白封筒
俊介から陽菜宛に段ボールが届いた。陽菜はまだ学校から帰ってこない。なんだろう?美佐子は梱包されているガムテープをゆっくりめくり開梱した。中にはお菓子が半数以上を占め他には文房具や雑貨類がぎゅうぎゅう詰めにこれでもかと詰め込まれていた。あっ、これ⋯パティスリーソレイユ・エ・フルールのバームクーヘン⋯私も大好きなやつ⋯。東京の生活を思い出した。私は健太との不倫を清算してから逃げるように長野に戻ってきた。東京に未練がないといえばそれは嘘になる。綺羅びやかで何でもあり、便利でお洒落な東京。でもそんなことを考えても仕方ない。私は今この長野の地にいる。陽菜も大学に通い出し、一時は軽蔑されたけど何とか今は関係を修復しつつある。いや、陽菜は每日授業についていくのがやっとで私とのことは正直余裕がないのかも知れない。
あれ?これなんだろう。段ボールの隅に白い封筒を発見した。俊介、陽菜にお手紙でも書いたのかしら。開けてみるとそれは、婚姻届だった。婚姻届?誰の?えっ?何故か小刻みにに手が震えるけと動きは止められなかった。「夫となる人」の欄は宮島俊介、「妻となる人」の欄は⋯宗像和香⋯あのふたり入籍するんだ⋯。宗像さんには陽菜がお世話になったから幸せになって貰いたい気持ちもあるし、表現出来ない何か複雑なものもあるけど、もう私には関係ないんだ、と思う事にした。私がやるべきことは高橋りんご園を守ることと陽菜を少なくとも卒業までは支えてやること⋯そう。それだけ。
婚姻届には陽菜に保証人をお願いしたい旨の付箋がついていた。保証人の1人目は宗像大輝⋯?宗像さんの兄弟?かしら。2人目を陽菜に?そっか。そうだよね。陽菜も保証人になれる年齢になったんだ。時が経つのは本当に早いな。婚姻届を元通りに畳み、封筒に入れ何事もなかったかの様に段ボールの封をした。
「ママ、私宛に荷物届いてる?」学校から戻った陽菜がスマホを握りしめ帰宅した。
「あぁ。あれかしら。」
段ボール箱は未開封の様に鎮座していた。陽菜は丁寧にガムテープを外し、隅に入っていた封筒を私に見えないようにそっと通学用のショルダーバックに入れていた。
「ママ、パパからお菓子沢山届いたの。ママにはハンドクリームもあるの。おじいちゃん達には日本茶も!あっ。これパティスリーソレイユ・エ・フルール!食べたかったの〜!」
陽菜は嬉しそうに段ボールから次から次にお菓子やら雑貨類やらを取り出し、日本茶はおじいちゃん達に淹れてあげようかなと湯呑みを準備していた。
陽菜は俊介と和香の入籍を美佐子には知らせずにいた。陽菜は自分が段ボールを1番に開梱したと思い込んで。




