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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
ExtraStory

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1話 不良少年アルト

『ExtraStory』は1~2話で終わるような

短い小ネタ的な話を投下していきます。


「アルト様の子供時代は、どんな感じだったんです?」


 夕食を頬張りながら、エレノアが言った。

 ここは俺の家の食堂。


「ん? 急にどうした?」

「いえ、ふと気になっただけです。わたくしのご先祖様であるウルバーノとも仲良しだったのでしょう? 何か面白いエピソードはありますか?」


 言われて、俺はウルバーノのことを思い出す。


「そういやあいつ、見た目はエレノアにソックリだな」

「ほう! ではかなりの美形ですね!」


 こいつ!?

 自分を美形だと認識していやがる!

 って、ヴァンパイアは基本的にみんな整った顔なんだけどな。

 おかしいなぁ、俺も整ってるはずなんだけどなぁ。

 なぜか怖がられるんだよなぁ。


「エレノアの髪色をもっと薄くして……そうだな、プラチナブロンドって感じの色にして、あとは爽やかに笑えば、子供時代のウルバーノだな」

「ほうほう! うちの父も金髪でしたので、血筋なのでしょうね!」


 エレノアはどこか誇らしげに言った。



 万年ほど前。

 とある湖の畔。


「おいアルト、お前はまだ平和だとか言ってるのか?」


 レーヴァテインを振り回しながら、300歳前後のウルバーノが言った。

 ウルバーノの見た目はほとんどエレノアである。

 スカートではなくズボン、という点だけが大きく異なる。

 ちなみにレーヴァテインは俺たちが邪神ババアの家から勝手に借りてきた。

 大丈夫、ちゃんとあとで返す。


「アルトきゅん、マジ反社」


 爪を塗り塗りしながらそう言ったのは、ヴァンパイアギャルのニコルだ。

 ニコルは赤毛に金色の瞳。

 太陽避けのローブの下は、お腹が見ている丈の短い黒のノースリーブに、同じく黒のミニスカート。

 足には黒のルーズソックスと踵の高いブーツ。


「大人たちに真っ向から反抗するアルト君……カッコいいよぉ……」


 頬を染めながらクネクネと身体を動かしたのは、比較的、俺と考えの近いヴァンパイア少女サビナ。

 サビナは薄ピンクの髪をツインテールに結んでいて、ローブの下はなんか俺の服と似てるブラウスとズボン。

 てゆーか、俺の服じゃね?

 いやまさかな……。


「平和に長生きするのが俺の夢なんだが……」


 地面に座って、ウルバーノを見ながら俺。

 俺たち4人はみんな300歳前後で、いつも一緒にいた。

 なんせ、ほかの同世代はみんな死んでしまったから。

 太陽光チャレンジや聖水チャレンジで。

 親子喧嘩や他種族との喧嘩で死んだ奴もいたか。


「おいおい、勘弁しろよアルト」ウルバーノが言う。「不良は200歳で卒業しろよ。お前は俺様の右腕になる予定なんだからな」


「なんでだよ。俺は将来、辺鄙な田舎の村に引きこもって暮らすんだ」


 ヴァンパイアたちとはおさらばして、人間たちと暮らす予定だ。

 なんせ、人間の方が俺の考えに近いんだよなぁ。


「アルトきゅん、マジもんの反社で笑えるぅ」

「カッコいい……不良なアルト君カッコいい……」

「いや、別に反社でも不良でもないんだけどな……」


 俺は苦笑いしつつ言った。

 どうやらヴァンパイア社会で、俺は不良扱いされているらしい。

 いや、前々から分かってはいたけれど。

 俺の言動はかなり反社会的らしいのだ。

 うーん、やっぱり将来は人間と暮らそう。

 人間社会なら、俺は反社でも不良でもないはずだ。


「やれやれ」


 ウルバーノが肩を竦めてから、レーヴァテインを俺に投げる。

 俺はサッと立ち上がってレーヴァテインの柄を握る。

 魔力を送ると、レーヴァテインが変形。

 うーん、カッコいい。


「邪神ババア、これ俺にくれないなかな?」と俺。

「いやさすがに無理だろ」とウルバーノ。


 俺はレーヴァテインを振り回し、変形させ、十分に堪能した。


「ねぇねぇ」ニコルが言う。「その武器ってぇ、チョベリグじゃん? そんで、世界を焼き尽くすっしょ? アルトきゅん、やってみてよ」


 そんな強力な武器を、近所のおばちゃんが持ってるわけねぇだろ。

 俺はそう思ったけど、あえて言わなかった。


「そこの湖で……」サビナが湖を指さす。「試してみたら……?」


「いいじゃん。やってみろよアルト」とウルバーノ。


「まぁいいけど、期待すんなよ?」


 俺が魔力を込めると、レーヴァテインの刃が炎に包まれる。

 見た感じ、やっぱ世界を焼くには弱い。

 使用者の俺が平均以下のヴァンパイアだから、余計に弱いのかもな。


「……すご」と目を丸くするニコル。

「……カッコいい」とサビナ。


 確かにすごくカッコいい!

 それは俺も同意!


「早く振ってみてくれよ!」とウルバーノ。


 俺がレーヴァテインを一振りすると、炎だけが飛んで行き、湖に衝突。

 瞬時に湖を蒸発させる。

 うーん、やっぱ威力はこんなもんかぁ。

 でもマジでカッコいいな。

 いつか邪神ババアが死んだら、形見分けみたいな感じで俺の物にならないかな?

 まぁ、俺と邪神ババアってそんなに仲良くないけど。


「マジかよ……すげぇ」


 ウルバーノが酷く驚いた風に言った。


「ああ、威力は微妙だけど、すげぇカッコいいよな」と俺。


「「え?」」


 俺以外の3人が目を丸くした。


「え?」


 俺も目を丸くした。

 こいつら何で「え?」って言ったの?



(アルト様、普通、湖は蒸発しません!)エレノアは心の中で突っ込んだ。(わたくしがその場に居ても「え?」って言いますよ! 威力、全然、微妙じゃない!)



 万年ほど前のある日。


「あんた! あたしのお尻にタッチするとはいい度胸じゃないかい!」


 邪神ババアはウルバーノをぶん殴った。

 ウルバーノは遠くに飛んで行った。


「……だから『それは止めなぁ』ってニコル言ったのにぃ」とニコル。

「度胸試しで死ぬダメキン……カッコ悪い」とサビナ。


 なぜこんなことになったのかと言うと、単純に「度胸試しをしよう」という話になって、ウルバーノが邪神ババアのお尻を叩いたのだ。

 正直、ドラゴンに蹴りを入れるようなものだと思うよ、俺は。

 種族は知らないけど、邪神ババアは普通に怖いし、普通に強いのだ。

 大人のヴァンパイアたちですら、邪神ババアには一目置いている。


「まったくあんたらときたら……」


 くどくどと邪神ババアに説教される俺たち。

 この前もレーヴァテインを持ち出したことがバレて、ぶっ飛ばされたんだよなぁ。


「最強世代ってか、最強のバカ世代だねぇ……」


 邪神ババアは長生きなので、色々なヴァンパイアを見てきたみたいだけど、その中でも俺たちは最高におバカらしい。

 なんてことだ。



 またある日。


「あー、俺は戦いとかしたくねぇんだけどぉ……」


 俺は広っぱに大の字に寝転がって言った。

 ちなみに、ウルバーノ、サビナ、ニコルは戦いゴッコをしている。

 ちなみに俺は4人の中で一番弱い。

 サビナが平均で、ニコルがちょっと強くて、俺がちょっと弱い。

 ウルバーノはキングのくせに俺とあまり変わらない。


「おいアルト、戦いは俺様たちの本質だぞ」とウルバーノ。


 分かっている。

 ヴァンパイアは大人も子供も戦うのが大好きだ(俺以外)。

 故に、こんな戦いゴッコをしてるわけで。

 俺はしたくないけど!


「平和にのんびり生きていたいっ!」


 俺は自分の欲望をぶちまけた。


「やっぱりアルトきゅん反社~」


 ウルバーノ、サビナと戦いながらニコルが笑った。


「アルト君! わたしが、アルト君とその……平和に暮らすための……」サビナが言う。「帝国を……作ってあげるよ? きゃっ……言っちゃった。わたしも今日から不良……」


「帝国とかいらんが!?」と俺。


 田舎でのんびりが好みだが!?

 くっ、俺と一番気の合うサビナですら、支配者気質!

 よし、400歳になったら旅に出よう!

 そして自分で安住の地を探そう!



「で、見つけたのがこの村ってわけ」


 そして俺は人生の8割をこの村に引きこもって過ごした。


「なるほど。そうだったんですね」エレノアがうんうんと頷く。「ウルバーノの妻ニコルや、導師サビナまで幼馴染みとは恐れ入りました」


「導師サビナ?」


 なんだその通り名。


「ええ。サビナは純潔を保ったまま長く生き、ニルヴァーナに達してこの世から消えたとか」


 マジで!?

 俺、最後に会った同族ってサビナなんだけど!?

 2000年ぐらい前。

 てかあいつ、アンデッドなのに悟っちゃったの?

 悟ってどっか消えちゃったの?

 前代未聞だぞ。

 てかサビナの地下帝国、大丈夫か?

 今度、様子を見に行ってみるか。


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