64話「疲れたので風呂に入ろう」
2人はもう完全に疲れ果てていた。ただお互い自分の剣を握って地面に大の字の状態で寝転がってしまっていたのだ。
特にヴォラクは今まで生きてきた中で1番の疲労を感じているかもしれない。こんな激しく動いた事はない。それに愛武器でもある銃を使わずに剣を使って闘っていたのでその疲労は想像を絶する疲れだった。
それはレイアも同じく。レイアだって人間なので、無限に動き続ける事は出来ない。いつかは事切れてしまう。今だってレイアは荒い息を漏らし額からは汗が流れてしまっている。
ヴォラクは右腕を使って額の汗を乱暴に拭う。右腕はもう漆黒に染まる邪悪な腕ではなく、普通の肌色の腕に戻ってしまっていた。あの謎の力闇夜の天帝の能力はもう今は失われてしまっていた。あの機械的な翼も失われている。背中には何も付いていない。
彼のあの力。「闇夜の天帝」の能力は失われていた。この力は相手が自分と同様に本気でぶつかり合おうとした時か圧倒的な力の差が存在していた場合、もしくは自分が瀕死にでもならない限りは発動しない特異な能力。
さっき、初めて発動した時はレイアが自分よりも圧倒的に強い立場にいたから。その理由があったから、あの力を発動させる事が出来たと言うのだ。
本当の事を言うのなら、基本的にこの力「闇夜の天帝」は発動する事は出来ない。
発動出来るのは本当に限定的な状況のみで発動する事が出来るのだ。今回の場合なら、レイアが自分の全身全霊の力を持って相手をしてくれたから、その力が目覚めてくれたのだ。もしもこれが相手の強さ普通に自分と互角ぐらい、または相手の実力が自分以下、もしくはこの力の自己判断により発動してほしくても発動してくれないと言う問題がある。
本来なら、この力は封印された禁忌。決して開けてはいけない箱の様な存在でもある。
しかしヴォラクは1度、この箱を開いたのだった。禁忌とも言われた箱を開けて、その中の力を宿してしまったのだ。
そして彼の持つカードから、能力「闇夜の天帝」を始めとした全能力の表示が全て消え去った。
カードの表示はいつも通りのヴォラクの持つカードの表示に変わってしまっていた。
そしてヴォラクとレイアが行った模擬戦は凄まじいものだった。互いに剣を握り合い、ただがむしゃらにぶつかり合っていた。
何分、いや何時間と言う感覚が狂う時間の中で体を休ませる事もせずに互いに斬り合い続けていた。
斬り続け合う中でお互いの剣が僅かにだけ自分の体に命中して少量の赤い血が流れる時もあった。
赤い血が滲む汗がダラダラと流れていた。
しかしそんな中でも2人はただ互いの剣をぶつけ合っていたのだ。止める事なんて知らない様に他の事を一切、全て忘れて戦い続けていたのだ。痛かろうが、辛かろうが関係なしに。
そして夕日の様な光が2人を照らしていた。その光が眩しいと思う事はなかった。目の前出戦うレイアにしか気が回らなくなり、他の事など全て消えてしまっている様に忘れてしまっていたのだ。
しかし今、周りは暗くなってしまっていた。もう夕日の様な光は存在していない。周囲は夜の様に暗くなっていた。
ヴォラクは周囲が暗くても何故かそれなりには周りが見える人だったので、この夜の様な暗闇の中でもレイアの姿を捉える事は出来た。
何故なら、空には月明かりの様な光が空から差し込んでいたのだ。
さっきまで山の果てに沈み、夕日の様な光を放っていたあの球体は、今は空高くに上り、銀色の月明かりの様なキラキラとした輝きを見せている。綺麗だった。まるで月の様だった。
地面に寝そべるヴォラクはその月の様な光を放つ球体に目を奪われていた。
さっきまで太陽の様な光を放っていた球体だったが、今度は月明かりの様な光を放射し始めていた。夕日の様に沈むかと思いきや、逆に登ってきたのだった。
レイアのヴォラクと同じ様に剣を収めて空を寝そべったまま眺めていた。
「綺麗だな。あの丸いの……何て名前なんだ?」
ヴォラクはあの球体名前を聞いてみた。意味はないが、聞いてみた。
するとさっきまで自分の頭の先で自分と同じ様に頭を向けあっていたレイアがヴォラクの横で仰向けで横たわっていた。レイアは空の球体に右手の人差し指を使って指す。
「あれはね「天月」って言う地を明るく照らしてくれて、闇夜を照らす神様のお家なんだよ。詳しくは知らないけど、私がお母さんに教えられた限りの話では、あの場所は「神様と神様と親しかった人達住む場所、とても穏やかで平和で楽しい所」だって教えられたの。でも実際はあの場所についての事の情報は全くなくてね。本当にこの世界の神様があの場所に住んでいるのか、そもそもあんな所に人が住んでいるのかどうかすら分かってないの。ただ分かる事昼は明るい光を、夜は輝く様な光を私達陸地の人達に届けてくれると言う事だけ。それぐらいしか、私にはあの場所についての事は分からないの」
「成程ねぇ、つまりあの場所は昼や夜に光を出してくれて、神様や神の使い達が住んでるって解釈でいいんだな?」
「まぁ間違ってはないね。光は出してくれてるし………でも本当に神様が住んでいるかどうかは私にも分からないね。あくまで古い古い言い伝えだから」
(て言うか、どうやってあんな高い所まで行ったんだよ?それに使いってなんだよ?下僕でも連れてんかな?お空の神様は…)
話は変わるが、以前ヴォラクは神様を殺そうだとか言っていた事があった。
しかしそんな事、ただの馬鹿げた妄言だと言う事が今分かった気がする。そんな自分が惨めで大馬鹿者だったと言う事が身に染みていた。
理由は明白だが、一応説明しておこう。
まず、ヴォラクは神の実力を甘く見ていた。まず、まるで別の星を丸々支配している様な奴に、こんなちっぽけで小さな力しか持たない雑魚同然な奴が仲間と挑んだ所で一瞬で返り討ちにされる事が目に見えてしまっている。
それに万が一自分の隠された秘宝の様な能力、「闇夜の天帝」が発動する事が出来たとしても勝ち目は皆無に等しいだろう。だって相手は人間でも魔族でも、よもや悪魔や天使でもない。
神そのものだ。
神相手に普通の人間が勝てる保証なんてほぼないに等しい。そんな奴を殺すだなんて無理難題な話だ。神を殺そうだとか、この世界をひっくり返す様な馬鹿げた考えは捨てよう。
今は目の前の壁に集中しよう。レイアが目の敵にしている相手の方を気にする必要性があると感じた。その方が最善だ。
郷に入っては郷に従えと言う言葉がある。ヴォラクの脳内にこの言葉が浮かんだ。新しい土地や新しい環境に入ったならば、そこでの習慣に従うべき、と言う感じの意味を持つ言葉である。
まず、この世界と前の世界のルールや価値観は全くと言っていいぐらい違う感じになっている。
この世界では前の世界とはルールやきまりが違うと言うのに、前の世界のルールや価値観のままでこの世界で生きていくのは間違いだと思う。
この世界でその神が崇められていると言うのなら、殺すだとか周囲の人間には言わずに素直に従った様な素振りを見せておけばいいだけだ。
無理に暴力でねじ伏せる様な事事はやめておこう。そこに気付くのにかなりの時間を有してしまった。
ヴォラクは反省した。こんな難しくもない事に時間を使ってしまった事に。
頭が痛くなりそうだ。
それともう1つ。
体が熱い!
そして暑すぎる!あれだけ動いたら汗が出てくるのは当然だが、今回はかなりの暑さを感じた。
以前に体を動かした時にも同様に暑さを感じた時があったが、今の暑さは異常な程だった。
正直な気持ちを話すと、お風呂に入りたくなっていた。シャワー浴びて、湯船に浸かりたい。
今彼が欲する物はそれぐらいだった。
取り敢えず、レイアに風呂はあるのか?と聞いてみる。
レイアは風呂じゃなくて、水浴びをすると言っていたがまさかお風呂がないとでも言うのだろうか?
いや、流石に風呂とシャワーがないのは嫌だぜ?
僕だってそれなりに綺麗好きなんだよ?水浴びだけなんて、そんな昔に先祖返りみたいな事にはなってほしくないので風呂ぐらい設置してほしいものだ。
「な、なぁレイ。風呂はあるのか?」
「………え?あるけど。まぁ私はお風呂じゃなくて水浴びで十分なんだけど、一応大浴場があるよ。もしかして、お風呂入りたい?」
「勿論さぁ!この汗だくじゃ、風呂に入りたくなるんだよ。後、もう既に汗で冷えてきてるんだよ。風呂入らないと体熱いままだし、風邪引きそうだよ」
「いいよ。なら、案内してあげるから一緒に来て!私も女の子だし、たまにはお風呂入らないとね!」
一瞬だけ、ヴォラクの背筋が冷たくなった。
その後2人は立ち上がり、城の後ろに広がる何も無い平原から城の壁に近付いていった。しかしヴォラクは最初、どうやって城の中に入ればいいのか分からなかった。
何故なら、ヴォラクはレイアの部屋のガラスを突き破ってこの平原に来たと言うのに、どうやって戻れと言うのだ。城の城壁はかなり高く、ジャンプするだけでは到底届きそうな高さではない。それにレイアの部屋は城の上の位置にある為、手を伸ばしたりしても届かない事は明白だった。
今のヴォラクは空も飛べないし、高くジャンプする事も出来ない。なんなら壁を壊す事も出来ないのだ。
さぁどうしよう?死ぬまで永遠にこの平原に置き去りってか?笑えないんだけど………
しかしそんな事はなかった。
レイアの後を着いていくと、城の城壁の一角に傷の付いた木で作られた様な扉の前にレイアが立った。
良かった。どうやら隠し扉的なのがあったみたいだ。
これなら、永遠に壁の外って事にはならなさそうだ。
レイアはその古びた扉を押すと、扉から軋む様な音が聞こえてくる。正直、この軋む様な音は嫌いだ。耳が痛くなりそうなので。
「ここから、中に入れるから。行こ?」
「オーケー」
2人は古びた扉を開けて、扉の先に進む。
その先は城壁の中、目の前には城が至近距離で建っている。今、目の前にダッシュすれば壁にぶつかるだろう。
しかし、ヴォラクは壁が目の前にあって走る人ではないので、走る事はしない。
すぐにレイアが城の壁の近くを歩きながら、進んでいくと裏の出入口的な扉をまた見つけた。
入ればいいんでしょ?入れば……
城の中に入った後は早かった。
レイアはすぐにお風呂の場所まで案内をしてくれた。
また歩かされたのは疲れる話だが、お風呂に入って疲れを取る事が出来ると言うなら安い話だ。ヴォラクはレイアに案内された風呂場に辿り着くとすぐに風呂場の中に入った。もう何も考えていなかった。
早くお風呂に入りたい。湯船に浸かって疲れを取りたい。戦いで疲労した体に癒しを与えたかった。
ヴォラクはお風呂の前にある脱衣場で速攻全ての服を脱ぎ捨てて、置いてあった白色のタオルを1枚片手に風呂場の扉を思い切り横にスライドさせた。
「やっぱ…………最高だ!」
そこにはヴォラクから見れば夢の様な空間が広がっていた。(その時のみ)
お風呂だ!
しかも、湯船もある。湯船はモクモクと煙の様な湯気を放っていてとても温かそうな感じだ。十分に温まっていると言う事なんだろうか。
流石に水道が完備されていないのか、シャワーはなかったが湯船の湯を使って、掛け湯をする事がシャワーの変わりなのかもしれない。
一応桶も置いてあるしね。そういう為に使うのかもしれない。
よしそれじゃあ早速桶を使ってお湯を浴びようじゃないか。もう体の汗は少しづつ引いているがまだ暑さが体に残っている。さっさとこの暑さと汗を流してしまおう。
さぁ、体にお湯を掛けて、タオルを手放して、丁度いい感じになってきた所で……いざ、湯船にダーイブ!
「へぇ~ここってお風呂あったんですね!」
「サテラ、早く入ろ!1番は私だからね!」
「いよっしゃァァァ!久々の風呂だ!温けぇ風呂に入れるぜ!」
へ?冗談だよね?
いや、冗談って言って。いや、マジで頼むって!
そうじゃないと………
絶対に現実とか認めたくないからね。認めないからね。絶対に、信じられないからね?
え………嫌だ、そんな嘘だ。絶対に、これはきっと悪い夢だ。目覚めるなら今目覚めてくれ。今は風呂ぐらい1人で入らせてくれよ。
夜の営みならまた後でいいだろ?今は1人で入らせてくれよ。
頼むよ。悪い夢なら目覚めてくれよ。
あ、そうだ!これはきっと悪い夢なんだ。
異世界転移とかサテラ達の存在も全て、僕が夢の中で見ていた妄想だ!長い夢だったんだ。
きっと……きっと多分。そんな……訳……
ねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
oh……oh……
「oh my God!!」
の叫び声と同時にヴォラクは湯船に沈んでいってしまった。
そしてこれは現実である。現実逃避なんかするべきではなかったのかもしれない。
認める事にしよう。
「あ、主様が浮かんでる」
「え、えぇ!?ちょ、ちょっとヴォラクさん?」
「おい、おいヴォラクしっかりしろよ。てか、入ってたんだな…別にいいけど」
「皆って………ヴォラクに対しての羞恥心とかないの?」
「「「ない!」」」
ピカーン。何故か無性に3人が輝かしく見えてきた。3人共親指を立ててグッドの様子を見せていた。
まぁ、レイアを覗く3人はタオル体に巻いてないからね。
「て言うか、レイア。お前だってタオル取ったら裸だろ?お前も羞恥心なんてねぇんじゃねぇか?」
「さ、流石にそれはないよ!まだヴォラクと出会ってす、数日しか経ってないんだよ!こ、こんな出会ってすぐ裸の付き合いとか!そんなのラノベじゃない限り有り得ないんだから!」
「ら、らのべ?なんだァそれ?聞いた事ねぇぞ?食いもんか何かか?」
「どうして食べ物と裸の付き合いが繋がるの!それとさっきのは忘れてぇ!」
やめて。
お願いもうやめて。今はお風呂ぐらい1人で入りたい気分なのよ。それなのにこのお風呂と言う空間に美少女and美女×4人(服着てない)とか笑えないんだけど。
しかし現実だと言う事は認めなければいけない。
現実逃避するのは無駄に等しい行為だった。
因みに現在、ヴォラクは湯船に沈んだままだ。まだ息は保てる。窒息しないレベルまで水の中に身を潜めておく事にしよう。
「主様ぁ!しっかりしてください!」
(引っ張りあげるなぁ!)
「おい、窒息しちまうぞ、ヴォラク!」
(目を瞑らなければぁ!)
目を開けたらその先には最高の景色と何かを失ってしまいそうな存在が見えてしまいそうな気がした。目を開けるべきなのか、それとも閉じたままでいるべきなのか。
正直、どちらを選んでも深い落とし穴に落とされた様な気しかしない。
開けたら?何か失ってしまいそう。
閉じたままなら?何か自分に失望してしまいそう。
どっちが、どっちがいいんだぁぁぁぁぁ!
あ……………!
しまった………
「あの、その…」
間違えた。選択肢を間違えたかもしれない。
開けてしまった。意図的にではなく、自然的に目が開いてしまったのだ。ど、どうするべきか。
目の前には絶景と言うか、何と言うか素晴らしい景色が広がっていた気がする。
美しい気がしてきた。サテラ達4人は皆僕の事を見ている。
さぁどうしよう……
もう知らね。
一緒に入ろう。的な事だけでも言っておくか。
「い、一緒に入る?」
「主様!最初からそう言ってくださいよ」
「で、ですよねぇ……」
ヴォラクは諦める事にした。抵抗は無駄だと理解したからだ。大人しく一緒にお風呂に入る事にしよう。
だが、一応だが血雷とレイアに質問を投げかける事にした。
「ね、姉さんは大丈夫なの?僕一応男だし、姉さんだって…………女の子なんだから、恥ずかしくないのか?」
しかし、血雷は全く恥ずかしがる様な様子を見せなかった。まるで前にも同じ様な状況に陥っている様な雰囲気を出している。
羞恥心は皆無に等しいだろう。一応タオルは持っているが腰周りにしかタオルを巻いておらず、上半身は一切隠していない。あの豊満な身体を堂々と露出している。
ヴォラクは目を逸らしてながら、質問している為身体は見えない様にしているつもりだったが、やはり本能と言うか何と言うのだろうか首が横に勝手に、勝手に回ってしまったのだ。(本当に、決して見たくなって首を横に回したと言う訳ではない)
「ん?あ、アタシは別に平気だぜ?昔は弟と風呂ぐらい一緒に入ってたからよ。ヴォラクも弟みたいな感じだし、全然大丈夫だぜ?」
なんだろう。ちょっとだけ恥ずかしそうにしている所がまた、可愛く見えてしまうのは何故だろうか。
ギャップ萌えと言うヤツなのだろうか。血雷はいつも男勝りでクールながらも美しい所を見せる女性だったが、今みたいに少しだけ頬を赤くして緊張?している様な彼女にはギャップを感じてしまう。
しかしそこが何故か可愛く見えてくる。何故だ?何故なんだ?
「あの~私の事忘れてないよね?」
レイアが呟いた。
どうやら1人忘れ去られている様に感じたのだろうか。しかしそんな事はない。
忘れるとは言わない。
言わせない。
「僕は決して忘れてないよ。後、タオルは全身に巻いておいてOKだから!」
「よ、良かった~忘れられてなくて。それにタオルも巻いたままで良いなんて、それなら混浴も全然OKだよ!」
「マジかよ……」
湯船から上半身だけ出して話していたヴォラクだったが即刻引っ張りあげられました。
理由は簡単。
「主様ぁ!背中流してください!」
「おい、ヴォラク!背中流してやるから座りな!」
ヴォラクは状況を飲み込めずにいた。
だってそうじゃない?
いきなり、美女2人に腕を掴まれて、強引に引き上げられたんだよ?
しかも狙ってるかの様に身体を押し付けてくるせいで余計に状況が読めなくなってくる。
血雷の豊満な身体とサテラのまだ成長しそうな身体を自分の身体に押し付けられると言う状況に陥っているのだ。
飲み込めなくなっても仕方ないかもしれない。そして自分の下半身がエライ事になってしまっている事に今気付いた。
勿論、サテラと血雷にその所を見られた。見てる2人よりも見られてるヴォラク本人がとても可哀想な感じの表情をしていた。
「……ま、まぁいいですよ、私は。男の人ってこうなるのが、普通?なんですよね?」
「アタシの弟と比べるとやっぱ結構アレだな。凄いぜ」
「それ以上言わないで……こっちが悲しくなりそう……」
ヴォラクはガクンとした感じで顔を下に向けてしまっていた。
もう何も言いたくない。何も言われなくない。追求されたくない。
頼むから深入りしないでくれぇ!男としての尊厳が吹っ飛びそうだからさぁ!
もうやめてくれぇ!
その光景を少しだけ離れた所で見守るレイアとシズハ。
2人はあの3人の間にどうやって入ればいいのか分からなかったので、取り敢えず今は高みの見物と言う事をさせてもらった。
「な、仲良いね。ヴォラクとサテラと血雷さん」
「ま、一応レイアさんと会う前は一緒だったからね。あんな感じでも仕方ないかもしれないよ」
「え?じゃあ、シズハはどうしてあの輪に入らないの?貴方もあの3人とは仲良しなんでしょ?」
「確かにそうだけど、今は入れそうな雰囲気じゃないからね。今回はサテラに譲る事にする。それにこの前皆に黙ってヴォラクさんに………その、キスしちゃったから…………これで公平じゃないかな?って思うの」
その言葉に誤りはない。
シズハは前にサテラ達3人に黙ってヴォラクにディープキスをした時があった。これでは不公平にになってしまうかもしれない。
なので今回、シズハは不公平をなくす為にレイアと観戦するポジションに身を置いたのだ。
ディープキスと身体の洗いっこなら天秤に掛けても平等だろう。これで公平なはずだ。はず……
「て言うかさ、シズハ。私達も洗いっこしない?」
「それ、いいですね!やりましょう!」
「おいおい、僕に手を差し伸べ……」
「ヴォラク!今あらってやるからなぁ!」
「や、優しく洗ってくださいね?主様?」
「やめろ―――!死にたくない!死にたくない!死に………」
多分、死なないけど何故かヴォラクは死にたくないと叫び続けていた。
意味もなしにただ死にたくない、死にたくないと叫び続けていた。
しかし、その数秒後………
「ヴォラク!」
「主様!」
「うあああああァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
あ~その後の事はもうあんま良い思い出ないんで。話す気がなくなっているんで……
皆さん各自でご想像ください。




