着信02:銃
「何で…親父が俺に送れるんだよ…」
……にしても呑気な書き方しやがって。顔文字とかうぜ。
「雄一く〜ん、居住許可持ってきたよ」
振り向くと神谷がいた。
「本人が行かなくてもとれるんだ…」
「私だからだよ!」
と胸を張る。
…まぁ、本当なんだから仕方ない。
「それにしても丁度よかった………。
神谷。俺、メール送るから手伝ってくれ」
携帯に目線を戻し返信を押す。
「神谷じゃなくて、光って呼んでほしいなぁ〜」
顔を近付けながら、言ってくる。
「わかったわかった」
顔を片手で押さえながらメールを書き続ける。
宛先 親父
件名
添付
本文
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何で親父が俺の方にメール出来るんだよ!おかしいだろ!
まぁ、こんなところか………。
「光、頼むぞ」
「あいあいさ〜」
軍隊の人みたいに敬礼する。俺は送信を押す。
「なぁ光?お前って帰りたいとか思ってないの?」
光の顔が暗くなる。
「帰りたいよ……。でも帰り方がわからないの」
…何となく予想はしていた。さっき拳銃を渡されたとき、すぐには帰れないって。
「やっぱ、最初に自分が来た場所は調べたんだよな…」
「当たり前でしょ!」
その時、携帯が鳴りだした。俺はメールを見る。
001
8/1木1:41
親父
件RE:
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実は喫茶店の野口さんとは昔からの知り合いだ。 ゆうちゃんがいないからもしやと思って野口さんに聞いてみたら時計から男の子がそっちに行ったって言うじゃないか。 野口さん、驚いてたぞ。 名前知らなかったからうちの息子だとは思ってなかったらしい。
………無駄に長い。まぁ、親父は異常じゃなかったってことだな。真相は結構、あっさりしてる。
「光も時計から来たの?」
わざわざ野口さんが警告してきたのだ。過去に行った人がいるはずなのだ。
「そうだよ……」
ならば、と聞いてみる。
「赤い光の球体とか出てきた?」
うーん、と光が考える。
「そんなの出てきてないなぁ…………。私は肝試しの時に、こっちに来たの」
やっぱ、肝試しに使われたんだ。
「とりあえず私の部屋、客人用に2つ寝室があるからそこで寝てね」
あくびをしながら光は寝室へと向かう。
「ぇっ?俺、ここに住むの?」
「当然よ。雄一君はトラクスも無いから何の価値も無いただの侵入者なのよ?
私がいなかったら今頃死んでるかもね」
さーっと俺の頭から血の気が引く。
「ぁ、訂正ね。トラクスが無いとは決まってないけど自由に使えなきゃ駄目だから。私は直感で使えたけどね」
それじゃぁねー、と手を振りながら光は寝室に入っていった。
「じゃぁ俺は現在、スパイ容疑とかがかかってるのか?」
最悪だ………。この国に得することが、出来れば疑いは晴れるかもしれないが…。
「無理、無理」
考えても仕方ないからもう一つの寝室に入る。
「ベッドでかっ!」
こんなにでかくて意味はあるのか…?
疑問に思いながらもベッドに入り寝ることにした。
持ってきた腕時計の小さな音が耳に入る。
私は何となく早めに起きてみた。寝室を出て部屋を見回すが雄一君は起きてない。せっかく久々の
同年代かつ同じ世界にいた唯一の存在。
起こすことにした。
「雄一君ー……」
物音をたてずに
雄一君の寝室に入ってみる。
私は自分の携帯─
充電はトラクスで作った道具やっている。
─で、ムービーをとりながら雄一君に進む。
「朝のドッキリ!
大作戦〜!」
小声で言いながら、ほうきを手に取る。そっと携帯を机にムービーが撮れるように置く。
「叩き起こすのはベタだけど……」
ほうきを振り上げる。
「それが王道よ!」
一気に振り下ろす。
「ぅ……ん?」
何故かほうきが腹に振りおろされるのが目に入る。
「ぐほぁっ!」
さっと光が離れて、携帯を持ってくる。
「何すんだよ!」
自分でもわかる。
俺は今、涙目だ。
「か〜わい〜」
ハッとした。光は、携帯でムービーを撮っている。
「保存!」
…終わった。
ドサッとベッドに倒れ込む。
「雄一君!起きて」
光がゆすってくる。あんな顔を撮られてしまった。
「…光ってさ。どうやって携帯、充電してるの?」
ふと気づいた疑問を述べた。
「電気自体は通ってるからトラクスで道具を作ったの!」
へこんでも仕方ないから起きる。
「俺にも作ってくれよ〜…」
「いいよ!」
話題を逸らして立ち直ろうとするが、
「この部分だけメール用に編集して野口さんに送っちゃお」
気力が抜け落ちた。
「雄一君〜?朝ご飯出来たよ〜」
俺は窓の外を見ていたが呼ばれたので、椅子に座る。
「自炊できるんだ」
地位が高いから、
てっきり誰かに作ってもらっていると思っていた。
「凄い?凄い!?」
朝からテンションが高すぎる。
「あぁ凄いな」
軽く受け流す。光が頬を膨らます。
「…意外と落ち着いてるね」
光が話を変えてきた。
「まぁ仕方ないだろ」
…マジで仕方ないが癖になってる。心の中の独り言も含めて。
「よく割り切れるね……」
光は暗い顔になる。
「まぁ、俺は引っ越したばっかで友達がいなかったからな。親父と連絡さえとれれば問題ない」
昔の友達を思い出すと切なくなる。
けどもう別れの挨拶は済んでいる。
「私は親にも友達にも連絡出来なかったからなぁ…」
確かに、野口さんが光の親に
「あなたの娘は異世界にいます」
だなんて言えないだろう。
「失礼だけど…君が来てくれて嬉しい」
光は笑った。二年間もこっちにいたから寂しかったのか。
「じゃ、私は予言の仕事があるから」
光は立ち上がる。
「近いうちに戦争があるかもしれないよ」
爆弾発言を残し光は部屋を出た。
「何をすればいいんだ…俺は」
これでは元の世界の二の舞だ。暇を持て余してしまう。
「じゃあ城を探索」
俺は今の立場も忘れて部屋を出た。
城の中を歩いていると肩に手をかけられた。振り返ると最初にあった男だった。
「あっ、どうも」
「どうもじゃねぇよ尋問の続きだ」
どういうことだ?
「あの魔女が妨害したからあの時は止めたが今はいない。
続きだ」
これまた面倒な。
「そんなこと言われたって本当のことはもう言いましたよ」
…怒ってる。顔が非常に恐い。
「カルシウムとってくださいね。じゃ」
俺はさっさと逃げ出した。が、ゴム銃を取り出して追ってきた。
「お前は侵入者なんだぞ!?分際をわきまえろ!」
な…そんな見方をしていたのか!
「差別!差別ー!」
俺は後ろに叫ぶがゴム弾でおつりが返ってきた。
「ちゃんと居住許可とってるぞ!」
「何ぃ!」
男の足が止まる。
「ちっ…じゃぁ尋問は出来ないな」
「サディストかロリコンだろ、お前」
…余計な事を言ってしまったようだ。
オーラが見える……気がする。
「図に乗るな……。居住許可があっても地位は私が上だ」
今度はマジのようだ。拳銃を持ち出した。
「勝手に発砲したら罪になりますよ〜」
内心、俺はかなり焦ってる。火薬の炸裂音が聞こえて目をつぶる。
「……アレ?」
どこかに掠らせるくらいはすると、
思ってたのに。
「一発目は普通は空砲って義務づけられてるんだよ」
男は拳銃をくるくると回しながら言う。
「昨日は一発目から実弾だったよ…」
「黙れ」
また殺る目になってる……。
にしても本当に切れやすいな。
「まぁ、安心しろ。二回も発砲音を出したら侵入者を発見した合図になる。だから私は撃たないさ」
色々考えているんだな……。
「あれ?じゃあ何で俺を見つけたときは二発撃たなかったんだ?」
「お前が武装した様子が無かったからだ」
毒とか持ってるかもしれないのに…。
「今回、戦争をふっかけようとしてる敵国は兵器として魔女を迎えいれたらしい。私はそういうのが嫌いだ。予知の魔女もな。」
「嫌いなのはいいけど光のことを魔女って言うな」
俺は差別が嫌いだ。別に差別されてる人の為とか正義感はこれっぽっちも無い。ただ気分が悪い。
「知るかよ。魔女は魔女だ」
「言う割には腰が上がらないんだな」
男がムッとする。
「黙れ。第一人間かもあいつは怪しいんだぞ?別の世界から来たとかなんとか…やっぱ、人間じゃねえ」
頭にきた。何でそこまで差別する!
俺は腰につけてあった護身用の拳銃を両手でもち男に向ける。もちろん、撃つつもりは無い。
「撃つ度胸も技術もないくせに…」
俺はギッと男を睨む。
「…そんな目も出来るのか。面白い。」
男は俺の目を覗きこんできた。
「この先、戦争があるだろうし………。ついて来い、ガキ」
「…雄一だ」
俺は拳銃をしまって男の背中を追う。
「はいはい、私は
ガーズだ」
私は息をふーっと、吐き出す。
「どうだった?」
目の前にいるのは、この国の王様。
「勝率はあまり高くないですね………。やはり敵国の魔女の存在でしょう」
国王はため息をつく。
「あの国の資源は素晴らしいほど豊富だというのに…」
私としては戦争は避けたいが…。
「魔女さえ消せば、どうにかなるだろうか?」
国王が藁にもすがるように聞いてきた。
「かなり勝率は上がるでしょう」
しかしどうやって、魔女を消すつもりなのだろう?
「例の細菌でも撒いてみるか……。これなら足もつきにくい」
例の細菌とは新種の細菌で人体の免疫力を大幅に下げる。
そこから病気になると免疫が無いから死亡する可能性が高い。
「…魔女にそれが通用するでしょうか」
私はそんな非道な手段は避けたい。
「それにもし細菌の存在に他の敵国が気付き利用されたら危険なのでは?」
とりあえずその手段にだめ出しをする。
「そうだな…しかも資源の収集が難しくなる」
国王がうなる。すると突然何かを思いついたかのように顔を上げる。
「魔女を暗殺すればどうにかなるだろうか」
「すでに過去に他の国が実践して失敗しています」
破壊に特化したトラクスはとんでもない力がある。だからこのままでは、勝っても大損害は免れないだろう。
「魔女に賄賂を出しても敵国は資源が溢れていて貿易は成功していて金は腐るほどある……」
それにしても、何故女性がトラクスを使うと魔女と呼ぶのだろうか。男性がトラクスを使えても魔法使いとかで呼ばれるだけなのに。
…女が力を持つと、恐いのだろうか。
「仕方ない………。対抗する力としてこちらも破壊に特化したトラクスを持つ者を雇うしかないな」
国王は立ち上がり部屋から出て行った。
「…結局、戦争はやるつもりなのね」
俺は今、城の地下の駐車場にいる。
結構、普通に自動車とかバイクがある。光は元の世界とは全然、差があると言っていたがこういったところは発達している。
「こっちだ」
俺が駐車場を見回していたらガーズが、俺を呼んだ。
「大型二輪……」
ガーズは大型二輪の前で待っていた。
「乗れ」
ガーズが先に乗って俺に言った。
「ノーヘル……」
「気にするな」
俺はガーズの後ろに乗る。ガーズは黒いゴーグルをかけている。
「お前の分のゴーグルは無い」
…仕方ないか。
俺がつけてもダサそうだし。
「どこにいくつもりなんだよ…」
まだ、どこにいくか聞いていない。
「射的」
「遊びかよ…」
ガーズはバイクを走らせた。
「ただし本物の銃を使ってな。お前に、銃の使い方を教えてやる」
風の音にかき消されそうになるが何とか聞き取れた。
後ろを振り返ると、城の全貌が見えた。
「城っていうよりは要塞だな……」
めちゃくちゃ武装してある……。
その時ハッとした。自分は日本語をしゃべっていない。しかもガーズも違う言葉でしゃべっている。しかし意味も分かるし言いたいことも、その言葉で言える。光との会話は確か、日本語だった。
街中には看板がたくさんあったけど、全部日本語じゃないのに読めた。
「…変なの」
まぁ異世界に来れたのだ。何でもありだろう。
街中は普通に信号とかがある。形は元の世界のものとは違ったけど。
生活面では今一つ、進歩していないようだ。エアコンやらパソコンなどの電化製品は少ない。
一応、電気スタンドやら扇風機はあった。
しばらくすると街の中なのに何故かフェンスに囲まれた、森があった。
「ここだ」
100パーセント、射的ではないだろ(汗
看板にはバトルロアイヤルとか書いてある。
「…射的じゃないだろ」
ほぼ確信。
「的は人でペイント弾を使って撃つ。的も襲ってくる。違いはこれだけだ」
「全然違うだろ」
射的の射の字も無い……。
「まぁ実戦に近いんだ。良い経験になる」
そんな経験欲しくない。
「帰っていい?」
「どうやって?」
…確かに城からは、随分離れている。
「仕方ないか…」
ガーズはフェンスの一角にある小屋で、何か話していた。
「子供を連れてやるつもりかい?」
人の良さそうなおじいさんだ。
「大丈夫だ。俺一人でも問題ない」
だったら連れてこないでくれよ。
「相手は二人じゃ」
そうおじいさんは言って色鮮やかな弾丸をガーズに渡した。
「今日は先にいたのか……運がいい」
何か呟きながら俺にペイント弾を渡す。
「相手って誰?」
「反対側の小屋からこれに参加した誰かさん」
…つまり、参加した人同士で撃ち合うのか。ガーズがフェンスの扉を開けて中に入る。俺も後に続く。森の中はじめじめしている。
「じゃ、やられないように頑張れよ」
ガーズは一人で森の中に駆け出した。
「え?単独行動?」
ゲームオーバーは、早そうだ。
「頑張りたまえ。
これを貸してあげるから」
おじいさんが応援しながらナイフをくれる。草を切るのに丁度よさそうだ。
「敵をみつけたら、迷わず撃つんだよ」
「あ、はい……」
そこまで馬鹿じゃないです……。
ペイント弾を拳銃に込めて走りだす。
弾丸のサイズがあっているのはガーズが先におじいさんに、教えたからだろう。
「…まぁやられないようにしよっと」
森の中に向けて歩き出す。
…これって実弾で、殺されたりしてもすぐにはバレないよな。……恐いな。
縁起でも無いことを考えながら森の中を進む。何かあからさまに毒を持ってる色をしたキノコが生えてる…。
その時、足が何かに引っかかった。
風をきる音が聞こえる。
「どわっ!」
気付いたら逆さまで宙吊りになっていた。足に蔦が絡まっている。
「…誰も撃ってこない」
ということは前回やった人がそのまま、罠を放置していたのだろう。おじいさんに貸してもらった
ナイフで蔦を切る。と、地面に落下して地味に痛かった。
「痛ったぁ……」
火にあぶられた芋虫のようにくねくねと俺は体をそらす…。人に見られたら恥ずかしい……。
立ち上がって一歩、踏み出したら地面の感触がおかしくて………
「うわっ!」
気付いたら穴に落ちてた。
「…落とし穴」
ムカッときながら、穴から這い出る。
「うざすぎる…」
テンションが落ちた。横を見ると折れた木の枝があった。
「これで確認しながら進もう…」
盲目の人のように歩き出す。
が、近くから銃声が聴こえた。
「木の上に登っておくか」
俺は木の上によじ登る。と、荒い息づかいがこっちに近づいてきた。姿が一瞬、見えた。
─ガーズじゃない。
男のようだが、ガーズではなかった。
そいつは何と俺が、登っている木の下で一休みを始めた。
チャンス……!
こっそり拳銃を下に向けて引き金を引く。衝撃が腕を伝わってくる。男の驚いた声が響いた。さすがにあれだけ近ければ外さない。
男の頭はペイント弾で真っ赤だ。それなのに手でそれを触ってその手でさらに顔を触りどんどん赤くなっていく。
「うわ、馬鹿だこいつ」
思わず俺は言った。男が俺に気づいて、悔しそうな顔をする。
「ガキにやられるなんて……」
とぼとぼ男は歩いて行った。
「…ガキで悪かったな」
ふてながら木を降りる。と、ガーズがこっちに走ってきた。
「待ち伏せとは…。頭を働かせたな」
いや、たまたま下に来ただけで本当は、放置しておくつもりだったんだけど…。
「あと一人だな」
ガーズはまた走りだした。
「ついていこっと」
俺も走りだそうとしたとき突然ガーズが振り返り、拳銃からペイント弾を打ち出した。
「へっ?」
ペイント弾は俺に、当たる…と思ったが服は赤くなってはいない。
「危ないですね」
後ろから声が聞こえた。振り返ると、
細い男がいた。
男の横の木は赤くなっている。男は顔だけ赤くなった木からだしている。
「察知して避けたか……」
その時、細い男が懐に手を入れた。
「わっ!!」
俺は急いで木に隠れる。ガーズも隠れたようだ。
火薬の炸裂音が聴こえて何かが風をきる。
「反射神経の良いガキだな」
…ガキってよく言われるな。てか、俺狙いかよ!!
「雄一、気をつけろ」
「今更かよ!!」
遅えよガーズ!危うく俺はゲームオーバーになるところだったぞ!
「…私が奴の気を引く。その間に木の上に登って狙撃しろ」
小声でガーズが言ってくる。
「え、な?ちょ!」
ガーズは上半身を、木から出して弾丸を放った。それを引き金に銃撃戦が始まる。
…狙撃なんて出来ねーよ。
文句たらたらで木に登る。ペイント弾がすぐ横を通り過ぎる。
─まぁ、当たっても死なないしな。
これと言って恐怖心も覚えずに木を登り続ける。そのうち木の頂上にたどり着いた。
…当たるかな。
両手で拳銃を持ち、狙いを定める。
ガーズはあまり攻めずに時々、挑発でしか弾丸を撃っていない。
外しても俺が撃たれるかもしれないだけだしな……。
男の動きが一瞬止まった。
当たれっ!!
引き金を引き弾丸を放った。が、狙いは外れて男が隠れるときに使う木に当たる。
…あっちゃ〜。
外してか………。
男が俺に拳銃を向けて弾丸を放つ。
「ちぇっ」
木から急いで飛び降りると弾丸が木の葉を散らす。
…一瞬、弾丸が止まった気がしたな。
「まぁこれはこれで結果オーライだ」
ガーズが横に飛び出て一発、弾丸を放つ。男の胴に赤いペイントが花を咲かす。
「………」
男はペイントをじっと見ている。
「…何でそんなに、的確に当たるのかわからないなぁ」
「慣れだ、慣れ」
じゃあ何で俺に撃たせたんだ……。
慣れてるわけがないだろ。
「じゃ、帰るか」
ガーズが歩きだした。俺はあとを追う。
「間違いない」
私はペイント弾を払いながら思わず呟く。
「あの少年だ。弾丸が止まった」
私はククッと笑ったあと森の出口を目指す。
「息抜きで来たのに彼を見つけるとは…これも運命か」
「ありがとうございました」
俺はナイフを返す。蔦を切るぐらいしか使っていないが、
役に立ったのは違いない。
「撃たれなかったのじゃな。よかったのぉ」
カカカッとおじいさんが笑う。
「ハハハ…」
軽く苦笑いをしてしまう。最後の弾丸は何かおかしかった。
…まぁ、いいか。
ガーズが俺の背中に視線を投げかけている。
「おい背中に毛虫がついてるぞ」
「嘘っ!?」
慌てて背中をはらう。おじいさんに笑われてしまった……。
「よし……最後、外したのは残念だが、お前の口癖をとっていえば仕方ないだろう」
…会って一応、一日目の人に言われてしまった。
「ところで何で、俺をここにつれてきたんだ?」
一番、気になったことを聞いてみた。
「目が気に入ったからだ」
……そんな理由で。
「まぁ、楽しかっただろう?命に危険も無いし」
「後半はな………。前半は楽しくなかった」
ガーズが首を傾げる。…まぁわからないだろう。
「このあとはどうするんだ?」
一応、聞いてみる。
「ほぉ、どこかに行きたいのか?」
うぐっ……図星だ。まぁ、そりゃ初めての街だしみたい気持ちもある。
「って朝と性格が、変わってないか?」
俺がハッとする。何かテンションが上がってる、この人!
「気に入ったから」
「それの一点張り!?」
ま、まぁ本当なら、仕方ないか。
「まぁ、このあとは特に予定は無い。」
少し残念だけど城には光がいるから別にいいかな〜。
「じゃあ、帰るか」
「雄一君、大丈夫かな〜?」
私は部屋に帰っても雄一君がいなかったから心配で心配でならない。
牢屋や尋問室を見て回ったがどこにもいない。
「…まぁ、生きてはいるかな。勉強でもしとこっかな」
私は携帯を開く。私は野口さんにいつも勉強内容を送ってもらっていつか、元の世界に帰った時に備えている。
ふと、雄一君が携帯の充電器を作って欲しいと言っていたのを思い出す。
「仕方ないなぁ〜」
雄一君の言葉を借りながら材料を探しに部屋をでる。
「彼を先程、みつけましたよ」
私は喫茶店でコーヒーを飲んでいる主に彼のことを伝えて、椅子に座る。
「よかった…ちゃんとこの国にいるんだね」
主は彼と大して年の差がない。
「じゃぁ、僕と彼であと一つ……」
コーヒーを主がすする。
「…捜さなきゃね」
「あれ?」
部屋に帰ってきたけど光はいなかった。携帯が置いてある。
「ムービーを消すチャンス……!」
さっと携帯を掴んで画面を見る。
「……勉強してたのか」
頑張ってるんだな…って早くムービーを消さなくては!
…見れば見るほど、ひどい顔だな…。
寝癖に寝起きの顔に何か目がうるうるなってる。その時
扉が開いた!
「何だ雄一君帰ってたんだ…あれ?」
俺の手にある携帯に気がつく。
「乙女の携帯を勝手に見るなんて…」
安堵の目から不信の目に変わる。
「ち、違う!ムービーを消そうとしただけだ!」
光がニヤ〜っと笑う。
「残念、ロックフォルダに入ってるからパスワードがわからないと消せないよ」
…何て奴だ。
「せっかく充電器、作ってきたのに…」
光の手を見ると一般のものとほぼ同じ形の充電器がある。
違うのはプラグだけだ。
「ごめん!」
さっと俺は謝る。
「ぅ〜ん…まぁ許してあげよう!」
よかった……。
早速俺は充電器をもらい携帯を開く。
「電池切れが恐くてメール出来なかったんだよな〜」
「だから使ってなかったのかぁ〜」
光が覗きこむ。
「親父にメールだな」
宛先 親父
件名
添付
本文
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まだ一日目の途中だけどこっちもそれなりには楽しく過ごしてるから、安心してくれ。
「送信っと」
鳩がメールを運んでいる、ムービーが流れる。
「でも、夏休みがおわる前には帰りたいなぁ〜」
「帰れるといいのにね……」
光は遠い目をする。するとメールが返ってきた。
001
8/1木13:23
親父
件RE:
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ゆうちゃんがわざわざメールをくれるなんてお父さんは嬉しい!(ノ∀・。)
でもお父さんは早くゆうちゃんが帰ってきてくれるのが一番嬉しい!こっちでも野口さんと一緒に帰り方、探してるからそっちでも頑張れよ。じゃあまたね。
「…あの短時間で、これを書いたのか」
どんなタイピングスピードだよ………。てか、仕事中じゃないのか……。
「ゆうちゃん、か」
光がぼそっと言った。




