表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『距離を測るのをやめた日、騎士団長の恋人になりました』 ― 距離と契約の境界線 ―(彼氏×彼氏の事情)  作者: つるぎまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/39

第3話「他人から見た関係」

ここから“外部要因”が明確になります。

関係はまだ合理的なはずですが、それだけでは説明できないものが混ざり始めます。


 視線が、集まっている。


 理由は明確だ。


 アルベルト・フォン・シュヴァルツ。


 その存在が、この場の中心にある。


 そして——


 その隣に立つ自分。


 視線が向けられない理由がない。


「見られているな」


 低く、隣で呟かれる。


「当然です」


 短く返す。


 視線は正面のまま。

 必要以上に反応する意味はない。


「問題ないか」


「ありません」


 即答。


 事実だ。


 視線は業務の範囲内。

 気にする必要はない。


 ——そのはずだった。


「……あれが噂の」


 近くで、声がした。


 小さく。

 だが、確実に聞こえる。


「本当に恋人なのか?」


「シュヴァルツ卿が?」


「相手は文官だぞ」


 疑念。

 好奇。

 そして、期待。


 混ざり合った視線が、こちらに向けられる。


(……想定内です)


 処理する。


 これは自然な反応だ。

 無視すればいい。


 それで済む。


 だが。


「聞こえているな」


 隣で、アルベルトが言う。


「問題ありません」


 繰り返す。


 変わらない。

 変える必要がない。


「そうか」


 短い返事。


 それで終わると思った。


「なら、証明してやる」


 その一言で。


 空気が、変わった。


 逃げ場が、消える。


 意味を理解するより先に。


 顎に、触れられる。


 人目の中で。


「——っ」


 強制的に視線を上げさせられる。


 距離が、消える。


 逃げ場がない。


 視線が、集まる。


 全てが。

 この距離に、固定される。


 呼吸が、近い。


 その瞬間。


 わずかに。


 思考が整う。


(……なぜ)


 拒否するべきなのに。


「笑え」


 低く、命じられる。


 短く。

 逃げ場を与えない声。


「……」


 拒否はできない。


 契約だ。


 そうでなければならない。


 ゆっくりと。


 口角を上げる。


 自然に。

 不自然にならないように。


 整える。


「……これで」


「足りない」


 遮られる。


 迷いなく。


 ――見せるように。


 次の瞬間。


 腰に手を回される。


「——っ」


 完全に、距離が消える。


 引き寄せられる。


 逃げ場はない。


 視線が、さらに集中する。


 ざわめきが、止まる。


 全員が見ている。


 この距離を。


 この関係を。


「これでいい」


 低く言われる。


 そのまま。


 周囲に向けて。


 はっきりと。


「俺の恋人だ」


 一切の迷いなく。


 断定。


 その一言で。


 すべてが決まる。


 空気が、変わる。


 疑念が消える。


 代わりに。


 確信が広がる。


 ざわめきが、別の質に変わる。


(……確定しましたか)


 頭では理解する。


 これで条件は満たされる。


 婚約回避。


 目的は達成される。


 それでいい。


 それで——

 いいはずだ。


「……離してください」


 小さく言う。


 周囲に聞こえないように。


「無理だ」


 即答。


「――今はな」


 短く付け足される。


 その言葉に。


 わずかな引っかかりが残る。


「……契約です」


 確認するように呟く。


「そうだな」


 肯定される。


 あっさりと。


 それなのに。


 手は離れない。


 距離も変わらない。


 近いまま。


 触れたまま。


 固定される。


(……なぜ)


 論理は成立している。


 契約としても、正しい。


 それなのに。


 この状態は。


 どこか——

 過剰だ。


「……エリアス」


 名を呼ばれる。


 近くで。


 低く。


「顔に出ている」


「……問題ありません」


 反射的に返す。


 それしかできない。


「そうか」


 短い返事。


 それ以上は追及されない。


 距離は変わらない。


 離されない。


 そのまま。


 関係だけが。


 外側から、固定されていく。



 その夜。


 エリアス・グレイフォードは。


 他人によって——

 “恋人”として確定させられた。

必要だから触れる。

その定義は、まだ崩れていません。

——今のところは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ