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第百三十三話

<大工のあんちゃん最終章 受難!ゴルゴタ丘ライブへの道編!!>


「バラバだ。バラバを釈放しろ」

「?!」


その声は、ユダよりも先に答えた、大工のあんちゃんでした。


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ

商人達はあんちゃんの一言に、驚きを隠せません。カヤパでさえも、口を開けてびっくり。ピラトゥスも慌てて、あんちゃんに耳打ちします。


「おい!ナザレの大工。自分が今言ってる事が、どういう意味なのか分かってるのか?!」

「分かってる」

「それで敢えて、バラバを釈放しろというのか?!」

「ああ、そうさ」


ピラトゥスは再び民衆に目を向けました。すると今度は、民衆達から徐々に、訴えの声が上がってきます。


「そうだー!そのあんちゃんの言う通りだ!」

「バラバを釈放しろー!」


カヤパも思わぬ誤算に、大喜びです。


「ピラトゥス様、いかがザマスか?その犯罪者も民衆と同じように、バラバの釈放を望んでおります!」

「だ、だがしかし!」

「いいですか?!ピラトゥス様!もしそれでも、その男を磔刑にしないと仰るのなら、我々ユダヤ人は、ローマ皇帝(カエサル)とは友人ではありません!もちろん、貴方ともです!」


それは、カヤパからピラトゥスに対する、ユダヤ属州総督リコール脅しでした。


「さぁ、お答え下さい!ローマ帝国ユダヤ属州総督ポンティウス・ピラトゥス様!」


ワー!ワー!ワー!ワー!

民衆が雄たけびを挙げています。あんちゃんは目を閉じて、沈黙を貫いています。再び、ピラトゥスはあんちゃんに問いかけました。


「ナザレの大工よ、ワシはお前を自由にできる権力を持っている。これが最後の機会なのだぞ」

「それは俺の肉体だけを自由にできる権力だ。だが、俺の魂は、天空の神であり我が父であるスーパーゼウスだけだ」


あんちゃんは真剣でした。もはや揺るぎない意志が、ピラトゥスの迷いや責任転嫁に終止符を打ったのです。隣にいたバラバは、ロンギヌスによって手首の鎖を解かれました。


「大工のあんちゃん。もしかして、あんたは。。。」

「いいから、バラバ。リベカの所へ行ってやれ」


ワー!ワー!ワー!ワー!

ユダヤの商人達は、釈放されたバラバを手放しで歓迎しました。


「バラバが釈放されたぞ!」

「今度はナザレの大工を磔刑にしろー!」


バラバはさっきまであんちゃんを憎んでいた自分に、どこか後悔を感じずいられません。民衆達を通り抜けながら、何度もあんちゃんの方へ振り返りますが、あんちゃんは澄み切った微笑みで、まるで見送っているようでした。


「ナザレの大工よ、バラバが釈放されたという事は、ローマ帝国の法律に乗っ取り、貴様が鞭打ちと磔刑に処される事を意味する。異論は無いのか?」

「ああ。そしてあんたは、この件から手を引く事だけをかんがえればいい」


カヤパはピラトゥスの回答を、今か今かと待ち望んでおります。ユダヤ商人の民衆達も、固唾を飲んで見守っています。するとピラトゥスはパチン指を鳴らし、召使いに手洗い用の水皿を用意させました。


「ユダヤの属州民よ!このユダヤの王と称する者の処遇に関し、ワシの立場を明確にする!」


そして自分の両手を水につけ、手を洗い、その様を彼らに見せたのです。


「これは民意によって決断されたものである!したがってローマ帝国は、この件に一切の関わりが無い事をここに宣言する!」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ

民衆達はピラトゥスによる責任放棄のパフォーマンスにざわめきます。


「ロンギヌス、ユダヤの奴等の望みとおりにしてやれ!」


ワー!ワー!ワー!ワー!

民衆達は大喜びです。カヤパも遂に自分の望み通りの判決に、心から喜んでおりました。


「やったザマス!」


ついに、ついにあんちゃんの磔刑が決まったのです!静かに目を閉じて、自分の運命を受け入れるあんちゃん。


"罪滅ぼしのつもりかい?あんちゃんさん"

"ロボス。。。"

"人間は平等じゃないことを、身を持って知っただろう?内在する能力の恩恵を預かる者と、その能力にさえ気が付かず、無駄にダラダラ生きて行く者達。ユダの悪事の根源が、あんちゃんさん自身の存在だったとしても、あんたはユダの代わりに罪滅ぼしをする事なんてできないのさ"


するとあんちゃんは、一粒の涙を流して答えます。


「これはユダの悪事に対する罪滅ぼしなんかじゃないんだ。最後に残った俺の復讐心を、必ず成就させる為の決断なんだ!」


続く


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