武将 蒲生氏郷 第109話四国遠征軍への合流
(1585年・大坂 → 瀬戸内海)
長久手の戦いから数日後、
氏郷隊へ四国遠征軍への参加命令が届いた。
大坂城下の街道には諸隊が集まり、
荷駄の列が長く伸びていた。
氏郷は馬を進め、
左馬允とともに隊の先頭へ立った。
「出る。
船団の集合地点まで急ぐ」
槍隊が前へ並び、
鉄砲隊が火縄を布で包み、
荷駄隊が荷車の縄を締め直した。
兵たちが列を整え、
大坂から西へ向かう街道へ入った。
街道沿いには、
すでに四国遠征軍の諸隊が進んでいた。
黒田、蜂須賀、仙石の旗が風に揺れ、
荷駄の馬が土を踏みしめていた。
左馬允が地図を広げ、
船団の集合地点を指さした。
「殿。
此処が港。
各隊はこの順で並ぶようです。
我らは三番目の船団に入ります」
氏郷はうなずき、
伝令を走らせた。
「列を詰めよ。
遅れるな」
街道は海へ向かって下り、
潮の匂いが風に混じった。
やがて港が見え、
海岸には大小の船が並んでいた。
帆が畳まれ、
船頭たちが縄を引き、
兵たちが荷を積み込んでいた。
氏郷隊は指定された船の前に到着した。
左馬允が兵数と荷駄を確認し、
記録帳に数字を書き込んだ。
「兵二百三十。
槍百二十。
鉄砲四十。
馬二十。
荷駄十六。
問題なし」
氏郷は船頭へ近づき、
乗船順を確認した。
「槍隊を先に。
鉄砲隊は中央。
荷駄は最後に積む」
船頭がうなずき、
縄を引いて船を岸へ寄せた。
槍隊が板を渡って船へ乗り込み、
槍の穂先が揺れた。
鉄砲隊が火縄を布で包んだまま乗り、
荷駄隊が荷車から荷を降ろして積み込んだ。
馬は別の船へ引かれ、
手綱がしっかりと結ばれた。
左馬允が船内を歩き、
兵の配置を確認した。
「殿。
前方に槍隊、
中央に鉄砲隊、
後方に荷駄。
この配置で問題ありません」
氏郷は船の縁に立ち、
港の全体を見渡した。
海岸には、
すでに他の船団が並び、
帆柱が林のように立っていた。
黒田隊の船が沖へ出る準備をしており、
蜂須賀隊の兵が荷を積み終えていた。
港の端では、
秀吉の使者が各隊へ指示を伝えていた。
「第一船団、出るぞ!
第二船団、準備を急げ!」
声が海に響き、
船頭たちが縄を引き、
船が波に揺れた。
氏郷は左馬允へ短く告げた。
「我らも備える。
帆が上がり次第、出る」
左馬允が兵へ合図を送り、
槍隊が船内で位置を整え、
鉄砲隊が火薬袋を確認し、
荷駄隊が荷の固定を確かめた。
やがて港の中央で太鼓が鳴り、
第一船団が沖へ向かって動き出した。
帆が風を受け、
船がゆっくりと前へ進んだ。
氏郷の乗る船も、
船頭の合図で岸を離れた。
縄が外され、
船が波に乗って動き始めた。
瀬戸内海の水面が光り、
船団が列を作って進んでいった。
氏郷隊は四国へ向けて、
静かに海へ乗り出した。




