25話「最高の夜」
まだ眠気が僅かながらに残る中でヴォラクは瞼を動かし目を開かせる。天上に眩しく光る光球が眩しく感じる中でヴォラクは目を擦りながら静かに目を覚ました。天上にあった光球のお陰で寝起きの時に起こる謎の目の痛みも自然と引いてしまい、体は僅かに重いとは言っても眠った後だったので仕方ないだろうとヴォラクは素直に割り切った。
「んんっ?起きた……か」
少しは体を休める事が出来ただろう。現に体の疲れは薄くなっているし、先程の様な息が上がってしまう様な疲れは一切残っていない。
そして意外な事に目を覚ますと、ベットの近くにはサテラの姿がなかったのだ。基本的には自分の傍にいてくれて寝起きの時もよく自分の隣にいてくれたサテラではあったが、今部屋の中を自分の双眸で見渡したのだが、彼女の姿はどこにもなく、それを補うかの様にしてシズハがヴォラクの近くに座っていてくれていたのだ。眠った後に起きて自分の近くにぴょこぴょこと動く可愛らしい獣耳と僅かながら自分性癖に刺さりそうな巫女服と撫でたくなる様な狐の様な尻尾を生やした十六歳の少女が寝起きの自分の傍に座っていてくれるなんて普通に考えたら有り得ない事だし、今現在起こっている事なので、ヴォラクにとっては非常に素晴らしくご満悦な状況だと思えてくる。やっぱり異世界っていいよね?よね?
「シズハ?サテラが見当たらないんだが、知らないか?」
ヴォラクは疑問に満ちている様な表情を浮かべる。普通サテラは自分に黙って何処かに行ってしまう様な女性ではないと言う事をこれまで過ごしてきた時間の中で分かった事だ。取り敢えず分からないなら聞いてみるのが吉だ、ヴォラクは素直に自分が眠り込んでいたベットの近くに置いてあった椅子に座っていたシズハに聞いてみる事にした。
「え、えぇっと…さ、散歩してくるって言ってました。眠気覚ます為にって言ってました」
そう呟いたシズハの表情はヴォラクから見ると、どこか不自然に見えてきてしまった。シズハは照れてしまっているかの様に頬を赤らめ、どこか恥じらい様な可愛らしい表情をヴォラクに見せてしまっている。それも動きもぎこちなく、呼吸も少しだけだが荒くなっており、口で呼吸を行ってしまっている。
「し、失礼しますね……」
そう恥じらげに一言ヴォラクに対してシズハは呟いた。それと同時に彼女は座っていた椅子から立ち上がると、ベットに座り込んでいるヴォラクの元に近付きそのまま多少の抵抗を見せる様な形ではあるが、シズハはどこか恥ずかしがる様な感じでベットに座っているヴォラクの隣に座り込み、安心したかの様にして自分の肩を押し付け、もたれかかってきたのだった。
勿論だが表情も恥らしい様な表情で、頬も赤らめている。まるでその姿は素直に恋人に甘える女性の様だった。
これって例の良い恋愛ゲーのイベントかな?
「甘えてるのか?シズハよ……」
「……うん…」
コクコクと首を縦に振って頷くと同時に、シズハは小さめの声でヴォラクに対して呟いたのだ。呟くと同時にシズハの耳は僅かながら動き、尻尾も可愛らしく揺れていた。
そしてこの静寂の部屋の中で発生している二人だけの空間が二人の心臓の鼓動を更に速めていく事となった。互いに何も話さなくなれば、部屋の中は静寂に静まり返り、何も聞こえない空間と化してしまう。もはや自分の心臓の鼓動だけでは他人の心臓の鼓動すらも聞こえてきてしまいそうな部屋の中でヴォラクとシズハはこの会話を最後に何も話そうとはしなくなってしまっていた。
すると、彼女がヴォラクよりも先に言葉を発したのだ。ヴォラクもいい加減にこの冷たく、誰も話さない様な状況を打破しようとはしていたのだが上手く切り出す事が出来ずに悩んでしまっていた。しかしヴォラクが何か言葉を発する前にシズハの方が先に言葉を呟き、ヴォラクに話しかけてきたのだった。
しかし内容を聞いた時、ヴォラクの思考は止まりかける事となってしまった。
「ヴォラクさん、私に…シてほしい事がある、の…」
「言ってみ、金くれとかなら却下するけど…」
和ませのつもりで気の利いた言葉を言ったヴォラクだったが、シズハのまるで動物の雄を愛し、求めている様な雌の様な狐の姿を見る限りでは下手な冗談や気の利いた言葉は安易に言えない状態だった。現に彼女は言おうか言わまいかと迷う様な感じでソワソワとしてしまっているし、その美しい瞳もどこか切なく見えてくる。
ヴォラクも一度息を飲むと、どんな事を彼女から言われても良い様にする為に身構える事にする。ほら、言うじゃない?身構えている時に死神は来ないものだって言うしさ?ある程度身構えておいて受け止められる様にする事にしよう。
するとシズハはヴォラクの両手を自分の熱く熱を持った自分の両手で握ると彼の耳元に口を近付け、耳元で静かな声で何か呟いた。あまりにも突然過ぎた事、そして身構えていたにも関わらず、想定外過ぎた事態にヴォラクは反応が遅れてしまい、情けなく、ヒッ!?と声を漏らしてしまう。そして耳が熱を持って熱くなり、少しだけではあるが身震いを起こしてしまう。
「ど、どしたの?何をしてほしい?」
「…私の胸を……」
その先は何故か聞こえなかった。もしかしたら聞こえていたかもしれないが、体感的には聞こえていなかった様な気がした。
何故かは分からないが聞こえなかったのだ。声が小さかったからだろうか、それともただ単に自分自身が彼女の話を聞く気がなかったのか、答えを見つける事は叶わなかったが、ヴォラクはそれよりも彼女がシてほしい事を素直にしてあげるのか、それとも断るのかどうするべきか少しだけ分からなくなり思考を回して必死になって藻掻くかの様にして考えてみる事にしたのだった。
取り敢えず、考える前に理由を聞いてみよう。考えるのはそれからでも遅くはないだろう。とにかくヴォラクは一旦冷静になり話を始める事にした。
「な、何故そんな急に?そして何で僕?」
「お、お礼みたいな事です。今までだって私は何度もヴォラクさんに助けられたし、初めて会った時だって命を顧みずに助けてくれた。だから、私に出来る精一杯のお礼です。私の身体を好き勝手にしてください。遠慮しないでくださいね?」
そう彼女がヴォラクに告げると、ヴォラクは一度だけ天井に顔を向け、シズハの方から視線を外した。
そして心の中で一言だけ呟いた「あの時助けておいて良かった」と呟いたのだった。
そう呟くのと同時にヴォラクは彼女をもし助けなかったら?と言う状況を脳内に思い浮かべてみた。もしあの時助けずに見捨ててその場から残酷にも立ち去ってしまっていたとしたら?恐らくあのまま放置していて、考えられる彼女の末路はそのまま魔物の慰め者か助けられたとしても永遠に廃人と化してしまうか、容赦のない死のどれかだろう。どこに転んでも悪い事しか起こらない。そう考えると助けておいて本当に良かったとヴォラクは感じた。
そしてもう一つの悩み事、彼女のこの願いを聞き入れるか、それともきっぱりと断るのか……
しかし!男としてこの世に生まれたのなら、断るなど言語道断!全てを飲み込めぇ!と言う近い所にいた誰かが呟いた様な気がした。ここで何も言わずに無言で断ったりあやふやな回答を彼女にしてしまえば、貧弱貧弱ぅ!とか言われそうで怖いのでヴォラクはやはり受け入れると言う選択肢を取る事にしたのだった。逆にここまで彼女に言わせておいて断るのも何故だか可哀想に見えてきた。
「分かった…お礼として受け取る、だから……来な」
その少しだけカッコよく見える様な言葉にシズハは更に頬を赤らめてしまう。胸に両手の拳を置き、口での呼吸は勢いを増している。シズハはヴォラクの言葉を聞き入れると素直にベットに座っていたヴォラクの前に座り込む。後ろから簡単に抱き締められる様に彼女はヴォラクの前に座り込んだのだった。
後ろから見える彼女の体もまた美しいものだった。今押し倒しても何も言われる事はないだろう。素直に彼を受け入れ、彼女も何も抵抗する様な事はせず彼に身を任せ、素直に受け入れてくれるだろう。無防備にも肉体を晒す彼女の姿がより一層美しく見えた。
「や、優しくお願い……こ、こんな事された事もないし、シてって言った事もないんだからね?初めてだから…」
「心配するな、優しくソフトにいかせてもらうからさ…」
そう優しげに語りかけると、シズハは恥ずかしそうな表情を見せながら、首を横に動かして後ろを振り返りヴォラクと目線を合わせた。恥ずかしい事はヴォラクにも分かりきっていた。まず彼女の胸を触る前にヴォラクは彼女の可愛らしく動く獣耳を触る事にした。正直こっちの方が触りたいと言うのが事実だ。おまけに尻尾もセットで付けてください。獣耳っ娘はマジで好きなタイプなので。
触ると決めたのなら最後まで徹底的に触るのが普通だ。まずは獣耳を攻めて、軽くお遊戯といこうじゃないかぃ。
「んぁっ…耳、敏感なのにぃ~」
彼女の震える声と同時に彼女の頭の上に生えた狐の様な耳がピクリと自我を持つかの様にして跳ねるかの様にして動いた。その光景を見れてヴォラクはご満悦、もう死んでも良いかもしれない←なら死ねよ
それと同時に敏感な所に触れられたシズハの表情は更に甘くなってしまう。息も荒くなり、気持ち良さそうな表情を異性であるヴォラクに躊躇いなく見せてしまっている。それに対してヴォラクは何故にどこかこの状況を楽しむかの様にして口元だけでニヤリと笑みを見せる。
「ふふっ、これからもっと気持ちイイ事になるよ」
そう言うとヴォラクは彼女の上半身に着ていた服を脱がせ始める。彼女は上下別の服ではなく、巫女服を着ていた為、ヴォラクは上半身に着ていた白い装束を手馴れた様な手つきで彼女の服を脱がしていく。肩が露出しそのまま綺麗な両腕を始めに彼女の健気で初々しく美しい肉体が顕となる。
そして肉体と共に現れた胸に付けられた下着、ヴォラクは彼女の体を触る為に下着の留め具をすぐに外してしまう。その先に見える景色は素晴らしい様に思えてきた。その目にその光景が焼き付けられた時、ヴォラクは思わず泣いてしまいそうな(泣いてない)程までに美しく健気な彼女の肉体に目が釘付けとなり目を逸らす事すら出来なくなってしまった。シズハも見られている事は概ね承知しているようで、見ているヴォラクを咎める様な事は一切せず、むしろ見てほしそうな表情をヴォラクに見せていたのだった。
「じゃ、いくよ?」
「や、優しく…お願い…」
そのまま彼はシズハの上半身に自らの両手を伸ばした。触り心地の方は各自のご想像にお任せ致します。
ある程度触り終えると、ヴォラクは軽めの口調でシズハに話しかける。シズハの方は完全に溶けてしまっている。表情も甘くなっていて、息も更に荒さを増していた。そんなに?ってツッコミたくなってしまったが、初めてなら仕方のない事か、とヴォラクは思ってしまった。
「どうでしたか?気持ち良かったか?」
「凄く……気持ち、良かったです…」
「またしてほしくなったら言えよ、僕で良ければシてあげるからさ……」
「はい!そうさせてもらいます!」
随分と可愛い顔をするじゃないか。ヴォラクはそう心の中で軽口を叩く様にして口には出す事なく呟きを見せた。そしてこの雰囲気である。よし、次のすてっふにイこうかな?
正直このまま二人でゴールインするのも悪くはなかった。二人目と?みたいなノリでそのまま結ばれると言う展開も悪くはないだろうとヴォラクは思っていたが、実はと言うとシズハもこのまま恩人であるヴォラクとゴールイン出来るならそれで良いと思っていた。
「ヴォラクさん……♡」
「シズハ……♡」
二人は目線を逸らす事なく静かに見つめ合った。しかもその距離はとても近く、顔同士がくっ付いてしまいそうな程までに近い距離であり、ヴォラクがもう少し顔を前に動かしてしまえば、簡単に彼女の唇を奪う事が出来る様な距離だった。このまま顔を前に動かしてしまえば、彼女の綺麗なピンク色で艶やかで美しい唇に自分の唇を重ねる事が出来るだろう。
実際シズハだって、キスしたいならしてくださいと言わんばかりに唇をヴォラクに差し出し、ヴォラクとの口付けに対する抵抗を見せようとはしていなかった。このまま口付け→ゴールインと言う流れでも二人は良かったと感じている。ヴォラクもシズハも今にも顔を前に動かして唇を重ねようとしていた。そして唇を重ねようとした時だった。
ガタッ!
何かが揺れる様な音と近くに置いてあったクローゼットから奇妙な音が聞こえてきたのだ。
えっ?まさかの先客が覗いてたのか?と悪い想像をしてしまったヴォラクはすぐさまその場から立ち上がり自分が持てる全力のスピードでクローゼットの前に立ちはだかったのだ。シズハも突然過ぎた出来事に目を見開き、目を丸くして、そんなヴォラクを見つめていた。ヴォラクはすぐさまクローゼットの取っ手を握り、全力でその扉を開いた。
「盗み聞きかぁぁぁ!?」
「ば、バレタァァァ!」
何と言う事でしょう、クローゼットの中に入っていたのは、見覚えのある紫髪でポニーテールの女の子、うんサテラですね。散歩しにいくとか言っていたサテラですね。間違いないです、確定です。
「さ、サテラ………謀ったな!サテラ!」
「も、も、申し訳ありません!主様!」
すぐさまクローゼットから飛び出し、ヴォラクに対して深々と頭を下げるサテラ。謀ったな!とは言ったものの、決して彼女に対して怒っている訳ではない。しかし彼女は深々と頭を下げ、ヴォラクに対して謝罪を行ったのだった。
あまりの超展開にヴォラクは少しだが驚いてしまった。イチャイチャしてたらクローゼットの中からどワットサテラが登場と言う流れに着いていけなくなってしまったからだ。
とにかく理由を聞いてみよう。話はそれからだ。
「な、何故、クローゼットの中に隠れていた?何かしら理由があるんだよな?って言うかいつから見てたんだ?」
サテラも降参した様な表情を見せると、素直に全てを話し始めた。ヴォラクもサテラの言葉を漏らす事なく聞き続けてあげた。
そしてサテラはシズハの方を一度だけ見ると、コクリと何故か頷いた。ヴォラクにはこの行動の意味が理解出来なかった。
「実はシズハに頼まれた事なんですよ。最初は主様に胸を揉ませて、その後は主様の相手をシたいってシズハが私に言ってきたんです。だから、その願いを聞き入れてあげる為にも、散歩に行くって偽って隠れてたんですよ。後、私は最初から最後まで見てましたよ?」
その言葉にヴォラクは一瞬だけ固まってしまうが、クローゼットの中に隠れていたのならしょうがない事かと割り切り、すぐさま固まってしまった自分から解放された。
そしてヴォラクはサテラの方ではなくシズハの方に向けて首を動かし、顔を向ける。腕を組み、冷静な眼差しでヴォラクはシズハを見つめた。
「シズハ……計画したのは本当か?」
「………はい……そうです」
そう言うと彼女は僅かにだが首を縦に振って頷いた。どうやら嘘と言う事ではないらしい。ヴォラクはシズハがヴォラクと交わりたいと言う願いがあった事に気付けなかった自分を少しだけ恨んでしまった。恐らく彼女はヴォラクの事が好きだったのだろう。それなのに何故気付けなかったのか?ヴォラクは左手で自分の顔を覆い隠し、天井を見上げる。
「来いよ、好きなら、相手してやるのが道理だ…」
二人だけに聞こえる様にヴォラクは若干控えめで内気な感じの声で二人に対して呟いた。その言葉にシズハは頬を赤くし、どこか嬉しそうな表情を浮かべる。サテラも同様に嬉しそうで恥らしい表情を見せると同時に頬を赤く染めた。
「あ、主様…私も良いんですか?」
「ここでお前だけ放置ってのも何か好きになれないからな、今日は三人で楽しもうよ?」
その言葉にサテラもシズハも嬉しそうな表情を見せると同時に互いに着ている服を潔く脱ぎ捨てていく。あまりに急な出来事にヴォラクは不意に目を閉じてしまいそうになったが、ヴォラクもすぐさま二人の手によってベットに寝転がされてしまい、着ていた黒色の服を半場無理矢理に剥がされる形で脱がされてしまった。
「ヴォラクさん、初めてなので、優しくお願いします…」
「主様…楽しみましょうね?」
「まさかのダブルかよ…」
その日の夜はハード且つロックな感じな夜となったのだった……




