54話「その後」
さてと、宴が始まってどれぐらい経っただろうか?
正直な所腹もいっぱいだ。食べ過ぎたし飲み過ぎたかもしれなかった。
いや、僕よりも姉さんの方が飲んでた(酒を)気がする。
実際の所、今姉さんは飲み過ぎでベロベロに酔ってしまっている。そしてもう半分眠りかけている。
そして周りの楽しそうな雰囲気は冷めつつあった。一部の兵士はもう宴会場からは居なくなっていた。まだ残っている兵士達もそんなに多くはない。
メイド達はもう皿やコップ、グラスを片付け始めている。
さて、僕達もそろそろ撤退するとしよう。いい加減にいつまでもここにいる訳にもいかないからだった。それにここにいる意味も分からなくなってきた。
「さて、そろそろ撤退するか…」
「激しく同意します。主様」
「ふぁ~眠いです~ヴォラクさん」
「…………………………」←ほぼ寝てる
だが、何処で寝ようか?ここは宿屋でも自分の家でもないので、寝る場所なんて分からない。
え、もしかしてそこら辺の床で寝ろとでも?流石に嫌だね。
「なぁレイ、僕達は何処で寝ればいいんだ?床で寝ればいいのか?」
「さ、流石にそこまで酷くはないよ~大丈夫、ちゃんと4人分の部屋を用意してあるから後で案内してあげるよ」
「なるべく早くしてくれ。姉さんがもうベロベロだからな」
「りょ、了解」
と言って、レイアはヴォラクに対して敬礼を行った。
取り敢えず、姉さんを起こさなければ。
テーブルに顔を付けて、半場完全に眠りかけている。だってそうだよ。
酒が入った一升瓶を3本も飲んでたからね。それならベロベロに酔ってしまっても仕方ないかもしれない。
取り敢えずヴォラクは、血雷の肩をトントンと叩いた。そして「お―――い、起きてくれ~」と呼びかける。しかし簡単には起きてはくれなさそうだった。
「ふぇっ?もうあひゃ?」
「姉さ――ん、もう夜ですよ。寝るならベットで寝てください。部屋は用意してくれるそうだよ」
至ってヴォラクは真面目に話しているつもりだが血雷の方は完全に酔っていて、まともに話が通っていない。
「へ?もう寝るの?ならつれてけ、布団のにゃかにつれへけ!」
「はいはい、送る事ぐらいするよ。レイ、空いてる部屋に案内してくれないか?姉さんがもう完全に酔ってるからな」
「了解、じゃ着いてきてくれる?」
「今、行くよ。ほんじゃ失礼するぜ姉さん。よいしょっと」
ヴォラクはテーブルの近くに置かれた椅子に座って寝かけている血雷の傍に近寄る。
そしてヴォラクは血雷の事をおぶった。血雷はヴォラクにおぶられた事に気付いていたのか、血雷はヴォラクに体を預けた。おぶられるなりヴォラクの背中におぶられたままもたれかかった。
決して重くはない。決して重くはないよ。
でもね……困る事があったんだよ。
胸!胸思いっきり当たってるよ!しかもデカい!
いや、知ってたよ?
姉さんの胸が結構……いやかなり大きい事ぐらい。サイズで言うならFかGぐらいだね。
サテラ、シズハ、レイアとはサイズが違う。
サテラ←C
シズハ←D
レイア←E
ABC通りの並びだね。あれ?AとBは?………
一応僕は男だ。こんなの平常心を保ち続けるのは簡単じゃない!
興奮してしまいそうになるよ!
思いっきり当たってる。酔ってるせいでかなり強く背中にもたれかかっているので尚更柔らかい感触が背中に伝わってくる。
姉さんをベットに運ぶ前に僕が倒れてしまいそうだ。
だが、しっかりと意識を保て!自分!保てるはずだ。
頑張れ!
それによくよく考えてみたら、僕はいつもの様にサテラやシズハの身体を見ているじゃないか!それに比べればこんな事難しくも何ともない。
そう考えれば興奮する事も焦る事も倒れる事もなくなる!!
そう考えたヴォラクは落ち着いた。
「レイ、部屋って何処だ?」
「今案内するよ。ここからはそんなに遠くはないからね」
レイアはヴォラクの先頭を歩く。宴会場を抜けると道を歩く事になった。道を右に曲がり、左に曲がるを1回づつ行うと、レイアが足を止める。
「ここだよ。この部屋は血雷さん用の部屋、横の三部屋はヴォラク達3人で一部屋づつ使ってくれていいからね。じゃ後は宜しく!」
と言って、レイアは来た道を戻ってしまった。ヴォラクは血雷を背中におぶったまま床の上に1人で立っていた。
しかしずっと立っていると足が痛くなりそうなので、取り敢えず部屋のドアを開けて、部屋の中に入る事にした。
部屋の中は綺麗だ。さっき誰かが掃除した様だった。
ふかふかで寝心地が良さそうなシングルベットが1つ置いてある。その近くにはシンプルに1人用の机と椅子。そしてもう1つ部屋の中にドアが設置されていた。推測だがあの中にはトイレとシャワーがあるんじゃないか?と予想した。
何だかホテルの一室の様な空間だ。
そして壁には外を覗く事が出来る窓が設置されていた。
取り敢えず、ヴォラクはベットの近くにまで行き、おぶっていた血雷をベットの上に降ろした。
ベットに降ろすのには苦労してしまった。なかなか姉さんは背中から離れてくれず、接着剤でも付けられたかの様に離れてくれなかったのだ。筋力が強いせいだろう。お陰で離れてもらうのに時間が掛かってしまった。
それでもヴォラクは血雷を背中から離して、ベットの上に寝転がせた。
姉さんはもう半分寝ている。今軽く彼女の体を揺すったとしても起きないだろう。口から吐息を吐きながら、いつもの男勝りな性格の時とは違う様な感じで彼女が見せる寝顔はとても可愛かった。
すぅすぅと口を少し開けて呼吸をしている。
服もほぼはだけてしまっている。姉さんが着ている侍の様な服はおぶっていた時からほぼ脱げてしまっていて、身体の至る所が見えそうになっている。特に胸とか他にも肩や太ももも見えそうに、てか見えてる………………Vラインが可愛い……
なので置いてあった布団をかけてあげた。
そんな卑猥な姿を晒すのは絶対に良くないので。
後、酒を沢山飲んでいるせいなのか少しお酒臭かったけど……
さて、戻るとするか。サテラやシズハは向こうに置いてきてしまったからだ。ヴォラク本人もベットに座っていたので、立ち上がろうとしたが……
突然、姉さんに腕を掴まれてしまった。しかも寝たままで。
ヴォラクは自分の腕を掴む血雷の手から逃れる為に自分の腕を引っ張ったが、全然抜けない。
まぁ筋力あるなら握る力も強いよね……
(クソ!全然抜けねぇ!どんだけ握力強いんだよ姉さん!?)
暴れる訳にもいかないので静かに抜け出そうとしたが抜け出せません。
どうしようか……このまま腕を掴まれたまま添い寝か?嫌だよそんなの。
いくら姉さんとは言っても……流石に……
「………颯……」
ん?
「……い、い…いくなよ…颯」
寝言が聞こえてくる。颯と言っている。恐らく人の名前だろう。
しかし誰だ?『颯』って?もしかして元カレか?
姉さんにも彼氏がいたのか?
もしもいたなら何で今一緒にいないのか疑問だ。
こんなに美しい女性なのに……
すると、突然自分の腕を掴んでいた血雷の手が離れた。
さっきまでは思っきりな力で握っていたと言うのに、突然として自分の腕から手を離してしまったのだ。
再び血雷の方を見る。完全にご就寝の様だった。半分寝ている訳でもなく、完全な眠りに落ちてしまっていたのだ。寝顔は相変わらず可愛い。
ヴォラクは考える。
これ以上ここに長居する必要はないと考えた。そろそろ戻るか。
ヴォラクは自然と姉さんの頭を撫でた。髪の触り心地は良く、スラッとして伸びた赤い色の髪が綺麗に見えていた。
ヴォラクは振り返らずに部屋を出た。
(何か疲れちまったなぁ~僕も部屋貸してもらうか…いや待てよ、この後サテラとシズハとハッスルするから……同室か…)
部屋を出るなり、部屋の前にはサテラとシズハが既に立っていた。
まるでヴォラクを待つかの様な雰囲気だ。
2人が何を言いたいのかは分かっている。
「あぁ、何を言いたいのかは分かっているよ…部屋、一緒に行くか?」
「はい、お願いします♡」
「早く、早くしましょう♡」
もうヴォラクは何も言わなかった。ヴォラクは隣の部屋に行く事にした。
部屋に行くなり、ヴォラクは部屋に置かれたシングルベットの真ん中に座る。
座っていると、サテラとシズハが着ていた服を脱ぎながらベットに座るヴォラクに近寄ってくる。勿論だがヴォラクも服を脱ぎ始める。
すぐにサテラとシズハは裸体のままでヴォラクの傍にやってくる。
その後は部屋の扉が閉まり、誰も3人が行った事の光景を見る事はなかった……
しかし、さっき誰も見ていないと言ったが…
あれは嘘だ。
実は2人程見てた人がいたんだよ。
「な、何してるの?ヴォラク達は?」
レイアは驚きを隠す事が出来なかった。
自分の前から突然現れなくなってしまったヴォラクに会いに行く為、ヴォラクが休んでいると思う部屋に入ろうとした。
しかし入ろうとした時に事件?が起こった。
ヴォラクの部屋から、女性の喘ぐ様な声が聞こえてきたのだ。
しかも一つだけの女性の声ではなく、2人の女性の声が聞こえてきたのだ。
レイアは気になって仕方なかったので突撃する……のはやめよう。
間違っても「ヴォラク!何してるのぉ!?」なんて言って突撃する必要はないだろう。
なので、レイアはドアを少しだけ開けて部屋の中を覗いてみる事にした。だが覗いた事を若干後悔する事になった。
(はわわわわぁぁ!?あの3人何してるのぉ?ヴォラク、思いっきり腰振っちゃてるし!サテラとシズハもあんな顔になっちゃってるし!も、もしかして…あそこに私が行けば……私もヴォラクに……)
「何、覗いてんだ?」
「うぎゃ!?」
後ろから急に誰かから話しかけられた。
急に話しかけられたせいで変な声で驚いてしまった。
部屋の中にいるヴォラク達にはレイアの驚いてしまった時の声は聞こえていなかった。逆に聞こえてしまったら悲しくなりそうだ。
後ろを振り返るとそこにはさっきまでベロベロに酔ってしまって、寝かけていた血雷がニヤリと笑いながら立っていた。刀も持っていて、腰に携えているのではなく、左手に鞘に収められた刀を持っていた。
赤色の髪の毛は若干、乱れている。服も少し脱げかけていて、だらしない感じになってしまっている。
漂う寝起き感。て言うか寝起きだろ?絶対に…
え?でも待って、血雷ってさっきまでベロベロに酔ってて寝てたんじゃないの?
なのに今は普通な感じで立っている。もう酔ってないのかな?
「ち、血雷さん?酔って寝てたんじゃないんですか?」
「……酔いが覚めちまったんだよ……って言うのは嘘でアタシの状態異常回復魔法で酔いを無理矢理に覚まさせたんだよ。で、部屋ん中覗いて何見たんだよ?」
「え、えっとその、ヴォラクとサテラとシズハがその……」
「分かってるよ。あの3人はあんな感じの関係なんだよ。でもそこは察してやれ。付き合いはそれなりに長いらしいし…他人の関係にどうこう言う理由なんてないからな」
レイアは血雷の言葉に同情した。確かに他人の関係に自分が何か言う資格なんてないし、言う気もなかった。
しかし、レイアはここで良からぬ事を言ってしまった。
個人的にだけど……
「ちょっと聞きたいんですけど……血雷さんはヴォラクの所には行かないんですか?サテラとシズハがあんな関係なら、貴方だって…」
血雷は少しの間だけ口を開かなかった。血雷が見せるその表情は少しだけ悲しそうな感じがする。
「アタシはヴォラクの姉貴だ。そこに行くのは……まだ……まだ…アイツとあんな関係を持つのは……」
その表情はどこか悲しさを浮かべる様な表情だった。
まるで何かを欲する様な表情だった。欲しくて欲しくて、絶対に手放したくない。そんな事を思っている様にも思える。しかしそんな表情はすぐに消えてしまい、いつもの表情に戻ってしまう。
「そんじゃ、アタシは戻るぜ」
「え!もう戻るんですか?」
「あぁ、酔いが覚めたとは言っても……眠いんだよ、アタシは。それじゃおやすみ」
「おやすみなさい。血雷さん」
「堅苦しいんだよ。さん付けなのは、普通に呼び捨てか姉さんとでも呼んでくれればいいぜ」
そして血雷はクルッと後ろを向いて、自分の部屋に戻っていってしまった。若干ふらつきながらだったが。多分まだ完全には酔いが回復しきってないんじゃないだろうか。無理はしてほしくないものだ。
レイアは中の様子が気になって仕方なかったが、これ以上覗いたら何か大切なものを失いそうな気がしてしまいそうになった。
他にも、もしヴォラクにバレたらどうなるか分からないので、逃げる様にしてその場から去っていってしまった。
その後のヴォラク達3人は眠らない夜の時間を過ごしていた。
レイアはヴォラク達3人の事が気になってあまり寝る事が出来なかった。
血雷は部屋に戻るなり、速攻でベットに潜り込みいびきをかきながら寝てしまった。
(明日はどうしようか…また武器でも作ろうかな?)