2-1-23 決着
『キース・ラヴェント、退場!』
キースが転移していくと同時に、アナウンスが響いた。
爆発によって煙は完全に晴れる。
彼がいた場所に駆け寄ると、地面には矢が落ちている。
おそらくフィリアから放たれた矢が当たったのだろう。
その矢をなんとなく拾い上げるも、それは残滓となって消えてた。
装置による爆発が起きる少し前、違和感を感じた。
まるで彼ではないような気配。
殺気立った、背筋が凍えるような感覚。
これは、あの時感じた感覚と似ている。
先輩二人と実践訓練をしたあの時。
あれは離れていたから、彼から発せられていた気配を感じる取ることができなかった。
勘違いと言えばそれで済む話なのかもしれない。
しかし、ここまで一緒に戦ってきている。
彼の魂が変動していることくらいは気づける。
「ありゃ、ご令嬢さん一人になっちゃった」
リシアが煙の中から現れた。
肩に銃を引っ提げている。
咄嗟に後方へとジャンプして距離を取った。
あの位置でまともにやり合ったら勝てないだろう。
リシアを殴った方の手には、まだ反動が残っている。
「ここで交渉なんだけどさ、降参してくれない?」
リシアが面と向かってそう言ってきた。
悪気がない表情で、ちゃんと本音で言っている。
その態度に、思わずイライラが込み上げてくる。
「俺とフィリアの攻撃を耐えながら勝つのは無理だと思うんだ」
「そうわね」
苦笑いしながら答えた。
「だったらさっさと——」
リシアが答える前に地面を踏み込んだ。
一秒も経たずに、リシアの懐へと潜り込む。
「なっ……!」
リシアが目を見開いて顔面蒼白になった。
その勢いのままメイスで脇腹に薙ぎ払いを放った。
パシュッ。
間一髪のところでリシアがメイス目掛けて銃撃してきた。
その衝撃で軌道がずれ、惜しくも当たらない。
しかし、まだチャンスは続いている。
メイスでの薙ぎ払いで隙が生じた。
それを逃さずに、リシアが得意な中距離の間合いへと引き込まれそうになる。
さっきの勢いを殺すことなく、すかさず次の攻撃へと移る。
後方へとステップしようと空中へと飛び上がったリシアを、下からの蹴り上げで迎撃す
る。
鈍い感覚が足に重くのしかかる。
「くっ……」
蹴りはリシアの太ももに直撃した。
空中での勢いがなくなり、そのまま落ちてくる。
しかし、足に魂を集中させたからなのか、片足の感覚が鈍くなった。
明確に反応から実際に動くまでに重さを感じる。
すぐにリシアの着地点へと体を動かそうとするが、
幸いメイスでの攻撃は届く範囲。
両腕でメイスを強く握り締め、思い切り薙ぎ払いをしようとした。
だが、横から風を感じる。
微細な違いだったが、感覚自体が研ぎ澄まされているからなのかより繊細になっている。
フィリアの矢だと予測し、攻撃を途中でやめた。
体の中央を狙われている矢がすぐまで迫ってきている。
それを最小の動きである軸だけずらして回避する。
感覚だけだと一本しか飛んできていない。
今なら感覚だけで察知できるだろうと信じることにした。
最小の動きだけなだけあって、リシアとの距離はさほど離れていない。
一気に間合いを詰めて、メイスを頭目掛けて振り下ろす。
すでにリシアは受け身で体勢を立て直していた。
振り下ろしは軽々と横に避けられる。
だが、メイスの攻撃自体がブラフ。
メイスが地面に叩きつけられる衝撃をそのまま使い、メイスを地面に立てた。
それを支点にして、地面から飛び上がった。
その軌道を追うようにリシアが発砲してくる。
一発、二発、三発。
連続で放たれたが、ドレスだけに当たった。
リシアはリロードのようなモーションを取った。
地面に着地すると、その衝撃も反動にしてリシアに近づく。
また懐に潜り込めた。
メイスは予備動作で避けられてしまう可能性がある。
だとすると、まだ反動が続いている片腕を使うしかない。
また魂を高めた。
片腕と拳にだけ集中させる。
それをリシアの顎下に一直線で向かわせる。
ここまですれば、流石に装置が反応するだろう。
勝った。
思わず笑顔が溢れる。
その瞬間、爆発が起きた。
何が何だかわからなかったが、腰の装置がなくなっていた。
薄れゆく意識の中で、はっきりとアナウンスが聞こえた。
『ラヴェンツァ・ヴェイル脱落!』
『勝者、リシア・フェンリル、フィリア・カーバンクルコンビ!』




