閑話① アヤメ・スターリング
閑話① アヤメ・スターリング
私は白衣のポケットに手を入れながら大きなガラス越しに愛する我が子を見ている。
まだまだ小さい手、可愛い足、私に似た綺麗な黒い髪、私の愛する人に似た大きくて青い瞳、私の、私たちの愛する娘は目の前で成長を続けていた。
「サクラ、アヤメの様子はどうだ?」
金髪の白衣の男性が近づいてくる。
この男性が私の愛する人だ。
「ジェイク。順調よ。今は寝ているわ」
ジェイクは笑顔を見せる。
「そうか、それならよかった。それにしてもアヤメは本当にサクラにそっくりだな!」
ジェイクは満足げに腕を組む。
「私に似てるならすごーく美人になるわよ?なんてね!」とジェイクの頬をつついた。
私とジェイクはお互いの顔を見て笑う。
私たちは今幸せな時間を過ごしていると実感する。
人類は今生存を危ぶまれている。
ゼノスの人たち、私たち研究者ももちろんだけど、そうじゃない普通の人も毎日を精一杯生きている。
ヴォイドがこの世界の大半を支配してから、死の恐怖は拭い去れない。
だけど、私たちはそれでも生きることを諦める訳にはいかない。
これから生まれる子どもにも、これからを生きていく人たちのためにも、もちろん自分たちのためにも。
数年後
「サクラ、そろそろアヤメのところに行こう」
ジェイクが迎えに来る。
「そうね、いきましょ!今日は鬼ごっこだったかしら」
私とジェイクはアヤメが待つ研究施設の一室へ向かった。
「アヤメ、お待たせ」
「ママ!パパ!待ちくたびれたよー!」
草花が一面に咲いている花畑を愛しの我が子が可愛い笑顔で走り寄ってくる。
「ママ、あのね!さっきね!黄色い蝶々がいたの!それでね、追いかけたけど飛んでいっちゃってね、それでね、」
私は勢いよく話すアヤメを抱きしめながら
「はいはい、アヤメ、そんなに一度にたくさん話さなくてもママはちゃんと聞いてるわよ」と頭を撫でた。
その様子を見てジェイクは微笑んでいる。
幸せな時間だ。この時間がずっと続けばと心の底から思う。
それから私たちは花畑でめいいっぱい家族の時間を過ごした。
そしてアヤメが寝たのを確認し、おでこにキスをして自分たちの研究部屋に戻る。
私たちの研究はヴォイドやゼノマトリクスについての研究だった。
内容は幅広く、ヴォイドの肉体や発生源、その進化について。
それに加えてシックスセンスの解明や、ゼノマトリクスの解明などが主だ。
そして私たちはある決断を元に今研究を進めている。
ここの研究所は私とジェイクを筆頭に数名の少数で働いている。と、いうのも元々はゼノス管理下の研究者だったのだが、思想や目的の違いなどもあり、ジェイクと共に独立したからである。
自分で言うのもなんだが、私とジェイクはかなり優秀な研究者である。
なので、資金には困らなかった。
私とジェイクの目的は世界の安寧と人類の再繁栄である。
そのために日々研究を続けていた。
ちなみに私は一応雷のホルダーだ。
と言っても、適合率は低く、3%ほどしかない。
夫のジェイクは無能力である。
なぜ私たちがこんなにゼノマトリクスやヴォイドに執着しているかというと、お互いに家族をヴォイドによって無くしているからだった。
私は元配偶者と娘と息子を失った。
ジェイクは元配偶者を失った。
私たちはこれからの希望を未来をヴォイドによって奪われたのだ。
そんな私に生きる意味をくれたのがジェイクだった。
そして今は私とジェイクの愛する娘、アヤメが未来をくれる。
私たちはそう信じている。
-数年後-
今私たちは3人で誕生日の歌を歌っている。
アヤメの8歳の誕生日だ。
「アヤメ、8歳の誕生日おめでとう。大きくなったわね」
アヤメが嬉しそうにロウソクの火を消す。
「ママ、パパ、ありがとう!」
ジェイクも嬉しそうにしている。
「アヤメ、誕生日おめでとう!パパはこうして3人でアヤメの誕生日を祝うことが出来て幸せだよ」
ジェイクはアヤメを抱きかかえながら回っている。
満点の星空の下で家族の時間を噛み締めていた。
-2年後-
アヤメは10歳になった。
その頃の世界は一向にヴォイドから取り戻すことが出来ない状態だった。
それどころかヴォイドは日々進化を続けており、強力な個体がここ数年で多く増えていた。
人類はかろうじて自分たちの生活圏を守ることが出来ている状態である。
ここまでのヴォイドの進化の速度と、人類のシックスセンスを踏まえた進化を比べるとその差は圧倒的だった。
これから先の未来は10年前に私とジェイクが予測した通り、人類が絶滅する未来に少しずつ、でも確実に近づいていた。
過去の資料から見ても、元々は定まった形をしておらず生物として非常にアンバランスな状態と見た目をしていたヴォイドも、今はこの世界に適した形へと進化を遂げていた。
その早さは一般的な生物が適応した形に進化をする時間とは比べ物にならない早さであった。
人類がその早さについていけるわけもなく、絶滅の一途を辿っている状態だ。
その危機がこの研究施設の近くにも迫っている。
いつこの研究施設が襲われてもおかしくはない。
私たちは死と隣り合わせの状態で生きて行かねばならないのだ。
-ある日-
「サクラ、そろそろ時間だ」
ジェイクが立ち上がる。
「そうね、アヤメを迎えにいきましょう」
私たちはいつものようにアヤメを迎えにいく。
「パパ、ママ!!」
いつものように眩しい笑顔で抱きついてくる。
私たちはそんなアヤメを抱きしめる。
「アヤメ、ママもパパもアヤメを心から愛してるわ」
アヤメはキョトンとした表情を見せる。
「私もよ!パパ、ママ!2人ともだーいすき!」
こうした親子の時間を家族の時間を本当に大切にしたいと思う。
Tips
名前:サクラ・スターリング
年齢:40歳
性格:深い家族愛と前向きな明るさを持ちながらも、人類の未来に対する強い使命感と、過去の喪失を乗り越えた芯の強さを併せ持つ、優秀で献身的な女性
アヤメ10歳
アヤメ現在




