再会と破滅の始まり
「ふぅ。」
湖のそばまで出てきた。
じっと目を凝らす。
前回は怖くてあまり見ることができなかったが、改めて湖を見ると静かに黒く横たわっていることがわかる。
やっぱりあまり見るものではないな。
怖い。
そう思って、手早く青菜の影を探す。
「…いた。」
前に会った位置と同じところに座り込んでいる人影が見えた。
大きさから言うと、たぶん青菜だ。
周りに動いている動物がいる…確かココアだったか。
僕は早足でその影に近づいた。
僕の足音に気づいたのか、ココアが
「シャー!!!!」
と唸る。
「誰?!」
青菜が僕に向かって叫ぶ。
警戒しているようで、いつでも逃げられる体制をとったことが影でわかった。
「僕だよ。」
僕は声が届く範囲で早足を止め、比較的ゆっくり近づいた。
僕の声を思い出したのか、
「あなた…。またきたの?もうここには来ないで欲しかったのに!」
とまた不機嫌だ。
しかしその不機嫌な顔さえも美しい。
前回の不機嫌とはまた違って、今回は本当に怒りがあるように見えた。
「ごめんね。また会いたくて…。」
僕が言いかけた瞬間…
「シャー!!!!!!シャー!!!!!!」
ココアが猛烈に威嚇し出した。
ハッとなる青菜。
すると…
「何をしている!!!!!」
そう言ってまばゆい光を向けられた。
急に光を向けられた僕らは、目がくらみ何も見えなくなった。
「シャー!!!!!!シャー!!!!」
ココアは威嚇し続けている。
「この!!」
誰かがココアに暴力を振るったようだ。
「キャーン!!!!」
叫び声をあげて、ココアが静かになる。
だんだん目が見えてきた。
と同時にココアがうずくまり、首を抑えられているのが見えた。
「やめて!!!許さない!!」
青菜はココアの方に走っていく。
が、すぐに
「お前もおとなしくしろ!!」
そう誰かに言われ、両手を捕まえられ羽交い締めにされる。
「離して!!!!!!」
そう言って青菜は暴れるが、抑えている男の力には敵わない。
呆然とそのやり取りを見ていた僕に
「君は、佐々木隼人くんだね。」
そう言って光の中から出てきたのは、
黒眼鏡をかけた40代くらいの男。
冷たい目をしながら青菜とココアを眺め、
「佐々木くんはこんな夜に何してるの?」
と聞いた。
「ぼ…ぼ、ぼくは…。」
唇が震えてうまく発音できない。
そんなぼくを見て男はハァとため息をつき、
「じゃあとは任せるわ。」
と言って後ろを向いて手を振った。
手を振った先に視線を向ける。
男がゆっくりと前に出てくる。
そいつは僕の前に立ち、
「じゃ、帰るぞ。」
と強引に僕を立たせた。
鬼の体育教師、松岡だった。