渡り鳥の巣
「ノア」
「ノアちゃん!こっちだよっ」
「八咫、紫宝」
最初に念話をしたのはギルメンであり、リアルでも親友の紫宝と一番一緒に戦ってきた相棒の八咫。二人とも互いに近くに居たらしく、すぐに話すことができた。
そこから一度三人で集まることにし、二人のもとに走ってきた。言うなれば、今は感動の再開(?)だ。
「二人とも、その・・・ケガとかない?」
「全然!それ以上にすっごいことにはなってるけどね」
自分でも奇妙な掛け声だとは思ったが、本当に心配だったから仕方がない。
それににこやかな笑顔付きで応えてくれるのが紫宝だ。よくこんな状況で笑えるな、と呆れるけど、それが紫宝の良い所だとも理解している。笑うのは、相手に心配をかけないようにする紫宝なりの気遣い。現にノアもつられて笑顔になった。八咫も呆れてるように振舞うが、その実知らず知らずのうちに張り詰めていた緊張を解いていた。結局、三人ともお互いのことが心配だったのだ。
「ね、ノアちゃんは八咫さんの事どう思う?」
「?どうって・・・」
「だって八咫さん、本当の猫さんになっちゃったんだよっ!! リアルコスプレだよ? 人外だよっ!」
訂正。心配はしているだろうけど、ただ単に図太いだけかもしれない。
紫宝の言おうとしているとこが分からず聞き返せば、まさかの珍回答。当人の八咫も、これには苦笑いを浮かべている。どうも自分が来る前に一通りもう騒いだあとのようだ。
紫宝、君は一体いつそんなに逞しくなったんだい?
そう思いながらも、改めて変わり果てたようで、見慣れた戦友の姿を見る。
といっても、自分同様その姿は〈エルダー・テイル〉の頃と何ら変わらない、金と黒が混じった髪のカラーリングと長身、〈猫人族〉にしては太い四肢がネコというより虎めいた印象を与える姿だ。違うところがあるというのなら、顔を見るのに上を見ないといけないのと威圧感がある程度だろうか? あ、目付きの鋭さは少し緩くなったかもしれない。
・・・・・・・・・あの毛並みは触ったらモフモフしているのだろうか?
「紫宝、見かけはこうでも中身は立派な社会人なんだから。そう言ったことは言うべきではないよ」
「ノアちゃん、完全に猫を見る目だよ? ちなみに触り心地は最高でした」
「八咫触らして」
「当事者を置いて話すなあと許可を出してないのに触るな」
躊躇なくゴツゴツした、でも見かけと違いとってもモフモフしてて気持ちいい毛並みをなでる。八咫が何か行っているようだけど、この際長い付き合いだから無視でいいよね? モフモフは正義で癒やしだよ。世界の鉄則だよ。ああ、愛すべきモフモフ・・・・・
慌てた風の大柄の〈猫人族〉の腕に頬ずりする女性に、それを微笑ましそうに見る確信犯。
その異様で観る者に悪寒さえ感じさせそうな光景は、ノアがモフモフの魔力から覚めるまで続いたらしく、見た全員とノアの黒歴史として、街が平穏になっても彼らに黒い影を落とし続けた。
***
結果から言うと、戦闘系ギルド〈E.S.V.Z〉のギルメンは、一度自分たちのギルドホームに集まることになった。
それまでの過程は省かせていただきます。ええ省きますとも。いくら精神的に参っていたとしても、あれはないだろう。せめてひと目のないところでするべきだった。紫宝の「みんなに見られているけど、いいの?」発言と「場所をわきまえろっ」と八咫に怒鳴られてようやく正気を取り戻すとかっ。穴があったら速攻で潜って冬眠したいデス。
上のことだって、正気に戻って自己嫌悪している間に紫宝と八咫がやってくれたことだ。・・・・・・・・・ワタシノタチバッテナニ?
「ノアちゃん、どうしたの?」
「紫宝。今のあいつは壊れているんだ、あまり喋りかけてやるな」
そう二人がやりとりをしているとは知らず、ノアは早速自分のキャラ崩れに頭を抱え、さっきから周りと明らかに違う理由でずっと頭を抱えている。
二人は、ギルド|《自分たち》の策士の滅多に見れない姿を生暖かい目で見守り続けていた。もちろん、コレは他の皆に報告するための行為とも言える。
良くも悪くも、〈E.S.V.Z〉は平常運転のようだ。
かなり久々投稿。
誰だってこんなことがあったらキャラぐらい崩れると思うんだ、やっぱり。




