↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
ExtraStory

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/128

2話 武闘家ロジャーと護身術


「オレは強くなりすぎたのか……」


 決闘に勝った武闘家ロジャーは、握った拳を見詰めながら言った。

 まだロジャーが勇者パーティに入る前のこと。

 師匠の元を離れ、強者を求めて諸国漫遊をしていた頃。


「虚しいぜ……オレは本気を……出せないのか……」


 まるで中二病患者のようだが、ロジャーはまだ10代後半。

 特別強い自分に酔っていても仕方ないお年頃。

 その夜、ロジャーは酒場で安い酒をチビチビと飲んだ。

 この国では15歳から酒が飲める。

 色々と諸国を回って分かったのは、酒が飲める年齢が国によって違うということ。

 やばい国は3歳から飲んで良かった。


「おい聞いたか、勇者が誕生したらしいぜ」

「マジか、それが本当なら、世界は安泰だな」


 酒場の客たちがそんな噂話をしていた。

 ロジャーは「ほう」と聞き耳を立てる。


「若い女の子だってよ」

「可愛いらしいぞ」

「すでにどっかの国の騎士が従ってるとか」

「その騎士、勇者と手合わせしたらしいぞ」

「今代の勇者は圧倒的らしい」


 なるほど、そいつは面白そうだ、とロジャーは思った。

 くっくっく、とロジャーが笑う。


(勇者といえば人類の最高戦力! ついにこのオレが全力を出せる相手が見つかったぞ! ガッカリさせてくれるなよ勇者!)


◇


「え……弱っ……」


 勇者ニナは酷く驚いた表情でそう呟いた。

 それが、ロジャーが最後に見たものであった。

 ちなみに、ニナには少しの悪気もない。

 ただ、果敢に挑んできたロジャーがワンパンで沈んだので、ビックリして呟いただけ。


「勇者は体術もできるのか?」と騎士ブルクハルト。


「んーん」ニナが首を振る。「アル……領主様に教わった護身術だけ」


 今回、ロジャーとの決闘で、ニナは剣を使わなかった。

 単純に、ロジャーが素手だったので、ニナも素手の方がいいだろうと思っただけ。


◇


「で、オレはいつかニナに勝つために同行したってわけだ」


 シャクシャクとリンゴを頬張りながらロジャーが言った。

 ここは俺の家の広間。

 なぜかニナたち勇者パーティが勢揃いで遊びに来ていた。


「そ、そうか……」と俺。


 やっぱニナは強いんだなぁ、と改めて思った。

 さすが勇者だ。

 もう俺なんかよりずっと強いに違いない。

 ちなみに、ポンティは暖炉の火の精霊と遊んでいて、カリーナは大人しく座っている。

 ブルクハルトは前と同じように、壁に飾ってある剣を眺めていた。


「うにゃぁ、アルトォ、あたしたち、ついに暇になったんだぁ」


 ニナは俺の腰に抱き付き、小さい子供みたいに言った。


「良かったじゃねぇか。でもなんでだ?」


「ドラゴンとも停戦したのです」コホン、とカリーナが咳払い。「ですので、あたくしたちもしばしの休暇です」


 なるほど、と俺は頷いた。

 てゆーか、なんでロジャーとニナの出会いの話なんか聞いてたんだろうな。

 俺のリンゴを勝手に食べながら、ロジャーが勝手に話し始めたんだっけか。


「やっぱ大聖者様のリンゴはレベルが上がるぜ」


 ロジャーが笑顔で言った。

 そのリンゴにそんな効能はないぞ!

 うちの裏庭で育ててる普通のリンゴだからな!

 味は保証するけども!


「さて大聖者様」ロジャーが真面目な表情で俺を見る。「オレに体術を教えてくれ……いや、くださいませ……? くださりませぬか?」


 丁寧語が苦手なやつぅ!


「普通に話していいぞ」と苦笑いしつつ俺。


「そいつは助かる。それで大聖者様、体術は教えてくれるのか?」


 そうは言っても、俺の体術って囓っただけの微妙な体術だぞ?

 村の子供たちに護身術として教えるのにちょうどいい程度の、そういう軽い感じなのだが。

 勇者パーティの武闘家に果たして教えることがあるだろうか?


「たぶんロジャーは、あたしが習ったやつを教えて欲しいんだと思う」


 ニナは今も俺に抱き付いたままである。


「子供たちに教えてる護身術か?」

「そう」


 ニナが強く頷いた。


「それでいいなら、じゃあ昼から子供たち集めて一緒に教えるけども……」

「おおおお! 感謝するぞぉぉぉ!」


 ロジャーが両手をグッと握って喜びの咆哮。

 本当にいいのか!?

 ただの護身術だぞ!?


◇


「こう殴ったら?」

「こうパリィ!」


 俺が軽くパンチを繰り出すと、村の子供がそれを腕で弾く。

 ちなみにパリィというのは、相手の攻撃を弾いたり受け流したりする技術のこと。

 俺は平和主義者だから、攻撃よりこっちに力を入れている。


「こう蹴ったら?」

「こうパリィ!」


 俺の蹴りを、子供が受け流す。

 子供たちは俺の前に列を作って、順番に俺の攻撃をパリィしていく。

 子供たちの年齢は5歳から18歳ぐらいまで幅広い。

 なぜかニナも交じっていて、俺の攻撃をパリィする。

 さすがにニナは余裕そうである。

 最後にロジャーなのだが、パリィできずに攻撃が当たってしまう。


「だ、大丈夫か?」


 俺は慌てて言った。

 なんで当たってんだよお前。

 勇者パーティだろ?

 もしかして今まで、攻撃オンリーでパリィなんてしたことないのか?

 見るからに脳筋そうだしな。


「平気、平気だ。続けてくれ」とロジャー。


 鼻血出てるけど本当に大丈夫?

 俺は異次元ポケットから木剣を出す。

 そうすると、子供たちがまた列を作る。


「こう斬ったら?」

「こう躱す!」


 俺の斬撃を子供たちが順番に躱す。


「こう斬ったら?」

「白刃取り!」


 なぜかニナが両手で俺の木剣を挟んだ。

 違うよね!?

 そんなの教えてないよね!?


「「おおおお! かっけー! ニナねぇちゃんかっけー!」」


 子供たちは大盛り上がり。

 いや、確かにカッコいいかもしれないけど!

 すごい危ないからこれ!

 ニナは勇者だからできるのであって!


「えへへ」とニナが照れ笑い。


 俺は咳払いして、白刃取りの危険性を子供たちに説いた。


「白刃取りがしたい子は、ニナぐらい強くなってからな?」


 俺がそう言うと、みんな素直に頷いた。


「それならすぐだぜ」

「だな! リク君並は無理でも、ニナ姉ちゃんぐらいなら!」


 子供たちがニコニコと言う。

 おおおおい!

 ニナは勇者なんだぞぉぉぉ!

 それはもうすっごく強いんだぞぉぉ!


 まぁ、リクも強いんだけど、今はリクとニナどっちが強いんだろう。

 これ前にも考えた気がするな。

 今度ちょっと2人に戦ってもらうか。

 って、それはそれとして。


「えっと、あとはロジャーだけか?」

「よろしく頼む!」


 俺はロジャーに斬りかかる。

 ロジャーは躱そうとして失敗し、俺の横薙ぎが脇腹に命中する。


「ぐべぇ!」


 ロジャーが汚い悲鳴を上げた。

 だからなんで当たるんだよ!

 今までどれだけ回避をおざなりにしてたんだよ!

 あ、パーティ組んでるからか!

 普段はたぶん、ブルクハルトが敵を引きつけているだろうし、ダメージを受けてもカリーナが治してくれるから!


「おっちゃん、なんでそんなに下手なの?」


 10歳の少女が淡々と言った。


「オレは……おっちゃんじゃ……ない……ぞ?」


 ロジャーは脇腹を押さえながら言った。

 反論するとこ、そこなの!?

 てかロジャーって何歳だ!?

 ニナよりは年上っぽいけど、20歳ぐらいか?

 練習を見ていたカリーナが寄ってきて、ロジャーに回復魔法を施す。


「みんなでロジャーにパリィを教えてやってくれ」


 俺が言うと、子供たちが頷く。

 それから数日間、ロジャーは子供たちと護身術に精を出していた。

 一応、ロジャーは俺の家に泊めてやったけど、早く帰ってくれねぇかな?

 ちなみにニナは自宅に戻り、他のメンバーもそれぞれ自分の居場所に帰ったようだ。

 そしてロジャーが滞在して14日目。


「アルト様、あの筋肉はいつまでいるのですか?」


 遊びに来たエレノアがムスッとして言った。

 いつまでいるんだろうなぁ?

 本当、帰ってくれねぇかなぁ?

 と、子供たちとの特訓が終わって俺の家に戻ってきたロジャーは、キリッとした表情で言う。


「どうやら、オレのレベルはだいぶ上がったようだ。本当にありがとう、大聖者様」

「そうか、良かったな」


 全然、変わったように見えないけど!?

 本当にレベル上がったの!?

 でももう帰って欲しいから、俺は話を合わせた。


「このまま、ニナに追い付くまでここで修行を……」


「待て! それじゃあダメだ!」俺は慌てて言う。「一カ所に留まっちゃダメだぞ! 色々な場所で見聞を広めろ! それがいずれ、お前の血肉となる!」


「しかし……」

「リンゴもたくさん包んでやるから!」


 俺はサッと風呂敷にリンゴを大量に包む。


「武者修行の旅に出るんだ!」俺は身振り手振りで言う。「お前がここで覚えることはもうない! 停滞していいのか!?」


「そうだな! 停滞はよくねぇ! 武者修行か! 諸国漫遊再び、だな! まぁ、魔王軍との停戦が終わるまで、だけどな!」

「それでも行くべきだ! 頑張れよ!」


 俺が必死に言うと、ロジャーは納得し、リンゴを持って俺の家を出た。

 ふぅ……。

 さぁ、ブラピでも撫でて昼寝すっかな。

 あ、いや、サビナの地下帝国を見に行こうと思ってたんだ。

 いきなり勇者パーティが遊びに来たから、忘れるところだった。


「これでやっと二人きりですね、アルト様。また昔のお話を聞かせてください!」


 キラキラした瞳のエレノアが言った。

 エレノアが来てるの忘れてたわぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。