第百三十話
<大工のあんちゃん最終章 受難!ゴルゴタ丘ライブへの道編!!>
強盗!
それは、モーゼのおっさんが決めた十戒にも書いてあるほど、昔から、御法度な行為でした。特に盗みのプロに徹した強盗族は、標的を国王や貴族、領主などにしていたので、掴まれば必ず死刑!ゲスタスとディスマスも死刑宣告を受けていたのです。
「愛の伝道師に革命家だぁ?!そんなもの、どうせ金持ち道楽息子の述而不作だろ?」
「何だと?!」
どうやら兄のゲスタスは、強盗族のわりに四文字熟語に長けているようです。
述而不作
意 味: 先賢の説を受け継いで述べ伝えるだけで、しいて自分の新説を立てようとしない。
「そのくせ、自分は世界を変えるだの、ローマ帝国を追い出してやるだの、偉そうに自分を正当化してる誇大妄想じゃねーか、なぁ?ディスマス」
「そうみたいだね、ゲスタス兄さん」
するとバラバは牢越しに、ゲスタスへ反論します。
「オラから見れば、そういうお前達人の物を盗んで、自分勝手に生きているだけじゃないか」
「それの何が悪い?」
「何だと?」
「俺達は自分達の為だけに、裕福層から盗んでるだけだ。だが、お前達は貧困層をだまくらかしているじゃねーか。まさに大悪無道な連中だぜ!」
はい、意味は読んで字の如く、道徳にそむき、きわめてひどい悪い行いです。するとあんちゃんは陽気な笑顔で兄のディスマスに話しかけました。
「なるほどな、ゲスタスの兄ちゃん。お前の意見はごもっともだな」
その言葉にバラバはびっくり。ゲスタスとディスマスも意表を突かれました。
「プロの強盗であるお前さんからみれば、俺はどんな風に映るんだ?」
「へへへ~、和顔愛語で貧乏人をだまくらかして、素意大略を持ってる感じだ」
和顔愛語
意 味: なごやかな表情と親愛の情がこもった言葉づかい。親しみやすく暖かい態度のこと。
素意大略
意 味: ふだんから大きなはかりごとをめぐらしていること。
「すまね、もっと分かりやすく言ってくれないか?」
「ったく、世話の掛る野郎だぜ。つまりだ!お前達のような連中は、自分の目的の為に、言葉巧みに貧困層をだまくらかして、彼らの生活苦にくすぶる憎しみを焚きつけてるんだ」
「ほうほう」
「しかも飯まで恵んでもらってるじゃねーか。他人の人生まで振り回して、俺達強盗よりもタチが悪いぜ!その点俺達は強盗のプロだ。貧困層は絶対に狙わねぇーよ!」
あんちゃんは両腕を組んで、うんうん頷いて感心しています。あんちゃんがなぜ感心しているのかが、バラバは分かりませんでした。
「つまりだ、お前さんは強盗のプロで、プライドも持ってて、ほんでもって内清外濁なわけだ」
「なに!?」
さすがあんちゃん!両腕を組んだまま、ニンマリと笑いながらゲスタスに対抗しています。
内清外濁
意 味: 心は高潔だが外面は俗物のように振る舞うこと。乱世を生き抜く処世術。
「ゲスタス兄さん!この大工、四文字熟語攻撃で返してきたぞ!」
「くっそう、おまえタダものじゃないな?」
するとあんちゃんは両腕を組みながら、立ち上がって偉そうに笑いました。
「わっはっはっはっはっは!俺様は知る人ぞ知る、愛の伝道師!不撓不屈の精神を持つ男よ!」
「くっそう!神出鬼没のくせに、傲岸不遜なやつめ!」
不撓不屈
意 味: どんな困難に出会ってもけっして心がくじけないこと。
傲岸不遜
意 味: 人を見下すような態度を取ること。
「さぁ来やがれ!強盗族ゲスタス!百折不撓でバトルだ!」
「臨むところよ!お前など活殺自在だぜ!」
百折不撓
意 味: 何度の失敗にもめげずくじけず挑戦すること。
活殺自在
意 味: 生かすも殺すも、こちらの思いのままであること。転じて、自分の思いどおりに相手を動かし、扱うこと。
全く面倒くさいことになりました。作者の苦労も全く考えず、この二人は四文字熟語バトルをおっぱじめようとしていたのです!一方、戦隊物ピンクのコスプレをして、自分の馬鹿息子を探しに行ってたマリア母ちゃんはというと。
「えええええええええええええええええええええ!?ピラトゥスが連れて帰ったですって!?」
「んだ。さっきローマ兵達がナザレの大工を連行してっただ」
やっとこさヘロデ国王のお城の門についたのに、またもやすれ違いであんちゃんには会えません。まるでなかなか見つからないドラクエⅡのサマルトリアの王子のように。マリア母ちゃんに振り回された弟子達はヘトヘト。その時、ヘロディア皇妃がたまたま通りかかりました。
「あれ?サロメちゃんじゃない?」
「わーん!ヘロディアお母様~」
「久しぶりね?」
「はい!お母様とは第八十六話以来ですわ!」
二人は親子として抱き合っていました。その様子を遠目で見つめるマリア母ちゃんの目尻には、少しだけキラリと光るものがありました。その姿を、心配そうに見つめるマグダラのマリヤ。
「マリアお母様、大丈夫ですか?」
「ありがとう、私は大丈夫よ。ただ、昔を思い出してね」
「昔をですか?」
「ええ。うちの坊やがあのくらいの時には、私へあんな風に抱きついてくれたんだけどね」
「お母様。。。」
いつも元気なマリア母ちゃんですが、本当は内心、寂しかったのかもしれません。そんな心優しいマリア母ちゃんに感化されたマグダラのマリヤは、そっと肩に手を置きました。
「お母様、きっと大丈夫ですよ。どんな時だって、あの人はピンチをチャンスに変えて、切り抜けてきたじゃありませんか」
「マグダラのマリヤちゃん」
「それだけじゃありません。あの人は、人がピンチな時には必ずやってくるんですから。私が幼いころ、転んで怪我したときだって。。。」
マリア母ちゃんはマグダラのマリヤちゃんの顔をジ~っと眺めています。
「もしかして、マリヤちゃん。うちの息子に『惚』の字なの?」
「え!?はい!?な、なに言ってるんですか!あの人のことなんか!」
「怪しいわね~。大体、女性が『あの人』って言う時は、十中八九惚れているのが少女マンガの相場よ」
「いつから少女マンガになったのですか!!そ、そんな相場はいりません!もう!お母様ったら、変な事を言わないでくださいよ!」
するともちろんサロメちゃんも聞き洩らしません。
「えええ!スーパーダークにショック!マリヤ御姉様は、あんな大変態が好きだったなんて!」
「ち、違うわよ!そ、そんなわか無いでしょ!」
「ひ、ひどい!私というものがありながら!!」
「そんなものありませんから!」
「わーん!ヘロディアお母様~!サロメは~!サロメは~!スーパーネガティブでございますわ~!」
「もう!!!違うって!あの人、あ、いや、えーっと、もう!!本当に違うの~!」
しかし、既に顔は真っ赤。誰が見ても惚れてる証拠。この国一番の蹴り技を持つマグダラのマリヤですが、さすがに恋愛となると防衛ができないようです。他の弟子達も、そんな彼女の姿を、微笑ましく見守っていました。さて、ヘロデ国王にあんちゃんを突き返されたピラトゥスはというと。
「くっそ!どうすればいいんだ!?」
ローマ帝国のティベリウス皇帝から、ユダヤの民を刺激せず、むやみやたらに処刑するなと命令を下されていた為、万事休すの状態。正直、あんちゃんくらい釈放してやってもいいのですが、そうなるとカヤパからは属州総督のリコールを出される可能性があったのです。一方、あんちゃんに恨みを持つ商人達を集めたカヤパは、ノリにノッております。
「いいザマスか?あの大工の釈放は絶対に許してはならないザマス!」
おーーーー!!おーーーーー!!おーーーー!!おーーーーー!!
「ミー達は、例えローマ帝国に蔑まされても、十戒とローマ法に乗っ取り正々堂々と商売をしてきた自負があるザマス!」
おーーーー!!おーーーーー!!おーーーー!!おーーーーー!!
「それを無職の愚か者に邪魔されて、お前達の命まで危険にさらさして、何が愛の伝道師ザマスか!?」
おーーーー!!おーーーーー!!おーーーー!!おーーーーー!!
商人達は怒り狂って、あんちゃんに対して憎しみを噴火させてました。
「明日、この場できっちりと!あのナザレの大工を磔刑にしてやるザマス!!」
おーーーー!!おーーーーー!!おーーーー!!おーーーーー!!
遂に、あんちゃんにとって運命の時がやって来たのでした!
続く




