成績は?
2013年
6月3日
7:11
USA アイオワ州
血が地面に滴り、自分の左手が落下するのが見えた。
「起きろ! 殺られるぞ!」
同僚達の恐怖に駆られた叫びが耳腔を木霊するが、そんなことはもうどうでも良かった。
また一つ、銃弾が腹の筋肉に食い込み小腸が切り裂かれる。
ゆっくりと、脳髄から記憶が零れ出す。
「よーしタイムトライアル、種目は制圧」
さして大きくない小屋が目の前に立ちはだかり、ヘッドフォンから聞こえる声に耳を澄ませる。
「始める前に訊くが、本当にM14で良いのか?」
「逆にダメ?」
そのM14――民間用モデルを改造してフルオート射撃出来るようにしたもの――のセイフティを外し、ハンドガードを握ってドアに構える。
「未だにそんな時代遅れ使ってるのか…」
「いいからさっさとして?」
私に訓練を受けさせる気は無いのかしら?
「わかったわかった! スタンバイ!」
空気が一気に張り詰め、ドアを割る時間が近くなっていることを告げる。
「…GO!」
質素なドアをぶち破り、目の前に現れたテロリストの的が、発射された実弾で頭から吹っ飛ぶ。
続いて右手の机の向こうから敵が立ち上がりそして倒れる。
「クリア!」
この間二秒、素早く小屋の廊下に進み、右の部屋に入る。
ここは人質の的が有ったのでそれを無視し、それに拳銃を構えた敵の首が飛ぶ。
「小部屋クリア、人質一人確保、救助要員を要請どうぞ」
「了解、次に進め」
振り返って廊下に戻り、廊下の先に現れたテロリストの心臓を射抜く
廊下を進み、左の大部屋に侵入。
ここは敵の姿が無かったが、柱がやたらと多い。
「大部屋に侵入、ここはなんか臭い。 調査頼む」
「了解、次へ」
また廊下に戻り、さっき倒した敵を踏み越え廊下の突き当たりに到達。
曲がると予想通り敵がいたので蹴り倒し、ナイフで首を突いた。
廊下を進みながらリロードし、セミオートからフルオートにチェンジ。
そして最後の部屋の前に立つ。
「最後の部屋に入る。 どうぞ」
「これまで言うこと無しだ。 ドアには爆薬を使え」
C-2爆薬を貼り、ちょっと離れて起動する。
部屋の中に木の板が吹っ飛び、その中に突入、五つの敵の的と三つの人質の的が目視できた。
右から順に敵の胸や頭を射撃する。
「オールクリア! まあまあかな?」
「いや大したもんだろ… そいつで…」
廊下を歩き、さっき調子に乗ってポイ捨てしたマグを拾う。
「このコースはだいたいM4とか416でのトライアルを想定してるらしいんだが…」
「確かに狭かったね。 まぁいーや、そっち戻るから」
「了解、ディアナ・オールグレン0:47秒」
「はい、カール・バウアー0:50秒」
「だー! チックショウ!」
MP7なんて立派な物使ったら、私ならどんくらい下げるかな。
まぁでも相方の尊厳の為にも黙っておくことにした。
「もっかいトライ…」
「おおっとこれはジョナサンからの呼び出し」
「なんだとぉ!」
iPhoneのパネルを叩き、会社もといジョナサンからの呼び出しメッセージを読む。
「集合は三時間後じゃなかったのか?」
「変わったっぽい。 一時間後ブリーフィングルーム集合」
生憎この訓練場は会社のオフィスからもっとも遠い。
「ヤバくないか?」
「ヤバいね…」
言いながら、自分の荷物は纏めとく。
「ええと… 掃除頼むよ男子!」
「ふざけんな!」
この訓練場は使ったら掃除しないといけないのだ。
「大丈夫、あんたの言い訳はしとくから!」
「ちょま!」
ヘッドフォンとマイクを外し、カールのSUVの鍵と自分の荷物を持ってオペレータールームを出る。
「あいつのスマフォ忘れた… まいっか」
M14をしっかりと担いで車に走った。
駐車場にSUVを停め、装備を隠しもせず引っ張って中に入る。
「ディアナ、成績はどうだ!」
「黙れゴリラ、お前を遥かに越える程度だ」
「なんでそんな辛辣!?」
そりゃ誰だって出勤直後に動物園で聞くような音を聞いたら、耳塞いでうるせぇ言うだろ。
「失礼な!」
「声に出てた?」
受付… はいつも通りの寝坊だろうから、カウンターから勝手にロッカーの鍵を取ってロッカールームに向かう。
「ちょっと待ったぁ! 俺を置いてったな!」
「お、お前は死んだはず!」
「何でだ!」
こいつ速いな。 まさか走ってきた?
「いーや、運良く社用車があったんでな。 ジョナサンに殺されるとこだったぜ…」
取りあえずカールは自慢話に花が咲きそうなので、さっさとロッカールームに入った。
「ディアナ、速いな」
「げっ、ジョナサン」
照明が暗く、並ぶロッカーのせいで狭苦しい部屋のベンチに巨漢が座っていた。
「げっ、とはなんだ。 げっとは」
「なんでもないであります。 サー」
「なぁ、あとでワークアウトに付き合ってくれんかね」
「すいませんふざけてましたもうしません」
「よろしい」
坊主頭が鈍く光り、山がぬっと動いて2mの巨体が直立した。
そのまま山はロビーへと向かった。
To Be Continued…




