第58話「意外な来客」
街に戻り、家への岐路の途中ティタ姉がリィドを見つけ走ってやってきた。
「ティタ姉こんばんわ。今日も綺麗ですね」
「リィド、貴方何したの?」
「?」
「貴方にお客様が来てるの。明日予定は?」
「ありますけど、時間はとれますよ。お客ってのは?」
「それは……明日家に訪ねるそうなので。きちんとした対応をお願いします」
「は、はぁ……」
「ごめんね、ちょっと立て込んでて」
ティタ姉は急いでギルドに戻っていった。
翌日、家のドアを叩く音がし来客者が到着した。
ドアを開けるとリィドは驚きのあまり硬直した。
「ゆ、ユースさんがどうして?」
知り合った魅力的な天才お姉さんのユースが立っていたのだ。
決してリィドの妄想ではない。
「ねぇねぇ、どういうこと?この家は?リィド君のよね」
リィドもユースも困惑状態であった。
「組わせて発動?それぞれ単体であえて発動させずに組み込んだ時だけ発動?そしたら維持は……」
ユースの興奮状態を見てリィドは冷静になった。
ひとまず家の中に入ってもらう。
「貴殿はもしかして……」
エリルはユースを知っていたらしい。
「あ、私は魔術具開発しているぎルドのユースです。前にリィド君とセツナさんと依頼でちょっとした協力関係になったの」
軽く自己紹介を済ます。
「まさか、仲間がみんな女性で同棲とはやるわね」
「いえ、成り行きでして……」
「何あれ?へ?」
ユースはリィドの手を握る。
「ユ、ユースさん?」
「リィド君、あれ見ていい?」
「いいですけど……」
ユースは一目散に保管庫の元へ。
「何これ。え?式編んで挟んでる?どうやって?」
かなり興奮しながらぶつぶつとつぶやいて、完全に自分の世界に入りこんでしまっていた。
「リィド君、もしかしてこの家や魔術具ってご家族のものかしら?」
「厳密には違います。育て親のような感じでしょうか。血の繋がりとかはないです。ユースさんはどうして俺の所へ?」
「そうなのね、ごめんなさい。あまりにも規格外な魔術具ばかりで興奮しちゃって」
さすがである。リィドは見ても分からないが。ユースは見ただけですごさが理解できたようだ。
「実はね、ちょっとリィド君たちに手伝って貰いたいことあって……」
「内容によりますが、可能な限りお手伝いしますよ」
ユースはあの時いなかった三人に軽く経緯を説明した。
「それでね。捕まえた連中から関係者を辿っていったら複数の大きい組織が出てきたの」
ユースは溜息を吐く。
「アンシャイ商会て知っているからしら?」
「はい?」
どういうことだろうか。聞いたばかりの名。
「アンシャイ商会はローゲインルド王国に拠点を持っているようで、設立から数年しか経ってない新しい商会のようなの」
ローゲインルド王国は魔術が盛んな国である。
「私はさ一日、二日程度なら大丈夫なんだけど長期間はハンガンドから離れられないのよ」
「なるほど……」
「それと現状どこに内通者がいるか分からないから、気軽にギルドで依頼を出して人を集めるってこともできなくて」
「え?でも確か」
リィドは美女の発言なら忘れることの方が少ない。
「そう。一応ギルドに対しての依頼だけど、現道には国からの依頼なの。で、ギルド内でも知っているのは極少数。事情を知っていて、危険にも対処できる程度の実力がある人間……」
「俺ってことですか?」
「ええ。協力したとはいえ、ナルレイロン相手に怪我無く対処できる腕があれば安心だし」
「な、何故それを?」
ナルレイロンは大きいので隠しきることはできなかったが影武者が危険にさらされた事などは一切伏せられてるはずだ。
「こちらも情報入手の精度は高いって思って貰えるといいんだけど」
「それは、そうですね」
「表向きとしてはあくまで手配犯の追跡」
ユースは手配書を取りだした。
「三人組でハンガンドで誘拐を試みて、偶然現場の近くに兵士がいて兵士によって未遂に終わって二人は逮捕したけど、こいつは逃走」
「逃げた先がアンシャイ商会?」
「その可能性が高いわ。表向きはこれで、本命はアンシャイ商会の裏の顔の調査。誰が店に出入りしてるかなど」
「関係者の捕縛じゃなくて、調査で大丈夫ですか?」
「誘拐や違法取引の現行犯に遭遇したのならお願いしたけどまずは情報集をお願い」
詳しく条件等書いた紙を手渡す。
「本来こういった手法は邪法なので今回、報酬とは別に滞在費などの経費も支払います」
口止め料といったところだろうか。
「リィド、一ついいか?」
「なんだ?」
「ローゲインルド王国についてどこまで知っている?」
「魔術が盛んてとこと国民にも魔族が多いってことくらいだな」
「そうか。魔族、半魔族と接触したりする協力することがあるかもしれない。そこに抵抗は?」
半魔族とは人間と魔族の間に生まれた子供である。
人間と魔族の間に子はできる。
どちら寄りかはその子供次第で変わる。
五大国において魔族差別は少ない。
人間と魔族が太古に争ったとはいえ、天使や精霊など人間に協力した魔族も多い。
なので半魔族だから差別されるといことはほぼない。
ほぼない、だけで差別が皆無というわけではない。
そして、ギルドとは魔族との戦争の象徴。魔族を敵視する人間は少なからずいる。
「エリル、言い方が悪いかもしれないが相手が魔族、半魔族だろうが敵じゃなければどうでもいい。種族単位で何か思うことはないな。それに魔族を嫌悪するならミケと一緒に生活なんてしないだろ?」
「すまない。リィドを見て魔族差別主義だと思ったとかではないぞ。ギルド所属には魔族に恨みや復讐を誓い所属する者が一定数いると聞くからな。念のため確認しておきたかった」
エリルは頭を下げる。
エリルもリィドが話した分の過去しか知らない。
孤児になる理由が魔族によるのなら。そう考えても致し方のないことだろう。
エリルの優しさ、真面目さからの問いであることは理解している。
「ありがとな。俺たちは明確で共通な目的があるわけでもない。成り行きのチームだ。言葉にすることは大事だからな。助かった」
「リィド……こちらこそ感謝する」
「そしたら一応分かりきってるけどエリルはどうなんだ?」
「私は騎士団で育った。血に善悪はなし。行動によって決まるものだ。そう教わってきた」
「だろうな」
「では、申し訳ないですけど宜しくお願いします」
ユースは頭を下げる。
「任せてください」
「あ、リィド君また家来てもいい?」
「もちろんです」
ユースは寄る所があると言って帰っていった。
「さて、作戦会議だな」
四人椅子に座り本題を始める。
「それは、何故セツナのやつが犯罪組織かもしれん連中と釣るんでおったかかの?」
「ミケ、裏の顔知らずあくまで商人と取引していたと思うぞ」
エリルはフェイシス同様に純粋だ。
「まぁ、他には俺たちみたいに特殊な依頼を受けて追って接触したとかな」
リィドはエリルほど純粋無垢な人間ではない。
エリルがリィドの過去を知らないのと同様に、セツナの過去をリィド達は知らない。
リィドが気になっているのはセツナが暗殺稼業をしていたということ。
犯罪組織とは切っても切れない関係だろう。
例えば、実はセツナがアンシャイ商会に所属していたことがある。
アンシャイ商会から依頼を受けたことがある。
など想像などいくらでもできる。
「でもどうしてその商会とお話したらせっちゃんはいなくなちゃったの?」
そうだ。
あくまでアンシャイ商会は失踪の手がかりであり原因かどうか現状は不明だ。
「フェイシスの言う通りだな。あくまで、手がかりとして考えよう」
ふと、リィドは天才的な閃きが頭の中を駆け巡る。
トラブル回避のためにかなり重要な事項であった。
「そうだ、ミケ」
「なんじゃ?」
「魔族多いところだから騒ぎになるようなことするなよ?無視か穏便に頼むぞ」
「ははは、安心せい。ご主人と同じくされぬ限り手など出さぬさ」
「本当だな?」
「むー。なら服を脱いで宣誓しようかの?」
「脱がなくていい、分かった」
こうしてローゲインルド王国に行くことが決まった。




