1-11 通常運転
人は、何かしら目標を持って生きている。たとえそのような目標を持っていないように見えていても実は何かしら目標を持っているのだ。遊んで暮らしたいとか。
なぜこのようなポエミーなことを急に言い始めたのかというと、俺たちの目標を確認していなかったからだ。
「そういえば俺たちはどうやって生きていく?目標的な方で。」
「「それはこの世界を探求すること(よ)(ですね)。」」
「じゃあこれからどうする?」
「まずは金を貯めることですね。それで旅に出ます。まずは魔術学校に行って色々学びたいです。」
「私も同じね。ただ魔法の方向性は若干違うけどね。」
「出まかせじゃなかったんかよ!その場をしのぎのために言っていると思ってたわ!」
「本気で言ってたんですけどね…。とにかく効率的に金を貯めましょう。今のままでは効率が悪いです。」
「ああ、それは俺も感じてた。どうするんだ?」
「ただ単純に分散すればいいのですよ。」
「そういえばどれだけ金を貯めれば魔術学校に入れるか聞いていなかったですね。聞きましょうか。」
・
・
・
今日は特に何事もなく終わった。受付のギルマスに王都までのことを聞いたら、金貨15枚ほどいるそうだ。だいたい150万円ぐらいか…。移動に1カ月ほどかかるらしい。そして、魔術学校に入るのに金は要らないらしい。というよりむしろ給料が出るということだ。研究者に近いのか…?でもそれを聞いて安心した。金の心配をしなくていいのは助かる。
・
・
・
二日後、病気で休んでいた人たちが復帰して僕たちのダランベール商会での仕事はなくなった。
この四日の俺たちの利益は、大銀貨1枚銀貨2枚だ。うん。全然足りない。このままだと1年はかかる。やっぱ効率化する必要がある。
そこで別々の依頼を受けようとした。しかしセイとライは考えがあると言って、別のことをすると言い依頼を受けなかった。俺では考えつかないようなことをするのであろう。
俺は荷物運びの依頼を受けることにした。一日あたり大銀貨一枚の仕事だ。(ギルマスの便宜によって銀貨1枚上乗せした)中期的に働けるのが決め手だ。
仕事が始まるまであまり時間がないということで、急いで現場に向かった。
・
・
・
現場につくとそこは小さな空き地であり、何台ものレンガを大量に積んだ馬車があった。今回は家を建てるのの荷物運びだ。(ちなみにこの町ではレンガ積みの家が一般的のようだ。)あと一台は謎のどろどろしたものを積んだ馬車がある。そして、近くの人に依頼できたということを伝えると、たまたまその人が担当者だったらしく、俺のする仕事が割り当てられた。それは、馬車に積んであるレンガとモルタルを職人たちの手へ運ぶという作業であった。
よし、さっそくレンガを……重くない?肉体強化された今でもやや重く感じるけど。肉体強化されてなかったら持ち上げられないんじゃない?まあ40cm×20cm×15cmぐらいあるからそりゃ重いけど。とにかく両手に持ち、職人さんのところに持っていくが…
「遅い。」
デスヨネー
こんなもんなら俺がいる意味ないか。ということでレンガを10枚積んで持っていくが…クッソ重い。これ何キロあるんだ?三桁乗ってそうだけど。…よく持てるな俺。
「モルタル」
「はい。」
バケツみたいなものを受け取り、モルタルを汲んできた。もちろんダッシュで。
とにかくこのピストン輸送を続けていたら昼になった。だいたいどこも高さが1.5mほどになっただろうか。俺たちは昼休憩となり、飯を食べ連れてってもらった。
…ん?俺らと入れ替わりに入ってった人たちがいるけど彼らは何者であろうか?妙に人が少ないからローテーションではないと思うが。まあいいや。俺が考えることじゃないし。
飯はおいしく、食事の際話したがいいおっちゃんたちだった。戻ったらすぐに作業を再開した。
だんだん高くなってきて、職人が足場を作り始めてからつらい。上に上がらないといけないし、足場が不安定で怖い。
しばらく作業をしていたところで気づいたのだが、午前に作業したモルタルの乾きが早い気がする。もう既にほぼ固まっているのだ。今、午後の作業を始めてから3時間たっているのだが、午後一番のところも乾ききる気配はないのに…。
謎だ。よし。レンガを渡すついでに職人に聞こう。
「黙れ小僧。作業が終わってから教えてやるから今は作業してろ。」
Yes, sir!…ダメらしい。
今度は高さが3mぐらいとなったところで、作業終了の声がかかった。
言質はとったからな。今すぐ聞こう。
「作業途中に聞いたことを教えてくれませんかね~」
「待て。急くな。もうすぐわかる。見たほうが速い。」
しばらくすると、昼にすれ違った人たちがまた来た。
そうすると、その人たちは何かつぶやき始め、だんだんこの辺の温度が上がり始め、風が建築中の建物に向かって吹き始めた。
…!魔法か。思ってたのと違う使い方だな。こんな使い方があるのか。というより魔法が使いたかった…。賢者達成していたというのに。
「そうだ。あのように魔法によって早くモルタルを乾かしている。」
「一つ思ったのですが、費用がかさみませんか?雇ったら。」
「フン。あれぐらいの魔法なら珍しくもないわい。雇う雇わない以前にわしらでも使えるわ。」
つまり俺でも可能性があるのか。やる気が出てきた。
・
・
・
疲れた。いつ以来ぶりだろうか。これほど働いたのは。
でも、あまり頭を使わんでいい仕事は楽だ。俺の性に合っている。親方からいい働きをしているとほめられ、さらに銀貨1枚上乗せされた。俺の感覚では年下から…と少し思うところもあるが、それよりも褒められたうれしさのほうが大きい。若干肉体に引っ張られている部分もあるのだろうか?
日が暮れてしばらくするとセイとライが帰ってきた。…割と遅いな。
夕食中に何を働いていたのかを聞いてみたが、「店員」と言われただけで、どのような店員と聞いてもはぐらかされた。
二人のことだから言えないようなことをしているわけではないと思うが、なんも言わないのは何か裏があるような気がしてならない。しかし、この二人なので何かはわからないが深い考えのあってのことだろう。
どのようなことをしているのか聞くのをあきらめ、待遇面について聞いてみた。そうすると、報酬自体は一日一人当たり銀貨8枚であるが、いろいろ学べることがあるということだ。(どのようなことについてかは教えてくれなかった。)
そして、俺と同じように中期的に雇ってもらえるということであった。へえ、二人は違うところで働いているのか。二人も中期的に雇えるところなんかないと思うし。
まあそうして一日は終わった。