武将 蒲生氏郷 第117話秀吉軍の統合作業
(四国・城下/1585年)
城の明け渡しが終わると、
氏郷はすぐに秀吉軍全体の動きを把握するため、
街道沿いの各隊の位置を確認し始めた。
城下の広場に兵を待機させ、
左馬允とともに馬を進めた。
街道の北側には黒田隊が陣を敷き、
荷駄の列が長く伸びていた。
槍の穂先が整然と並び、
鉄砲隊が火縄を乾かしていた。
左馬允が地図を広げ、
黒田隊の参謀と短く言葉を交わした。
「黒田隊、明朝は二番目に出るとのこと。
街道の使用順、
我らはその前に入ります」
氏郷はうなずき、
次の隊へ向かった。
街道の南側には蜂須賀隊が陣を張り、
兵が荷をまとめていた。
槍隊が列を整え、
鉄砲隊が火薬袋を確認していた。
左馬允が蜂須賀隊の参謀と地図を突き合わせ、
進軍順を調整した。
「蜂須賀隊は三番目。
黒田隊の後。
我らは先鋒として街道を押さえます」
氏郷は街道の幅と地形を見渡し、
隊が並ぶ順番を頭の中で組み直した。
街道は途中で狭くなり、
谷へ入る地点では一列しか通れない。
そのため、
進軍順を誤れば渋滞が起こり、
補給路が詰まる。
左馬允が地図に線を引き、
進軍順を確定させた。
「先鋒、蒲生隊。
二番、黒田隊。
三番、蜂須賀隊。
四番、仙石隊。
荷駄はその後に続きます」
氏郷はその地図を受け取り、
秀吉本陣へ向かった。
本陣は城下の高台にあり、
秀吉の旗が風に揺れていた。
諸将が集まり、
進軍の準備を進めていた。
氏郷は馬を降り、
秀吉の前へ進んだ。
「四国街道の調査、
および各隊の進軍順、
整いました」
秀吉が地図を受け取り、
街道の線を指でなぞった。
峠の位置、
分岐の角度、
水場の印を確認し、
うなずいた。
「よい。
明日はこの順で動く。
そなたの隊が道を開け。
谷を抜けたら黒田隊と合流せよ」
氏郷は深く頭を下げ、
本陣を下がった。
城下へ戻ると、
左馬允が兵を集めていた。
氏郷は地図を広げ、
翌日の進軍路を兵へ伝えた。
「明朝、我らが先に街道へ入る。
谷の入口まで一気に進む。
黒田隊が続く。
荷駄は遅れるな」
槍隊がうなずき、
鉄砲隊が火縄を確認し、
荷駄隊が荷車の縄を締め直した。
馬の脚が点検され、
水桶が満たされ、
夜の準備が進んだ。
左馬允が記録帳を閉じ、
短く告げた。
「進軍順、伝達完了。
兵も理解しています」
氏郷は街道の先を見た。
明日の進軍は、
四国の山間を抜ける大きな流れになる。
その先頭に立つのは、
氏郷隊だった。
夜風が城下を抜け、
陣幕が揺れた。
秀吉軍の統合作業は整い、
翌日の進軍が静かに形を成していった。




