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24話「旅の計画」

 


  ヴォラクは地面に転がっている死体に見向きもせずにその場を3人で立ち去った。

  きっと時間が経てば彼らの死体は腐り、骨となり土へと還るだろうと思っていた。ヴォラクはサテラとシズハを連れて、その場を立ち去って行った。














  「さて……今から何をするか?」


  「ヴォラクさん…今何か予定ないの?」


  「主様でも悩む時があるんですか?」


  「僕でも悩む事ぐらいはあるよ………僕は今、やりたい事がないんだ。ただの暇人さ…憧れだった異世界に来ても僕は暇を持て余してしまってるのかよ」




  今のヴォラクには目標や目的がなかった。

  しかし少し前までは二つの目的があった。一つ目の目的は自分を迫害し追放したクラスメイトへの復讐だった。一部を除いた全てのクラスメイトをこの手で虐殺する。それが一つの目標であり目的でもあったが、それをする事は今……出来ないのである。何故なら僕は…僕達はあの国から追い出されてしまっているからだ。これでもうあの国に戻る事は出来ない。それはクラスメイトへの逆襲も出来ない事と同じだったのだ。あの国に僕達はもう戻れない…戻る事は許されなかった。クラスの奴の顔を見る事もその顔を絶望の顔へと変える事も出来ないのであった。隙を見て、復讐を考えていたがもう復讐する事も出来ない。

  最大の目的を失ったヴォラクの気持ちはかなり落ち込んでしまっていた。しかしそれを表に出す事はしなかった。

  2人に無理をさせたくなかったからだ。無理に自分の考えを他者に押し付けるのは間違っていると思う。なのでこの事をあえてサテラとシズハには伝えていなかった。

 

  そしてもう一つは神への挑戦だった…違う神を殺す事だった。この異世界に自分達を勝手に召喚した神を…

  戦いを知らない自分達を呼び出して何がしたいのか?それが分からなかった。他人の命をまるで手札のカードの様に扱い、使えなくなった者から消えてゆく…

  それではまるで、死んでくださいと言われている様なものだ。もしも神がこんな馬鹿げた事を考えてでもいたら、ヴォラクには怒りしか生まれてこない。

  自分達に戦いを強要する神など自分から見ればただの邪魔者だった。だから奴を自分で殺すのだ。誰も殺らないと言うのなら自分が殺る気でいた。

 





  しかし神を殺す事は今の自分には到底不可能な事だった。まず戦力が違いすぎる。

  神とは言っても1人ではないだろう。配下や部下、仲間も居るだろう。その数は分からないが今のヴォラク達よりは多いだろう。

 

  たったの3人で神達を相手にして、殺すなんて事は……絶対に無理だ。今神達に戦いを挑めば間違いなく自分達が殺される。神達に勝つには仲間や武器も必要だ、しかし今のヴォラク達にはそれがなかった。

  神達を自分で殺すのはずっと、もっと先の話になりそうだった。…違う先の話ではない。出来ない事かもしれない。ヴォラクはまた一つ目的を失ってしまった。






  もう今のヴォラクには目的や目標は何もなかった。

 





  そしてヴォラクは目的と目標を失ってしまったのであった。
















  「もう僕には…目的も目標もないんだよ」

 

  「それって結構悲しい事だと思うよ。やりたい事が何もないなんて。普通に悲しいよ」


  「どうしますか?主様…」


 


  ヴォラクは頭を抱えて考える。少し頭を抱え、考えていると、ヴォラクの頭に一つの案が浮かんできた。













  「なぁ…サテラ、シズハ。この世界の全てを見てみないか?」


  「ヴォラクさん?この世界って…この世界全部を!?」


  「つまり……この全世界を旅するって事ですか?」


  「ああ……僕はこの世界をまだ見ていない。サテラもシズハだってそうだろ?この広くて、謎だらけの世界を見てみないか?」


  ヴォラクはそう言いながら雲が浮かび、光が照らす空を見上げた。

  その景色に感想を言う事はしなかったが、彼の心の中では彼の何かが「綺麗」と言っていた。

  自分の知らない所からもこんな景色がこの空を見る事が出来るのだろうか。それは今の自分には分からなかったが、この輝いている様な空を再び見れるだろうとヴォラクは思い続けていた……………




























  ヴォラクは旅を始める事にした。この旅がどこまで続くかは分からない。

  急に終わりを迎えるかもしれないし、自分の命が尽きるまで続くかもしれない。だがヴォラクはこの旅に少し心を踊らせていた。





  「もしかしたら、また新しい仲間が出来るかもな」


  「その時はちゃんと仲良くしますか?主様?」


  「女の子なら大歓迎するぜ!」


  「女癖を悪くしないでね?」


  「言われなくとも、そこまで僕は落魄れる気はないよ」


  吐き捨てる様にヴォラクは話して、ヴォラク達は元いた国から離れていった………














  「時間的に見て、今は午後三時ぐらいか?」


  「多分ね…時計無いから分からないけど、もうすぐ夕方になると思うよ」


  「宿…探しますか?」


  サテラは顔を赤くしながらヴォラクに言う。ヴォラクはサテラの元へと近づく。


  「顔赤くしなくてもいいよ。今夜は……」


  「分かっていますけど……もしも主様が誘ってきたら……」


  「ヴォラクさん~まさか宿でサテラさんを襲ったりなんてしないよね?」


  「なんだ?襲ってほしいのか?」


  「もしかしてシズハも主様と……」


  サテラの一言でシズハの顔は真っ赤に染まる。身体を少し震わせ、ヴォラクに掴みかかった。


  「絶対に!絶対に襲わないでね!私まだ処女なんだから、勝手に襲って勝手に奪ったりしたら!許さないんだから!」


  「いや……襲ってほしいのか?そっちから僕を誘ってくれるなら別にいいけどよ……」


  「知ってるわよ。サテラとしてるんでしょ?サテラとならまだいいけど、私とするのはもっと後だからね!」


  「知ってるよ…」


  ヴォラクは猫背になりながらシズハに対して小さな声で話した。






  ヴォラク達は宿を探す為に先へと進む事にした。空は僅かにオレンジ色になっていた。













 



  ヴォラク達が歩いていると、木や石も何もない地面に一つの建物が立っていた。見えるのはその建物と、微かに見える何かだった。

  何もない平原に建物が立っている。誰でも気付くだろう。






  平原に立つ建物は見た目は派手ではなく誰かが住んでいる様にも見えなくはないが、住む為にこんな何もない所を選ぶ人が居るのか疑問に思った。

  ヴォラクは建物に近付く。すると何か書いてあった。そして何故か読めた。





  「何だって?………………ここは宿屋か?それになんか宿泊以外にも休憩って書いてあるよ」


  「休憩?ここは休憩所でもあるのかな?」


  「でも、泊まる事も出来るんですよね?」


  ヴォラクはふと思った……











  (うん…ここラ○ホだね)


  ヴォラクは2人に「行くよ」と少し低い声で言った。サテラとシズハはヴォラクの背中に着いて行った…







  中に入ると、カウンターに1人の男が立っていた。男は客が来て嬉しいのか、1人で笑っていた。



  「おお!この宿を選んでくれるとはありがとうございます!で…どうしますか?宿泊ですか?それとも休憩ですか?」


  不気味な仮面を男に向けながらも、ヴォラクは小さい声で話を始める。


  「宿泊だ…早くしてくれ」


  そう言ってヴォラクは宿泊の代金を男の前に置いた。すると男は後ろから部屋の鍵を取ってきてくれた。

  男は鍵をヴォラクに渡すと彼の耳元で静かに囁いた。


  「今夜は…美人さん2人とお楽しみください」


  「それはどうかな?」


  そう小声で呟きヴォラクはサテラとシズハを連れて部屋に向かう事にした。

 









  階段を駆け上がり鍵で扉を開け、部屋に入る。中に入るとヴォラクは察している様な顔を見せた。

  いつも通り、ベットは一つだけだった。今度はサテラだけではなくシズハとも添い寝する事になってしまったのだ。しかし今までサテラと何度も添い寝をしてきたのでもう慣れっこだった。

  ヴォラクは仮面を外し、ベットに座った。ベットは柔らかくて硬く、冷たい地面とは全く違った。ヴォラクの身体は疲労していた。最近はあまり休んでいないからだ。ヴォラクはベットに座ると壁にもたれかかる。

  すると横にサテラが座ってきた。更にシズハもヴォラクの横に座ってくる。ヴォラクは2人に挟まれてしまった。

  これではまるでサンドイッチのハムだ。


  「主様…私も疲れているので、少し休みます」


  「私も疲れたよ…少し休憩」


  「分かった……僕も少し寝よう」




  そう言ってヴォラクは静かに目を閉じた。瞼が閉じ、ヴォラクの視界は闇に包まれていった……














  ヴォラクは目を開ける。部屋に変わりは一切なかった。

  しかし外は暗くなっていた。恐らくもう夜だろう。しかし腹は減っていなかった。


  「シズハ?起きてる?」


  「起きてるよ~」


  「サテラ?生きてる?」


  「生きてますよ~」


  サテラとシズハは先に起きていた様だった。ヴォラクはベットから立ち上がり、置いてあった椅子に座った。

  身体が少し重かった。寝起きだからだろうか?きっと寝起きだからだ…ヴォラクは寝起きに強い訳ではない。


  サテラとシズハは楽しそうに雑談していた。ヴォラクはその空気を壊さないように、2人に話しかけた。


  「サテラ、シズハ…ちょっと聞いてくれ」


  「「どうしたの?」」


  「この後の計画だ……まぁ旅の計画だな。予定としては、この宿の先…ずっと先に進む予定だ」


  「つまり、ずっと…ただ真っ直ぐに進むって事?」


  「ああ、そうだ…ただ真っ直ぐに…道が続く限り、僕達は進み続けるんだ。分かったか?」


  「主様の行く所なら…どこにでも着いて行きます。何も異論はありません」


  そう言うとヴォラクは僅かに笑い、サテラとシズハに対して少し声を上げて話した。


  「じゃあ…明日から…冒険を…旅を始めようか!」


  「「はい!」」


  「よし!僕はもう疲れたから、今日は休む!2人もやりたい事が終わったら寝ろよ。僕はまた休む!」


  そう言ってヴォラクはベットに入り込み、布団を被ってしまった。

  そしてそのまま動かなくなってしまった。まるで死体の様に……







  「主様…寝てしまいましたか…シズハ。私達も寝起きそろそろ寝よ…」


  「サテラ……ちょっと聞いてくれない?」


  「どうしたの?」


  シズハは恥ずかしそうな顔を見せ、サテラに話しかけてきた。サテラはシズハに近付くと、シズハがサテラの耳元で何かを話し始めた………











  その内容は2人の秘密になっていた。






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