もけー!?」
とはいえ、俺如きにこんなでっかワニを倒せるのか? こいつもスッゴイデッカイ・ワニとか、そんな名前なのかもしれない!
俺は長剣を抜いた!!
「<アックス・ブレイド>!!」
……おや?




