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63話「闇夜の天帝」

 夕暮れ時の中でヴォラクは喉が張り裂けそうな勢いで叫ぶ。

 開戦を告げる笛の音の様に、ヴォラクは目の前に2本の長剣を持って目の前に立つ、レイアに向けて叫んだ。


「行くぞ!レイア!」


「来て!闇夜の天帝!」


 その天帝の力を解放した時、全身に駆け巡る様な得体の知れない力を感じた。発動はこれが初めてだった。何かも分からない力が流れてくる事に多少の不安はあるものの、使ってみなきゃ分からない事だってある。

 右腕を中心に身体中に変異した魔力が流れていく。それと同時に右腕は黒く染まっていく。

 ヴォラクの全身に力が漲っていった。


 右腕には天帝特有の変異型魔力が定着していき、右腕がどんどん黒色に染まっていく。手の甲には謎の紋章が刻まれている。

 この右腕には変異型魔力が定着している為、通常の右腕と比べると恐ろしい程の差があるだろう。

 それにこの右腕は記憶の中の存在を変異型魔力で具現化する事が可能だ。ヴォラクの記憶の中には今まで見てきたアニメや漫画、ゲームの道具や武器の記憶が山の様に残っている。

 この記憶を利用すれば、擬似的(素材等)ではあるが自分が使用できない(やってみたけど、出来なかった。剣や弓、魔法等全て)武器等を使用する事が出来る様になるのだ。


 しかしそれだけではなぁい!!

 この変異型魔力が定着し黒色に染まった右腕だけでも戦闘能力を得られるのだ。

 右腕を使えば、対人や魔物との肉弾戦や拷問にも使う事が出来る。もしも近接戦になる場合はこの右腕の能力で剣を創り出す(しかし、ヴォラクは剣を使うのが得意かと聞かれるとそうではない)

 かこの右腕で殴るかのどちらかだ。

 しかも今までヴォラクは近接戦がかなり苦手だった。この能力を使えばある程度だが、近接戦闘力を補う事が可能になる。

 理由は簡単。元々、ヴォラクは銃などの銃火器を使う方が得意なので近接戦には疎かったのだ。

 一応体術を用いた接近戦闘は行えない事はないが遠距離戦と比べれば近距離戦闘と遠距離戦闘の実力の差はかなり開いてしまっている。

 なので、この右腕を使う事でその差を埋める事が可能になるのだ。


 更にその力の恩恵は右腕だけではなかった。

 ヴォラクの背中に鳥の羽の様な翼が生えてくる。しかしその翼は羽毛で象られた翼ではなかった。その翼は近未来的であり、そして機械的な翼だった。右腕と同様で黒色になっており、翼の各箇所は剣の先端の様に尖っている。

 背中から現れた翼は両方の翼を使えば、全身を覆える程の大きさで、その漂う奇妙さとどこか美しさを見せつけていた。

 翼なので、飛ぶ事も簡単に出来るだろう。

 ヴォラクはまだカードを見ていないので知らないがこの翼には攻撃兵装も装備されている。全9基の装備が翼の内部に格納されているのだ。

 その武器は各1基1基が攻撃端末となっており、1期に全5門の魔力を発射する門がありそこからバスターブラスターと同じ様な圧縮された魔力を発射する事が可能になる。(魔力生成石は搭載されていないが、闇夜の天帝の恩恵により魔力が大幅に増大する為魔力生成石がなくとも運用が可能になる)自分の思考、脳波によりその全9基の端末を全て自分のコントロールによって動かす事で攻撃が可能になるのだ。

 そしてこの武器は自分で1基1基の端末を何処に向かわせ、どのタイミングで魔力を発射するか、更には全9基の軌道や本体に帰還するタイミングまで全て自分で制御する必要がある為、この武器を自分の手足の様に使用するには使用者には優れた思考能力や脳波、そして高度な空間認識能力が求められる事になる。

 ヴォラク本人の空間認識能力は高い訳ではない。しかし能力『闇夜の天帝』の恩恵があれば不可能ではない。ヴォラクはこの武器を使いこなせないとは考えていなかった。

 それにこれはまるで遠隔操作武器の様な装備だ。またはオールレンジ攻撃が可能な兵器と言った方が分かりやすいかもしれない。

 使用者、つまりヴォラクの脳にはリアルタイムで操作される全端末の情報が送受信される事になる。下手に使ってしまえば情報処理が追いつかなくなる可能性もある。

 恐らくだが、闇夜の天帝発動時のヴォラク以外はまともに扱う事は出来ないだろう。魔力通信により遠隔でも操作が可能になっている為その情報量は膨大だと考えられる。


 だがヴォラクはこの武器を使わないと言う気はなかった。この兵器は使いこなせればその力は絶大な力を持つ。

 なら追いついてみせるしかなかった。


 ヴォラクは背中に装備された機械的な翼で羽ばたかせる。空中に飛び上がると、天の更に上に行くかの如し飛び上がった。

 しかしヴォラクは逆の選択肢を取る。

 一定の高さまで飛び上がったヴォラクは翼を羽ばたかせるのを一旦止めて、空中に滞空する。

 一方地上に立つレイアはヴォラクが滞空する上の方を首を傾げて見上げ、2本の長剣を構える。

 レイアは2本の実態のない剣を構え、ヴォラクの攻撃に備えた。

 向こうがどんな攻撃をしてくるか分からない。レイアの息が荒くなる。心臓の鼓動も早くなってきている。これは緊張していると言う事だろう。

 レイアは落ち着けと自分に言い聞かせる。少しでも緊張を和らがせる為だ。

 レイアはヴォラクが攻撃を仕掛けてくるタイミングを待った。















 一方で空中に滞空するヴォラクはその魔力が定着した右腕を使い、その能力を発揮させる。

 右腕に定着した魔力であり専用能力の一つである『審判(ユーディキウム)』の能力、記憶の中の存在を変異型魔力により具現化する事が出来ると言う能力だ。

 早速ヴォラクはその能力を発動させる。

 ヴォラクは1度目を瞑ると脳内でどんな武器を具現化させるか想像する。想像すれば、想像した物の形を思い浮かべ、右腕に力を込めればその存在を具現化させる事が出来るだろう。

 ヴォラクは想像を続ける。ただの平凡な想像ではヴォラクにとっては無意味に等しかった。非凡的であり常識を覆す様な想像を行わなければ意味がないと感じた。

 剣、槍、斧、大鎌、弓、盾、魔法の杖、ビームサーベル、ビームライフル、バズーカ、刀、銃、何なのかも分からない装備、ありとあらゆる記憶をヴォラク蘇らせる。

 なら……………




















「やってやる!」


 ヴォラクは右腕に強く力を込める。ヴォラクの右腕から具現化される存在が創り出される。ヴォラクは歯をかみ締める。少しだけ苦しい声が漏れるがヴォラクは創造を止める事はなかった。

 ヴォラクが創り出した存在は単純な発送で生み出した存在ではなかった。

 自分が知る記憶の中で彼が創り出した物とは?


「行け!全ての剣よ!突き刺せぇ!」


 右腕からヴォラクの想像した何かが具現化された。地上に立っていたレイアも具現化された何かが何なのかは分かっていた。レイアは2本の長剣を構えて立つ事しか出来なかった。



 次の瞬間、ヴォラクの背後からこの次元を突き破って、異空間から無数の剣が飛び出してきたのだ。ありとあらゆる剣が次元を超えて現れる。

 その数は未知数だ。剣の種類も多種多様だ。ただの剣だけではない。特殊な力を保有した剣もあるだろう。

 ヴォラクの記憶の中に存在していた剣達なのでただの鉄等で作られた剣はほとんどなかった。

 派手な装飾が施されていたり、異形さを放つ様な剣、神々しさや禍々しさを放つ剣等その種類はあまりにも多いものだった。この全てを避け切るのは普通に考えれば不可能だろう。

 レイアもその剣の多さに驚愕してしまい額から冷や汗が出てしまっている。

 ヴォラクは想像したのは無数の剣だった。1本だけ剣を創り出したした所で2本の長剣を持つレイアに対抗出来るとはヴォラクは考えていなかった。1本強そうな剣を片手に突撃した所であの血雷の剣戟を受け止めたレイアに剣1本で向かうのは流石に無謀だ。

 そんな事をしていては、完全に自分が持つ本来の力の使い方を間違っていると言うしかない。


 異空間から召喚された無数の剣の矛先は全てレイアの方向を向いている。今にも剣達はレイアに向かって飛んでいきそうだ。

 しかし、ヴォラクは鼻からそうするつもりだった。ヴォラクはレイアに向かって手を向ける。


「行け……」


 その一言とレイアに向けた手が、全ての剣をレイアに向かって突撃させたのだ。

 あの全ての未知数の数の剣達が全てレイアに向かって突撃していく。

 レイアは飛んでくる全ての剣を見つめる。

 何故か避けようとはしない。その場に微動だにせず立っている。足を使って踏ん張って、避ける素振りは見せようとしない。ヴォラクは疑問だった。何故避けようとしないのか。

 あの剣の数の中では避けられないと悟ったのだろうか?

 しかしヴォラク的には避けてもらわないと、心配だった。

 だって本当の勝負じゃないもん。確かに本気で殺す気で行くとは言ったけどね。

 あくまでこの勝負は模擬戦と同じ様な勝負だ。もしも本当にレイアを殺してしまったらごめんで済む問題ではない。

 個人的にも悲しむ事になってしまうし、それに2日後には戦争が起こる事になってしまう。レイアがここで死んでしまったら戦争所の話じゃない。この国の兵士の皆さんも全員ヴォラクの事を恨むだろう。絶対に避けたいので、ヴォラクは殺す気で行く気があるとは言ったが、追い詰めて殺すとまでする気はない。

 しかし今の状況を見てたら本当に殺してしまいそうだから不安だ。

 レイアは突撃させた剣を一切躱そうとしない。もしも全部の剣がレイアに突き刺さってしまったら……


 ごめん、想像したくない。














「ヴォラク、凄いね…まさかこんな数の剣を…でも!私の本気を!」


 レイアが避ける素振りを見せなかったのは、最初から1本の剣すらその体に食らう事はないと言っているのと同じだったのだ。

 レイアは2本の長剣を持ち、自分なりの構えを取る。

 そしてRPGなどでお決まりな技名の様な言葉を叫んだ。

 きっと強い技を出すんだろーなぁ~(棒)


「アオフシュタント!」


 レイアが叫んだ瞬間、レイアの2本の実態のない長剣から長剣と同じ様な色をした神々しい光が飛び出してくる。

 ヴォラクはその光が眩しかった。レイアは地上、ヴォラクは空中に滞空していると言うのに、レイアの剣から放たれるその光の強さは大きすぎた輝きだった。

 しかし、実態のない長剣が2つ光り輝いたが、あれでどうやってヴォラクが創り出した剣の雨を凌ぐと言うのだろうか?

 見物だった。


(さぁ、どう凌ぐ?)


 ヴォラクの心には余裕があった。この剣の数だ。全本破壊したりするのは流石に無理があるだろう。

 まぁ、一応全部剣が破壊されたり全本避けられたりしてもその次の作戦があるから問題ないんだけどね。

















 しかし、レイアはヴォラクの予想を上回る行動を行った。ヴォラクもレイアの行動を見て大きく驚いた。


「なっ!?」


「その剣、全部壊す!」


 レイアの持つ2本の長剣が光り輝く。閃光の如く光る。

 ヴォラクにはその光が眩しすぎた。近場で見たら失明してしまうぐらいの光の強さだった。ヴォラクはレイアが何をしようとしているのかは分からなかったが確実に一つだけ分かった事があった。


 何か強大な技を使おうとしている事だけは分かった。もしもこの技を食らってしまえば致命傷所か死ぬ可能性も否定出来ない。


 その光の様な剣から放出される閃光の光は放電された電流の様にギラギラと輝いている。

 2本の長剣からこの光は放出されていたのだ。

 レイアの2本の剣の刃からは神々しい光が放出されているが、レイアはその長剣の握り手の部分を握る事をやめない。剣の刃の長さ自体は変わらないがその剣の刃から放出された光は何mぐらいの長さをしている。リーチの差を見ればその差はレイアの方が圧倒的に有利だ。


 あの閃光の様な光が剣の刃から放出されていると言うのに、レイアは恐れる素振りを全く見せず2本の実態のない長剣を大きく振り回し、ヴォラクが突撃させた剣に向かって振り回す。


 たった一振りだった。ヴォラクが突撃させた剣の数は分からないが体感的には50本以上は突撃させた気がする。(気がするだけ)

 レイアのたった2つの長剣の一振だけでヴォラクが召喚した全ての剣を消滅させたのだ。


 まぁ、想定範囲内だ。レイアも本気を出して戦っているのだ。まだ始まってばっかりなのにここで終わってしまっては面白くない。

 それにこれはまだ牽制攻撃だ。これぐらいでは倒れたりしないだろう(漂う雑魚キャラ感…ヴォラクの事を言っている)だってこれぐらいとかまだ牽制攻撃だとか絶対にやられ役のセリフにしか聞こえてこない。

 やめておこう。これ以上そんな事言うのは…………















 次のプランで行こう。

 今度は直接仕掛ける!



 ヴォラクは機械の翼を広げ、右手に血雷のビームサーベル同様に自己改造を加えたビームサーベルをズボンの腰のポケットから取り出し、起動ボタンを押してビーム刃を形成する。

 レイアが無数の剣に向かって攻撃を行った時、剣と閃光の光がぶつかり合い、周囲は目を焼く勢いの光で満ち溢れていた。

 つまりレイアも同じだ。レイアもこの光の眩しさに対して、目を逸らしてしまっているだろう。ヴォラクは光が少しだけ弱くなるのを待つ。それまでは空中に滞空する事にした。















 そして光が弱まっていた。ヴォラクが召喚した剣の存在は完全に姿を消し、レイアの剣から放たれた神々しい光も徐々に弱まろうとしていた。

 ヴォラクは狙い目はここだ!と感じ、機械的な翼を思い切り羽ばたかせる。本当の翼ではなく、機械的に作られた擬似的な翼なのでゆっくり加速していくのではなく、急速な加速を行い前方に音速の如くのスピードで駆けていく。

 その先に立つのはレイアだ。ヴォラクはビームサーベルを片手にレイアに突っ込んで行った。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」と喉から声を出して叫ぶ。こんなデカい声で叫んだのは久しぶりにも感じる。

 光の中を突き進み、その先に立つレイアの元に急行する。

 神々しい光の中を抜けるとその先には2本の長剣を持って待ち構えるレイアの姿があった。

 レイアの存在を自分の目で捉えるとヴォラクは機械の翼を折り畳み、ビームサーベルを両手で強く握り締める。

 両目が完全にレイアの位置、場所、その姿を捕捉した瞬間、ヴォラクはレイアに向かってビームサーベルの刃を振り下ろした。


「近接戦なら!」


「どう……かなぁ!?」


 レイアもヴォラクのビームサーベルに応戦する為、2本の長剣を使いこなし、ヴォラクのビームサーベルと鍔迫り合いを起こす。

 ヴォラクはビームサーベルを握り締め、徹底的にレイアに攻撃を命中させる為にビームサーベルを太刀筋関係なくただがむしゃらにビームサーベルを使い、振り回していた。

 ヴォラクは本当の剣なんて全く使った事はないので太刀筋などは一切分からない。


 なので大雑把な喧嘩スタイルの様な感じでビームサーベルを振り回していた。

 剣同士がぶつかり合い、火花が散る様な事はなかったが、互いに剣をぶつけ、時にはレイアを押していく時もあって、時にはレイアに押されている時もあった。夕暮れはもうすぐ終わりそうだ。

 太陽の様な光は徐々に大きな山の後ろに沈んでしまいそうになっている。

 決着は早く付けたい所だ。


(クソ!やっぱり近接戦の力はレイの方が圧倒的に上だ。まぁ姉さんでも止められたぐらいだからな………1度距離を…)


 ヴォラクはレイアの実態のない長剣と斬りあっていたビームサーベルの刀身を解除する。そうすればビームサーベルの魔力によって生成された刃は消え、ビームサーベルはただの少し大きな棒となる。

 レイアはヴォラクの持つビームサーベルと鍔迫り合いを起こし、体重を自分の持つ2本の剣とヴォラクのビームサーベルの方に傾けていた。しかし急にビームサーベルの刀身が消えた為、レイアは体のバランスを崩してしまい、地面に両手を付いてしまった。

 この隙にヴォラクは1度後方に下がる。闇夜の天帝を発動させている為走るのではなく、バックステップをする様な感覚で後ろに下がる事が出来る。この力は本当に便利だ。

 本当なら、本当ならここでバスターブラスターを使いたい。現在レイアとの距離はそれなりに開いていてバスターブラスターの射程圏内でもある。絶好の射撃ポイントでもあるのだ。

 しかし残念な事にレイアの後ろにあるのは彼女の国なのでもしもバスターブラスターを最大出力なんかでぶっぱなしたらあの城壁まるまるぶち壊すだろう。多分だけど壊れるのは壁だけじゃないと思う。

 それにバスターブラスター持ってきてないし。あんな重い武器常時持っているとか嫌だから。一々肌身離さず持ってるなんて事しないから。

 レイアと話し合う時に背中にバスターブラスターなんて重い物背負うかな?普通に考えたら背負わない。

 と僕は思う。


 因みにバスターブラスターはサテラに預けてある。もしかしたら訓練の時に使ってるかもしれないし。

 と言う訳なので、バスターブラスターが無いなら愛銃のツェアシュテールングを使えばいいと思ったが、これも選択肢としては正しくない。

 これは模擬戦ですよ!実弾入った本当の銃なんか使ったら、レイア死ぬぞ?この武器はまだ異世界の人達は誰も全く知らない技術で作られた武器なんだよ。下手に使うのは避けたいんだよ。もしもそこから情報漏洩したら大惨事になってしまうからね。

 それにこれはただの模擬戦だ。そうただの模擬戦だ。殺し合いの勝負ではない。本気の力を出しての模擬戦だ。

 なので………

















 レイアから離れた位置に立つヴォラクは右手でビームサーベルを握り、再び刃を起動させる。

 再びビームサーベルの持ち手の先から魔力によって形成された刃が現れる。

 ヴォラクはその目で前に2本の長剣を持って構えるレイアを捉える。

 レイアも同じだった。自分の先に立つヴォラクの事をほとんど瞬きせずに見つめる。


 ひゅるりひゅるりと風が吹いている。

 その風は少しだけ肌寒く、2人の髪の毛を揺らしていた。

 互いに見つめ合い、呼吸の音も小さくなり互いの武器を強く握り締める。


 刹那の間でヴォラクは前方に翼と自分の足を同時に使って走り出した。

 それはレイアも同じだ。レイアも自分の持つ全力の走りを見せた。運動は苦手じゃない。この2つの剣を使いこなす為に今まで何度も経験を積んできた。今更使えないなんて事はない。

 ヴォラクとレイアは剣を握り、互いに正面衝突する勢いで突撃した。


「レイィィィィィィィ!!」


「ヴォラクゥゥゥゥゥゥゥ!」


 夕日の様な光がギリギリの所で2人を照らしていた。






 その後2人は汗に血が滲むぐらいまでただ馬鹿になりながら只管に戦い続けていた。

 たとえ周りが暗くなろうとも、2人は自分の体が動き続ける限り、その体が朽ち果ててしまうぐらいまで互いの剣を振るい続けた。

 勝敗なんて気にしてはいない。どっちか勝ちでどっちが負けだとはない。

 ただ本気の勝負、本気でぶつかり合う事だけしたかったのだ。

 まるで戦いに飢えた獣の様に、ただぶつかり、互いの剣を交わし時には肉弾戦を行っていた。


 額や体から汗が滝の様に流れてもお構いなし。そんな汗は動き回っている内に空に輝きながら飛び散っていく。ヴォラクとレイアは一切見る事はなかった。








 そして模擬戦の全てが終わった頃。

 周りは暗くなり、2人は草原の地面に大の字で寝転がってしまっていた。

 今持てる自分の力を全てを出し尽くし、全く動けない状況に陥ってしまっているのだった。


 だけど……


 疲れた。こんな激しく動いた事ないもん。やっぱり程々が1番良いって事なのかな?

 う~ん……イマイチ良く分からねぇよ。





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