第35話 美味い料理は心を繋ぐ
ほんの少し歩き回ると良さげな香草が四種類程手に入った。それに加えこの地方には“竜の舌”と呼ばれている肉厚な植物が沢山生えている。この植物の汁がシロップになる程甘ぇ。それと香草を合わせてタレとして、肉と焼いたら・・・・(只今、味の妄想中・・・)
!おぉ?いけるんじゃね?料理はインスピレーションからよ!
ちなみに、“竜の舌”の汁を蒸留したものがこの辺りの特産の酒になるのだ。
・・・酒か。シグさんへの手土産の酒は手に入らなかったな・・・。
香草を手に戻ってみると、リンがこの街に起きた出来事を語っていた。・・・オレの事も話したんだろうか・・・。いや、ないな。うまいこと話してくれたんだろうが、まあ、疑わしいわな。戻ったオレに気付いた爺さんの怪訝な顔からそれと判るし。
・・・気がつかないフリして調理を進めよう。頭を刎ね逆さまにし、血抜きしておいたトカゲの皮を剥き、切れ目を入れて骨ごとぶつ切りにする。塩、香草、“竜の舌”の汁を擦り合わせペースト状にしたものを肉の切れ目に塗り込んでいく。
スペアリブは、グローブカットして骨の裏の甘皮に筋を入れてやる。こうしてやると焼けたときに骨からスルッと剥がれ食べやすいのだ。それを熱した岩に並べて焼いていく。
その間に見つけた香草の一つ、レッドペパーと塩とを混ぜたものを磨りつぶして・・・辛みの欲しい奴はお好みで振りかけて召し上がれ!
「どうも。お待たせしました」
メストカゲのボリュームのある肉を切り分けると旨味の凝縮された肉汁がさっぱりとした脂を纏いながら滴り落ちてくる。雄の、ややパサつきのある肉とは訳が違う。暖めておいた石のプレートへ移すとそれが「じゅっ」と心地よい香りを立ち上らせる。
おい。みんな口が半開きでみっともねぇゾ?
「ほう、ほう、ほう!中々に良い匂いだ!!ヒトにしてはやるではないか!美味い料理は種族を超えて心を繋ぐ。そういうものだ。
では、いただこう(もぐもぐ・・・)
こっ!!(パクッ)ムウゥ(ガツガツ)ムムッ?!」
・・・なんだよ!美味ぇのかよ?まずいのかよ?わかりずれぇな!!まぁ、さっきまでの顔つきとは打って変わってるから美味ぇんだろう。多分。
「うん。ワタシも頂くよ、泣いたら落ち着いたし。ただ、オマエについてはやっぱり訳分かんねぇし、気持ち悪い。だから、うん、ワタシも料理で決めようと思う!ホントに悪いヤツに美味いものは作れない、相手を思う気持ちが美味い料理になるからな!!」
「オイラは、どうでも・・・いい・・・んナァ!喋りづらいナァ!戻る!!オイラはどうでもいいナァ。美味いもん食わせてくれりゃあ、それでいいんだナァ」
オレの是非は料理の出来に委ねられたようだ。味付けに関しては自信がある。が、やはり不安だ。
セリもオイデもほぼ同時に肉にかぶりつくが、何も喋らない。代わりにセリがスペアリブの骨を咥えたまま、親指を立てて、満面の笑みを見せた。
「お気に召して頂けて何よりでございます。ん~~!!我ながら上出来!いい匂いだ!
・・・んじゃ、オレも頂きますか!!」
「んナッ!オマエは飯抜きなんだナァ。セッちゃんを泣かしたバツなんだナァ!」
「マジかっっ!!オマエ、その肉!!市場ならとんでもなく高いんだぞ!?ひとくち!ひとくちでも良いからオレも食べた・・・睨むなよ、いや、わかったよ・・・リン、オマエだけでも食べといで。絶対美味いからさ!」
「やだ!ルイが食べられないなら、ボクもいらない」
「食べといでって。オマエはなにも悪く無いんだから(ちらっ)」「ヤダ!!」「ほ~らって(ちらっ)」「いらない!」
ちらっ。
「チッ!・・・オイデ、食べさせたげなよ。リンちゃんがかわいそうだし許してやろ?うん、まぁ、とりあえずルイが元に戻って、姑息なおっさんで、いつも通りだって事、今のでわかったしな」
「んナァ。セッちゃんがゆーなら。確かになにも変わらず、ズッコイおっさんなんだナァ!もちっと浄化されっちまえば良かったのにナァ!」
「・・・なんだかよ、毒吐くにしたってすっっげぇトゲトゲしいのよね~。でもよ、むしろお前らが今まで通りで救われるぜ!有難うな!ほら、リン!!食べようぜ!」
「・・・いい・・・。ボクの分、ルイが・・・たべ・・・」
「どうした?お嬢ちゃん。コヤツの料理美味いぞ?合格点だ!」
骨を咥えたままヒゲに垂れた肉汁を満足げに拭き取りその指をチウと吸った。良かった!実はコレ、ダイアンの酒場のレシピなのよ、マズいわけがねぇ!ありがとうよ親父!
「・・・ムムッ?!顔色がすぐれないようじゃが・・・大丈夫か?」
「・・・大丈夫。ちょっと、疲れただ・・・け」
急に顔色が真っ青になり、つかんで離さなかった腕の力がスッと抜けその場に倒れ込んで竜の姿に戻ってしまった。
「リン!!」「リンちゃんっ!!」
「オイオイ!!どうしたい?ムムッ!こいつぁ、たまげたな!このお嬢ちゃんは竜だったのかい!!・・・フヌ『竜』か。仕方ない。休ませてやるから俺の住み家へ連れて来い」
「有難うございます!助かります!」
「なぁに、美味い料理の礼だ。それにしても竜族がへばるところを初めて見たわ」
そう言うとリンを抱きかかえオレ達を彼の家へと案内してくれた。
・・・へばっているとはいえ、リンが触らせるのなら悪意は無いのだろう。




