19
翌朝瑠璃達が目覚める少し前
バタバタバタッ
誰かが勢いよく瑠璃達の寝る部屋まで走ってくる
そしてその人物は
扉の前までたどり着き
ドアをも勢いよくあける
ガチャッ
「仕事ダッシュで終わらせて
朝イチで来た……ぞ。」
笑顔で入ってきた彼の顔に怒りマークがつく
誰一人彼の声に反応し起きたものはいなかったからである
2つのベッドをくっつけていっぱいいっぱいの広さで、5人が寝ていた
多少は仕方ないことだが
「俺が仕事してる間に…」
苛立ちが募らないわけがない
誰を起こそうかと思った淳
その時
「えへへ…幸せ…るり〜」
寝言を言いつつ、瑠璃に抱きついてる陸が目に入る
淳は陸の鼻をつまむ
しばらくすると陸が苦しみだし
「んーんーんー!
ぷはっ
じゅーん?
何してるの?
苦しいじゃん」
目覚めた
「何してるの?じゃねぇよ!
人が仕事してる間にイチャイチャしやがって」
陸は起こされて不機嫌きわまりない表情で目を擦りながら
淳の心をぐさぐさえぐる
「淳が悪いんじゃん
嘘だったとしても
歌手だっけ?と
週刊誌に撮られたりするから
そのせいで淳だけマスコミに追われて仕事が押したんでしょ?
自業自得
ふああああああああ」
淳さんの声でいつの間にか目を覚ました瑠璃は
陸が話すことを
懐かしげに聞いていた
そんなことあったなぁ
不安で不安で仕方なかったんだよね
そんなに時間はたってないけど、懐かしいなぁ
「ん?あれ?
瑠璃いつの間にか目覚めてたの?
早く言ってよ!
おはよーのちゅーしたげるのに」
「させないけどね?」
キスをしようとしてきた陸さんより早く
後ろに寝ていた愁が瑠璃の唇を奪う
軽く重ねるようなキスで起きる
まるでお姫様になったみたい
「おはよう瑠璃」
「おはようございます愁さん」
二人が二人の世界をつくり
仲良さげにしてるのを
淳はまさにキレ気味でみていた
今日はもともと約束で
みんなでビーチで泳ぐことになっている
「じゃあ俺らは先に行ってるから
瑠璃はゆっくり用意してからおいで」
返事がわりにうなずき
みんなが出ていくときに
1つあることを思い出し、瑠璃は要を引き止める
「昨日散歩してるときに気づいたんですけど
私たちがいる所ってビーチの左側だけど
右側にも同じようなのがありますよね?
あれも要さんのお家の別荘ですか?」
同じつくりで、少し小さめ
ほとんど私たちのいる所と同じようにみえた
「あぁ…そうだね
あれも俺の家の別荘
だけどさあっちに6人は広さ的にキツいからね
昔は愁の姉貴が一緒に来てとまってたりしたかな
まぁでもいつでも泊まれるように
メンバー達に鍵はそれぞれ貸してる感じかな」
気のせいかな?
1つ1つを要さん自身が確認しながら言ってる気がする
でも謎が解決できて良かった
「そうなんですか
ききたいことはそれだけですっ」
「ゆっくり支度しといで」
優しい笑みをくれて、要もみんなと同じくビーチへいった
瑠璃1人になると
辺りを気にすることなく
着替え始める
そこまでは良かったんだけど…
「あれれ?
ここをこうして…ここで蝶々結び…
あれー?」
ビキニの後ろのリボンが綺麗に結べない
やっぱり家で1回試しに着るべきだった
どうしよう…
困っていると
遅い瑠璃を心配して愁が入ってくる
「瑠璃だいじょー…
か、可愛いね…」
一瞬時が止まったように愁は瑠璃にぼーっと見惚れていた
瑠璃はというと、いきなり入ってきた愁に
まだ結べてない背中のリボンを隠すように
壁側に背中をむける
「そ、そうかな?
みんなが好きそうなの選んだつもりだから、喜んでくれると嬉しいなっ」
愁さんはじりじりと近づいてくる
瑠璃は近づかれるたび離れ
しまいには壁に背中が軽く当たるほどにさがっていた
「どうして離れるの?
可愛いからさ
もっと隅々までよくみせて?」
私が最初から
魅力されてる低音ボイス
今日の愁さんにはいつもの何倍もドキドキする
お互い水着だからかな?
「ちょ、ちょっと待ってください
あのぉ…そのぉ…」
「ん?なに?」
このままだと悪い方向にしか進まなさそう
そう思った瑠璃は
隠さずに今の状況を説明することにした
「後ろの背中のリボンがまだ上手く結べてないんです
結んでくれますか?」
愁さんはニコッと笑って
瑠璃の水着のリボンをあっという間に蝶々結びにした
「わー凄い綺麗に結べてるー」
「時々ね複雑な衣装とかあると
蝶々結びすること多くてね」
慣れちゃったよと愁さんはまた笑ってみせた
「なるほど…」
笑顔が消えると
今度はまた違う表情
なんだろ…ドキドキする…官能的な表情
「にしても
そうやって無防備に背中を差し出されると
どうしてもほどきたくなっちゃうね」
思わぬ言葉に赤面する瑠璃
そんな瑠璃を楽しそうな顔しながら愁はみていた
「冗談だよ
ほらっ上着きて!
みんな待ってるからね?」
頷き鞄から
透ける上着を取り出して
瑠璃は身につけた
や、やっぱり恥ずかしい…
「ちょっと待った
それダメだって
そんなえろい格好で外になんて出ないで」
愁さんは来ていた自分のパーカーを脱ぎ、瑠璃に着せる
上半身が裸の愁さんに
きゃっなんてなってるヒマはなく
瑠璃はその鍛えられた上半身に包まれていた
「マジ反則だよ…
あんな格好俺以外に誰にも見せたくない
さっきの可愛い瑠璃は、俺だけの瑠璃だから」
大人な愁さんが見せてくれる少し子供っぽい甘い束縛
凄く嬉しかった
みんなが待ってると
急いで外に飛び出すと
そこは甘い雰囲気なんて1ミリも感じられない
ぴりぴりした空間が広がっていた
「あっ瑠璃…出てきちゃったか」
ボソッとつぶやく律さん
「愁に先に連絡しとけば良かったな」
要さんも誰かにきこえないように小声で言ってる気がする
みんなを見渡すと
メンバー以外の人がいた
歳はたぶんみんなと同じくらいの世代
背もあって、かっこいい人
ただ…両脇にスタイルの良いビキニの女の人が1人ずつ立ってる
「珍しいな
お前らが女連れてきてるなんて
誰かの彼女か?
いやにしては幼いか」
知り合いなんだよねやっぱり
でもどこかでみたことあるような
思い出そうとまじまじと顔をみる瑠璃を
愁は自分の後ろに隠した
男の人が女の人達に
何か言葉をかけると
女の人達は、瑠璃達と対称のこぶりの建物の中に消えていった
メンバー達には鍵を渡していると要さんは言ってたハズ
どういうことなのかな?
「俺らの貴重な休み邪魔すんなよ」
淳さんのキツイ言い方
「久しぶりに会ったのに
そんな言い方はないんじゃねぇの?
じゅーんっ」
淳さんの肩に手を回そうとした男の手を淳さんは振り払った
やっぱりみたことあるんだよね…
んー絶対芸能人だよね?
で、たぶん音楽関係
「あっ!!
bloody apostateの葵さんだ!!」
みんなの視線が一斉に瑠璃にむく
えっと…もしかして…私はとんでもなく空気読めてなかったですか?
「す、すいません黙ってます」
はははっと葵さんが笑い出す
「良いなその子
まっすぐで媚びることを知らない
そして何より無垢そうで
名前なんて言うの?」
この後の展開は
だいたい誰もが予想がつくだろう
名前を答えようとするとみんなに阻止され
また葵さんが名前をきいてきて
また阻止される
その繰り返し
結果みんな葵さんを無視して遊び出したっていう
1人になった葵さんの元に
さっき去っていった女の人達と、bloody apostateの凌さんって人が来て
葵さんを連れていった感じ
凌さんは葵さんと違って、みんなと親しそうな感じもなかった
これで一応この場は片付いた
けど瑠璃に葵とメンバーとの関係は一切語られなかった