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少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第三章 復活のシュタインボルト

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キリカ、シュタインボルトと会う

 その日、ミッドラン城に珍客が訪れた。


 その人物が城門に来ると、門番はポカンと口を開けて、その人物の頭の先からつま先までジロジロと見た。


「えー、四十代以上の女性は通すなとの、領主様の命令だから、通してよいのか……しかし、世の中には見た目は幼くても、実は年増なこともあるからな……」

 門番のハッキリしない言いぶりに、その女性は後ろを振り返り、

「笑え」

と、言った。


 女性の後ろに控えていた七人の小人は、

「キリカ様、オバサン!」「ホントは、十歳!」「でも精神年齢はお婆さん」「ハハハッ」✖4

と、一斉に笑った。


「己(おのれ)ら!笑うところが違うわ!」

 その女性――ドラビタ王国王女キリカ――は、七人の小人を怒鳴りつけた。


 七人の小人は、シュンとして、押し黙る。


 キリカは改めて息をいっぱい吸い込み、「ハ、ハ、ハ」と、大声で笑った。

「これが笑わずに入られようか。我をよく見ろ」


 そう言われて、門番は困った顔をした。

「見るまでもない。でも、しょうがないだろう。あなたみたいな子どもだって、女性には変わりない」

「噂には聞いていたが、ミッドラン城の女主は、よほどの女性嫌いらしいな。しかもなに?四十歳以上はダメ?これは相当なものだな」


 その後も「通せ」「通さない」の押し問答が続く。

 均衡を破ったのは、いつの間にか現れたクロトだった。


「この方は閣下の客人だ」

「クロト様。しかしこの城の主はマギー様です。いくらシュタインボルト様の命令であっても通せません」

「貴様!閣下よりマギー様を取るとは、閣下を愚弄するか!」

 クロトは剣の柄に手をかけた。


 門番は青ざめ、泣きそうになる。

「わ、分かりましたよ。おそらく何かの手違いで、命令が届かなかったのでしょう。ささ、お通りください」


 キリカ一行はクロトに先導されてミッドラン城に入った。


 しばしの間、無言で城内を歩く。


 突然、キリカが「あっ」と、声をあげた。

「お主、彼の地で少年王を襲った刺客だな?まさかシュタインボルトの関係者だったとは!これは少々驚いた」


 クロトは相変わらず前を向いている。


「まあいい、我はシュタインボルトの願いで少年王を助けに行ったのだが……シュタインボルトも、部下を完全に掌握(しょうあく)していないようだな」

「閣下は何も悪くありません」

 クロトが振り向いて言った。


「これはボクの一存でやったこと。ですが閣下はボクの動きを読み、キリカ様を遣わされた。ボクの浅はかな行為など、閣下には手に取るように分かっていたのでしょう」

 クロトは力なく言った。


「クロト、お主の目的が少年王の暗殺にあるのなら、やめたほうが良い。少年王は時代を動かす時代の寵児(ちょうじ)だ。その流れをお主ごときが止めることは出来ん」

「……お言葉、心に止め置いておきます」

 クロトはキリカをシュタインボルトの部屋まで案内すると、自らは去っていった。




「キリカ様、よく来られた」

 シュタインボルトがキリカを部屋に迎え入れた。


「少々行き違いがあってすまなかった」

「シュタインボルトは愛されているのだな」

 キリカが皮肉っぽく言うと、

「いやいや、そうなのだ。我々二人は年が離れているでしょう。心配することはないのにマギーときたら、女性を城中に入れたがらないのです。これも愛の強さ!ということでご容赦ください」

と、ハハハと笑った。


「だめだな、これは」

 キリカは呆れ顔だ。


「ところで、少年王のことだが……済まなかった、礼を言います」

 シュタインボルトは深々と頭を下げた。


「ああ、それは大丈夫だ。それにしてもシュタインボルト。あなたの情報網は大したものだ。刺客が少年王を襲うことも、少年王が襲われる場所もしっかりと把握(はあく)していた」

「私の情報網は至る所にあります。ミンツブルクにも、もちろん手は回しています」

「あとは、そなたのお気に入りのことだが……」

「お気に入りとはクロトのことですか?」

 シュタインボルトの言葉に、キリカがうなずく。


「クロトは少年王の命を狙っておった。あやつの意思か?誰かの命令か?」

「クロトは皇帝陛下直々の暗殺部隊――邪忍――にいたのです。私は、とある事件でクロトと知り合い、陛下に頼んで私の部下にもらい受けました。……私の後継者にと期待したからです。しかし、陛下とは完全に切れていなかったようですな」

「それで皇帝の命令で、少年王を襲った、と」

「おそらくは」

 シュタインボルトは立ち上がり、窓の外を見つめた。


「陛下の命で少年王を襲ったのであれば、私が表立ってそれを防ぐことはできません。そこで、あなた様にお願いした次第」

「なるほどの。しかし我が外遊中でちょうど良かった」


 シュタインボルトは窓を離れ、椅子に腰掛けた。

「ハハハ。私の情報網も大したものでしょう」

 ハハハと、シュタインボルトとキリカはお互いに笑いあった。




 一通り笑い終えたところで、

「キリカ様、少年王に会っていかがでしたか」

と、シュタインボルトが聞いてきた。

「ウム、甘ちゃんなところもあるが、お主が見込んだだけのことはある。彼奴(きゃつ)の魔法力、フィンデガルド軍の強さ、そしてここが一番重要だが……あの強固な意思と行動力。少年王の存在は、時代を変えるきっかけになる」

「私もそう思います。そして、クロトのことは放っておきましょう。おそらく暗殺という手段はもう取らない。しかし、クロトには少年王に対してある種の思いがあるらしく、今回のことも皇帝陛下の命令だけで動いているとは思えません」

「そうは言っても、クロトは凄腕の暗殺者。魔法は使えないにしろ、その腕前は少年王も上回るかもしれん。少年王の命が危ないのではないか?」

 キリカの言葉を聞いて、シュタインボルトはハーッ、とため息をついた。


「少年王が死ぬようだったら、それも致し方ありません。所詮はそこまでの人物だったということ。私と戦うには、まだ及ばなかった、ということですな」

 ちょうど話が一段落した頃、部屋にマギーが入ってきた。


「あらあら、キリカ様!お久しぶりでございますわ。すっかり大きくなられて」

「いや久しぶりと言っても……そうだな、一年ぶりでそなたと会うことになる」

「そうですわね。一年も経ってすっかり大人になられましたわ」

「大人と言っても、まだ十歳だがな」

「嫌だわ、そうやって堂々と年齢が言えるなんて、羨ましいですわ。もっとも年齢があと一歳上だったら、この城には入れませんことよ。だって旦那様の心は少年のように若々しいのに、キリカ様の精神年齢ときたら、四十歳より高いのですからね、ホホホ」

 マギーが冗談っぽく笑う。


「マギー、余のことを心配してくれるのはいいが、キリカ様は大丈夫だ。心配することはないぞ」

「あら、あなた。そうね、キリカ様だったら何も心配することはないのでしょうけど。あなたに変な虫がつかないか心配で心配で」

「マギー、そんなに余のことを……」

 そう言ってシュタインボルトは立ち上がり、マギーの手を取る。


「マギー、誤解しないでくれ。余はマギーとの歳の差なんか、これっぽっちも気にしたことはないんだ。余の愛はいつもマギーにだけ向かっている。なぜそれを分かってくれない」

 シュタインボルトはマギーの目を見つめながら言った。

「そうね、あなたの事は信じているわ。だけど心配で、心配でしょうがないのよ」

 マギーの方もシュタインボルトを見つめて話す。


「やれやれ、そういうお熱いことは、我のいないところでやってくれないか」

「ああ、これはすまない。マギー、挨拶は済んだだろう。下がるように。ところで明日、観兵式があるんだ。お前もどうだ」

 シュタインボルトはマギーに言った。


「わらわはそういったことには興味ないのよ。ダンスパーティーの準備もしなきゃいけないし、遠慮させていただくわ」

 マギーは部屋から出ようとしたが、何かを思い出し、顔だけこちらに向ける。


「ところでクロトは最近見ないようだけど」

「ウム、あいつは余の命で少年王の探りに行っている」

「あらそうなの。少年王の……でも気をつけておくことね。クロトは恋する乙女のように情緒不安定だから、少年王に対して何をするか分からないわよ。そうすると、少年王と戦場で雌雄(しゆう)を決するという、あなたのプランが台無しになってしまうわ。お気をつけ遊ばせ」

 言いたいことだけ言って、マギーは部屋から出て行った。シュタインボルトとキリカは、お互い顔を見合わせた。

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