誕生日の終わり 最高の贈り物
海を見てみたい。一度でいいから。
心まで洗われていくような、淡いエメラルドブルーの海水。雪の降り積もった大地のような、真っ白な砂浜。
寄せては返す波の音を聞きながら、浜辺を歩けば、変わった色のヒトデや、複雑な形をした貝殻なんかを、そこかしこで発見できて。
まあ、そんな幻想的で美しい海を、お目にかかるには、どうも、本州からだいぶ離れた、沖縄県まで遠出しなくてはならないとか。
うん。相当、ハードルが高い。
けれど、そこまでの高望みをしているわけじゃない。
海水が濁っていたっていい。砂浜が汚くたっていい。
たとえ、どんな景色だろうと、あたしは、海を見てみたい。
おっと。
少々、その願いに執着しすぎだろうか。
何はともあれ、今日は、あたしの、十四歳の誕生日。
お父さんお母さんからは、新しい腕時計を、それに、なんと、お兄ちゃんからも、ちょっとした小物を、お祝いとして貰った。
といっても、お兄ちゃんは、そんなふうに、気を利かせることのできる人じゃないから、もちろん、品物を選んだのは、お母さんに違いないのだけれど。
そりゃあ、仕方ないよね。
いずれにせよ、プレゼントは、とっても嬉しかったし、ケーキは、一口目で満腹中枢を麻痺させられ、あっという間に、三切れもたいらげてしまった。
幸せ、か。
うん、その幸せを噛み締めていられた。
だけど、一番、感動したのは、申し訳ないけれど、家族とは関係のない出来事。
奇しくも、誕生日である今日、ある秘密を教えてもらったのだ。
あれは、最高の贈り物だった。
誰から貰い受けたかは、忘れるべきだし、絶対に思い出すべきじゃない。
その人に関することを、うっかり、家族や友達に喋ったりしないよう、記憶の底に、封じ込めておかなくては。
でも、その贈り物を、もう一度、開封するくらいなら、許されるよね。
あたしは、この村から、出ることができる――。
それを知ってしまったから、だから、海のことで、頭がいっぱいになった。
夕暮れ時の浜辺を歩いている、このあたし。
ひとりで、か。あるいは、誰かと、か。
欲をいえば、そう。
ん、待てよ。
あたしは、そもそも、普段から、眠りにつく前のまどろみの最中、こんなことを夢想していたような――。




