パクったスローガン
3月28日。
春休み中も野球部は練習です。ドリンクの買い出しに行き、部員に一息付かせようとグラウンドに。グラウンドの隅で4人が一塊になって素振りをしていた。
「休憩!一息付こう。」
私は飲み物を持って、4人に呼び掛けた。
「ありがとう。」
野球部の部長であり、唯一の3年、石井・昭寛部長が休憩を呼びかけ、皆はバットを置いた。咲良は皆にファンタを配った。普通ならスポーツドリンクだが、咲良はいつもファンタを配る。ファンタは咲良にとって野球の神、手塚秀満がいつも好んで飲んでいたジュースだった。根拠は無いがファンタを飲むと手塚君の様に野球が上手くなるような気がしてならなかったのだ。それでいつもファンタを。野球部の4人も誰も文句を言わなかった。
「沁みるぜ。」
蛭田・修一郎がファンタ・グレープを一口、飲み干して言った。
「喉が渇いている時に飲むと最高だね。」
不破・光も同調した。
「汗をかいた後の喉に沁みる炭酸が堪らん。これの為に練習してるな。」
キャッチャーを務めるチームの要、黒田・元哉が4人の意見を総括する。私はこの瞬間が堪らなく好きなのだ。マネージャーをやっているって気がする。
「そういえば宮脇さん、新入生を勧誘するチラシ出来た?」
石井部長が私に訊ねた。前にも言った通り部員が5人足りない。先ずは最低9人揃えて青学単独で夏の大会に出るのが目標だ。
「こんなのでどうかな?」
咲良はポケットから四つ折りのチラシの下書きを取り出し、開いて見せた。4人は顔を突き合わせながらまじまじと見入る。石井部長が声に出して下書きを読んだ。
「野球部部員募集。
夢にときめけ 明日にきらめけ 目指せ甲子園。
伝統ある野球部の新しい伝説を作るのは君だ。
初心者歓迎。 親切丁寧に上級生が指導します。
青学野球部は甲子園に近い。 大会優勝経験有り。」
無言。咲良のチラシを読んだ4人は押し黙った。暫しの沈黙の後、蛭田が口を開いた。
「夢にときめけ 明日にきらめけ 目指せ甲子園ってどこかで聞いた事あるな。」
咲良はギクリとした。不破が答える。
「漫画だよね。「ROOKIES」。出てくるセリフそのまんまだね。」




