絶望少女が物乞いします!
絶望少女が物乞いします。
どうぞ見守ってあげてください。
都市、ゲビアーシスに建つ、木造の簡素な宿屋。
その一室で、黒髪茶目の少女マリアは一人反省会に浸っていた。
「絶対ドン引きされたよ。あんなの。」
つい先程の出来事を思い返す。
みっともなくドラゴンに追いかけ回されて泣き喚いた挙句、「一生養ってください」。
無理無理。私だったらドン引きする。
現にしてる。
視線を向かいのベッドに座る青年へと移す。
何食わぬ顔をされると余計にこっちの立つ瀬がなくなるからやめて!
頭を抱えていたところへ、青年が話しかけてきた。
「怪我はありませんか?」
突然のことに慌てながら、反射的に何度も頷く。
こんな状況でこんなやつにこんなに優しくできるとか、もしかしなくてもかなりのお人好しでは?
「先程の一生養ってくださいという話ですが…。」
本気で考えちゃってるぅうう!
いや、私としては助かるんだけど、善人すぎて逆に心配になってきた。
「ああ!あれはそのなんていうかドラゴンに追いかけ回されてパニックになっちゃってたみたいでだからその本気で考えてもらわなくても大丈夫というかそうされると私の顔が潰れてしまいそうというか」
早口で言い訳を並べる私を他所に。
「いいですよ。責任をもって僕が養います!」
「……………え。」
言葉が見つからない。
今この人はなんと言った?
初対面で気味の悪い人間を養うと言ったのか?
そういうことでいいのか?
青年は困りそうに笑いながら続ける。
「だって、放っておいたらすぐ死んでしまいそうですから。」
その言葉で、全てを理解した。
───コイツは私を馬鹿にしている!
そりゃそうだ。
こんなに情けない人間、他に見たことがない。ママに怒られている時のパパも、ここまで情けなくはなかった。
惨めだ。絶望的に惨めだ。
えも言われぬ悔しさから立ち上がり、青年を指差す。
「どうせ私なんかドラゴンに追いかけ回されてパニック起こしてた腰抜けビビり冒険者だよ!」
涙が滲む。
「…バカにされるくらいなら、死ぬ方がマシだし!!!」
勢いのまま宿屋の外へと歩を進める。
「あ、ちょっと───」
青年は腕を掴む。
私はそんな青年の制止を振り切り───いや、力強。
結果、青年の制止を振り切ることはできず、青年の向かいのベッドに座らされた。
青年は厳しい顔つきでこちらを見つめる。
「必要があるなら、僕は本気で貴方を養おうと思っています。だから…簡単に死ぬとか言わないでください。」
返事に困りつつ頷く。
本気だったんだ、アレ。
「でも、どうして私なんかに?そりゃ強い魔物は一人で倒せないし、お金は少ないし、ご飯は全然食べてないし…あれ、もしかして私って絶望的にダメなのでは?」
自分の現状に冷や汗が止まらない。
ご飯を食べる金すらないのは終わってる。
これはもう養ってもらうしかない。細かいことは気にせずに諦めよう。
青年は苦笑を浮かべながら手を差し出す。
「僕の名前はテオです。あなたの名前は?」
青年──テオの質問に涙を拭きながら答える。
「私はマリア。言っておくけど、魔物との戦いは期待しないでね。」
なんでこんなことしか言えないんだ私は!
もっとこう「よろしくね」とかあったでしょうが!
一方、テオは笑顔を浮かべながら私の手を握る。
「マリアって、なんだか聖女みたいで素敵な響きですね!」
おう。その言葉が一番刺さるんだよ。
「聖女みたいな名前してるのに生き汚くてごめんなさい…。」
ふてくされる私に、テオはフォローを入れてくる。
「そんなことないですよ!…僕の方が汚いですから。」
なんて人格者なんだ。
眩しすぎて心が爆裂痛い。
「とにかく疲れてると思いますし、ご飯でも食べに行きましょう!」
テオはベッドから立ち上がり、微笑む。
「この店の料理、全部食べさせてあげますね!」
…ダメだこの人。規模が違いすぎる。
「絶望的だ……。」
拙い文章ながら、ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回も絶望することでしょう。




