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【第二章開幕】エンド・オブ・クロニクル 〜神話へと続く旅路〜【2000PV突破】  作者: 百瀬 三月
第一章 学園編

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1-5-2 基礎を学ぶ

あの日から一週間が過ぎた。

怪我はどうにか完治させることができた。

だが、フェスティバルまで一週間を切っている。

寝込みっぱなしだった影響もあり、体は完全に鈍っている。


だから、今日は特別な訓練だ。


————


ガラガラ。

朝の訓練場は、まだ静かだった。

他の生徒たちが来る前の時間を選んだ。

理由は、単純だった。

人に見られながらやる練習じゃない。

もちろん、ラヴェンツァにも見せられるようなものでもない。


「お!」

「よく来たな!」

フェイが、笑いながら肩を回していた。

「よ!」

ハンクもその場におり、軽く手を振ってきていた。

「今日はよろしくな」

少し照れくさそうに言った。


「しっかし——」

「自分から体術叩き直してくれって、なかなか言えないぜ」

「意外と勤勉なんだな!」

なんの嫌味も感じられない笑顔が逆に来るものがある。

「まぁ、そりゃあね……」


フェイが、軽く伸びをした。

「で、なんで急にこんなこと言い出したんだよ」

「いつもの訓練じゃ、足りないってか?」


少し考えた。

正直、彼らに言うべきか迷った。

ただ、事情を話さないのも自主練に付き合ってくれる彼らに申し訳なく感じる。

そもそも、ここまで来たら隠す必要もないのかもしれないが。

「まぁ、病み上がりってのもあるんだけど——」


「先輩二人と戦った時に、痛感したんだよ」

魂の武器(ソウルアーマメント)を使う前の、土台が足りない」

「あの人たちは、体術だけでも圧倒される実力があった」


ハンクが、目を細めた。

「シャオ先輩とルカ先輩のことか」

「知ってるんだね……」

校内で広まっていそうなことが少しだけ息苦しく感じる。

「噂で聞いた程度だけどね」

フェイのその発言でそっと胸を撫で下ろした。

どうやら、何が起きたかまでは広まっていないらしい。


「だから——」

そのまま淡々と続けた。

「体術を学びたいんだ」

「体術だけじゃなく、体の使い方に関しても」


フェイが、少し驚いた顔をした。

「お前、もう十分強いって感じてるんだけど……?」


「強いのと上手いのは別でしょ」

ハンクが、横から言った。

「もちろん素質はあるし力もあるけど、使い方が荒削りすぎる」

「多少武道を嗜んだことがある者だったら、一瞬でわかるさ」


「うっ…」

痛いところを突かれ、声が漏れ出した。

しかし、これも課題である。


「だから、お前に頼んだんだ」

フェイに視線を戻した。

「あと、フェイの方が戦闘できるって聞いてたから」


「見かけによらずデリカシーないな、キース……」

フェイが苦笑いを浮かべる。

「ハンク、かわいそうに……」


「事実だから」

「気にしてないし」

ハンクが、淡々と言った。

だが、目の奥に競争心が灯っているようだった。


「俺は、間合いを読む方が得意だ」

「単純な筋力はフェイの方が断然上」


「まあ、そういうことだな」

フェイがニカっと白い歯を見せる。

「いいぜ、付き合うよ」

「って言っても、病み上がりだし今日は姿勢からだな」

彼が立ち上がった。

鍛え抜かれた巨体の全貌が見える。

「……え?」

そんな目前の光景とは裏腹に、彼の発言で拍子が抜けた。

てっきり、早速戦闘するものだと思っていた。


しかし、すぐに拳は飛んでこなかった。

「まず、構え見せてみ」

「え」

「構え。お前のいつもの」


言われた通り、構えを取った。

普段戦う時の体制を取る。

重心を腰に乗せ、二刀を前で交差させるように手を持ってくる。


フェイが、しばらく見ていた。

「…重心が高すぎるな」

「重心?」

「足、見てみ」

思わず自分の足元を見た。

踵が少し浮いており、完全に地面についてはいない。


「踵、もっと地面に落とせ」

「こう…?」

重心を膝まで落とし、足裏を地面にしっかり落とす。

「もう少し」

「これくらい」

「そう」

フェイが、頷いた。


「次は手だな」

「手?」

「構えてる時、肩に力入りすぎ」


「力を抜くと、隙ができる気がするだろ」

「うん」

「逆だよ逆」

フェイが軽く笑い、軽く肩を回した。

「力入れすぎてると、そこだけに意識が集中して一番大事な視線に集中させづらくなる」

「逆に、魂の武器(ソウルアーマメント)を持っている時にリラックスすると、視野が広くなりやすいんだ」


半信半疑で、肩の力を抜いた。

「もう一回、構えてみ」

構え直した。

「お、いいじゃん」

「さっきより引き締まっているよ」


ハンクが、離れた場所から見ている。

「キース、踏み込む時の足の運び、やってみて」

「カウントダウンするから、それにあわせてやって」


「3」

「2」

「1」

言われた通り、一歩踏み込んだ。

「……遅いな」

「遅い?」

「踏み込む前に、一瞬溜めてる」

「そんなことしてるかな……?」

信じたくない気持ちもあったのかもしれない。

少し疑問視するような発言が出てしまった。

「してる」

ハンクが、淡々と言った。

「相手に対して、次の動きを教えてるようなものだよ」


「直し方は、溜めをなくす」

「言うだけなら簡単だね……」

「まぁ…それは練習次第だな」


それから、何度も踏み込みを繰り返した。

フェイが構えを直し、ハンクが動きの癖を指摘する。

組手はなかった。

ただ、地味な基礎練習だけが続いた。


「思ったより地味だね」

息を切らしながら言った。

「強さって、地味なところから来るんだよ」

フェイが、笑った。

「派手な技やソウルを使い方を身につけるよりも、こういう基礎の方が後で効いてくるもんだよ」


その日は、最後まで打ち合うことはなかった。

ただ、体の使い方を少しずつ叩き直された。


訓練場を出る頃には、朝日が完全に昇っていた。

「フェスティバルが始まるまで、付き合ってくれるか?」

「いいぜ」

フェイが、軽く答えた。

「もちろん」

ハンクもそれに続いた。


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