幕間「翌日の粉物は『別人感』が異常」
マンモスうれピー奈と申します!
学業との両立を目指し『毎日投稿』を目標に掲げているので、応援の程よろしくお願いします〜〜!
※本作はカクヨム様にも重複投稿しております。
議論の末、たこ焼き機が二台あることから、正統派の『東雲たこ焼き』とフリーダムな『西南北のたこ焼き』を棲み分けして作ることとなった。
かつお粉の香りををプンプンと漂わせる東雲の鉄板とは対照的に、雑多な食材が入ることでカオスな様相を見せる西南北のホットプレート。
自身のたこ焼きが先にできたため、東雲は全員の皿に千枚通しを使って分配していく。
「みんな、舌がバカになる前に私の王道たこ焼き食べてみて!」
「バカってお前な……。見た目はよくできてんじゃねぇか」
「桜エビが飛び出ててかわいーねっ!」
「 お出汁のいい匂いね〜」
たこ焼きに一家言ある東雲の作品はなるほど見事な球型で、紅生姜や小ネギ、桜エビなど多様な具材によって見栄えが良い。ほんのりと狐色のそれは湯気と共に鰹と昆布の洗練された出汁の芳香を放っており、食欲をより一層かき立てる。
一口で頬張る西宮と江南に対し、猫舌の北上は半分に割ってから口に運ぶ。飛び出てしまいそうなほど大粒のタコを。彼女は危なげなく口に含めた。
「うん、やっぱお前の作るたこ焼き美味しいよ」
「シノちゃん、さすがは関西出身ね。お店で食べるのより食感が柔らかくて好みだわ」
手放しで称賛する西宮と北上。江南は口の中を蹂躙する熱さに悶えて涙目になり、手近にあった水をガブガブと飲み干す。
「あついっ、でも美味しい!」
みんなのリアクションを受けて、東雲はそうでしょうと得意げに自身も口に入れた。
「ちゃんと出汁の風味は出てる……。いやでも、水の配分が多かったかな?」
「ののちゃん、ちょー意識高い系じゃん」
「まあね。命かかってるから」
「かかってねぇよ」
江南は『たこ焼きジャンキー東雲』に見切りをつけて、竹串で自分たちのたこ焼きをお世話する。
「わたしらのもそろそろ食べよーぜ」
西宮の催促に頷いた江南は、「うちの自信作、食べてみてー!」と皆の皿に次々とたこ焼きを運ぶ。
「キムチカマンベールたこ焼きですっ」
キムチの赤みが強いたこ焼きは、箸で割ると溢れんばかりにチーズが中から溶け出た。背徳的な見た目のそれは、癖の強いカマンベールチーズにキムチの辛味がピリッとアクセントを加えていて、病みつきになる味。
「やるな江南。これガチでうまい」
「キムチのシャキシャキ感が新鮮ねぇ。お酒に合うかも」
ジャンクフードが好きな西宮には特にウケがよく、辛いものが苦手な北上でもチーズによって中和され、まろやかな味わいになっていた。
「これはこれであり……かな。粉物とチーズは元々相性いいし」
これは認めざるを得ない──といった東雲の反応に、江南は「よしっ!」とガッツポーズをする。
「じゃあ次は、あたしのヘルシーたこ焼きね」
北上はそう言うと、ミニトマトとアボカドが入っている、野菜メインのたこ焼きを全員の皿に配当する。
ミニトマトは加熱することで萎んで旨味が凝縮され、アボカドは柔らかな弾力で食感の邪魔をしない。
「うん、トマトもうまい」
「これチリソースとか合うかも!」
「確かに合いそうだな」
西宮と江南にはまずまず好評といった様子で、「これオリーブオイルで焼くのも面白いな」「わっ、それありー!」「あとチーズも合いそう。江南のやつと相性いいかも」と講評していく。
「ふふっ。エナちゃん、あたしたち相性いいって?」
「……ふーん」
素っ気ない反応の江南だが、抗議するようにつま先でツンツンと真向かいの北上をキックする。その行動を受けた北上は、小悪魔のようにぺろっと舌を出してみせた。
テーブル下のやり取りを知る由もない東雲は、「トマトが入ると洋風になるね。私はこのままで十分好きかも」と呟く。
「じゃ、最後はわたしの番だな」
西宮は満を持して、自身のたこ焼きを全て自身の皿に集めたのち、「おりゃー!」とマヨネーズを満遍なくかけた。
八粒ほどのたこ焼きに、致死量のマヨネーズがぶっかけられる様を他の面々は唖然として見届ける。
「ちょっと西宮、嘘でしょ!?」
「ビジュやばっ」
「卵何個分なのかしら。生活習慣病の足音がするわ」
驚愕する皆の表情を見咎めた西宮は、「卵は健康にいいんだよ」と暴論ついでに皆の皿にせっせと移す。
『うわぁ……』
それぞれマヨネーズによって変わり果てたたこ焼きのビジュアルに辟易しつつ、皿にこそぎ取ってから口にした。見た目以外は変哲のないたこ焼き、中には何が入っているかというと。
内部のサクッとした食感に、東雲は「なにこの食感。……天かす?」と疑問を口にする。
「ご名答。わたしのたこ焼きは、中にも外にも油ギッシリのコレステロールたこ焼きだ!」
自慢げな西宮に対し、あまりの油っこさに食の進まない面々は。
「おかしい……。たこ焼きはソウルフードのはずなのに、関西人の私の箸が止まっちゃう」
「失敗もたこパの醍醐味だよねー」
「あたしが十歳ほど若ければ美味しく食べれたのかしら」
そこはかとなく不評だった。
「……マヨネーズと天かすの量が少なかったら、美味しく食べれたかも」
「そうか。こればっかりは好みの違いだよな」
特に反省していない様子の西宮。
図らずも、東雲がコンパスハウスの食事を一手に引き受けている理由が垣間見えた瞬間だった。
♢
♦︎
♢
「きたがみの分、取ってあげるー」
「あら、ありがとう」
たこ焼きパーティが佳境に入った頃。
深刻そうな顔をした東雲は、箸を置いて「江南さん」と話しかける。
「その……ごめんなさい。たこ焼きパーティがこんなに楽しいものだと知らなくって、頭ごなしに否定してた」
「んーん、うちの方こそごめんね。ののちゃんのがダントツで美味しかったし、好き勝手に具材を買ったから、お会計たかくなっちゃったよね」
腕を組んでうんうんと首肯した西宮は、「邪道を極める前に王道を極めろってことだな」と偉そうにまとめにかかる。
「たまには贅沢もいいよね、だってパーティなんだから。……またみんなでやりたいな」
最初に比べて随分と丸くなった東雲は、ホットプレートを覗いてお目当てのたこ焼きを探す。
「江南さんのキムチたこ焼き、まだ残ってる? あれもう一回食べたい」
皆で探してみるが、江南作のたこ焼きは既に無くなっていた。そこで北上は、自身の皿に赤い球体が残っていることに気づく。
「あたしの皿に残ってたからこれあげるわよ。少し冷めちゃったけど」
「いいの? ありがとね、北上さん」
「あっ待って!」
江南は東雲の口に吸い込まれていくたこ焼きを認めると「それは食べちゃダメ……!」慌てて止めるが手遅れで。
一泊間を置いて、ゴフッとむせる東雲。
「からあぁぁーーーーいっ!! はっ!? なにこれ!? 」
あまりの辛さに舌が焼けるような感覚に陥り、「みず、みず!」と叫ぶ東雲。
西宮はその様子を見て、「お前タバスコ入りのやつ食べたのかよ! やば!」と爆笑する。
舌の痛みよりも怒りが勝った東雲は、「これ西宮の仕業!?」とキッと睨む。
西宮はまだ腹を抱えたままでいたが、「違う違う、江南の仕業!」と犯人を矢面に立たせる。
「江南さん? 本当なの?」
さっきまでの穏やかなムードとは打って変わり、鬼の形相で江南を詰問する東雲。
「違うんだって! たしかにタバスコ入れたのはうちだけど、きたがみに食べさせようとしたんだよ!」
その弁明は蛇足でしかなく、「……エナちゃん?」と江南を睨め付ける眼が二つ増える。
ピリピリと舌に痛みが残る東雲は、怒りが鎮火するわけもなく。
「もうたこパなんか、ぜっったいにしないんだからーー!!」
東雲がたこパを嫌う理由が、また一つ増えた。
以降、コンパスハウスでたこパが行われることは、しばらく無かったという……。
最後まで読んでいただきありがとうございます✨
ロシアンたこ焼きはお約束ですね〜! 不憫属性の東雲、こういう場面ではちゃっかり回避する北上。もちろん仕掛け人の江南と、見て見ぬフリをした西宮も悪いです!笑
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※次の更新は、『11/7 19:00』を予定しております。




