第二十話「再会」
「あれが魔王軍……」
「め、めちゃくちゃ多いんですけど!?」
「まるで百鬼夜行だね……」
キリアスさん率いる魔法騎士団に加わり戦場に赴いた私達。ミィルド王国に迫り来る魔王軍を見て、騎士団の皆さんは怯えている者が多い。
それもそのはず。
ここから見えるだけでも、百や二百なんて軽く越えていると思われる軍勢が迫ってきている。
「くそっ! こんな時に、団長も副団長も不在なんて……!」
と一人の騎士がぐっと拳を握り締める。
そうなのだ。
副団長さんは消息不明だが、団長さんは騎士団会議というものに参加するためミィルド王国を空けている。
本来なら副団長さんも共にするはずなのだが、いないため無理。
キリアスさんがついていくことも出来たが、キリアスさんまでミィルド王国を空けてしまってはもしもの時のために対処できないと、団長と数人の騎士さん達で赴いたんだ。
「そんなことを言ってもどうしようもないだろ! 俺達がやるしかないんだ!!」
「くっ! 今ミィルド王国にいる騎士は度重なる魔王軍との戦いで疲弊している者達が多い……今、まともに戦えるのは三百人弱……」
それに対して、あっちはその倍以上。
私達が倒した魔王軍は、魔法騎士団が戦って疲弊させたおかげだった。今度は、万全な状態での戦い。
あの頃よりも、私達は強くなっている。
でも……どこまで戦えるのか。
「皆! 臆してはいけません!! わたくし達は、ルストリアの平和を護る魔法騎士団!! 団長、副団長がいない今……ミィルド王国を護れるのはわたくし達だけですわ!!」
「キリアスさんの言うとおりだ!」
「やるしかなのよ……やってやるわ!!」
さすがは、キリアスさんだ。
皆のやる気が戻ってきた。
この調子で……。
「私達も!」
「よーし!! やったりますか!!」
「が、頑張ります!!」
「皆。あんまり先走らないようにね?」
戦いが始まる。
魔王軍の魔物達からは、ものすごい殺気を感じられる。私達も、応戦すべく武器を手に取る。
……そして。
「突撃ぃ!!! ですわ!!!」
キリアスさんの掛け声と共に、魔法騎士団は突き進む。自分達の後ろにあるミィルド王国の住民達を護るために。
「一番!! 加々美陽香!! いっきまーすっ!!」
先陣を切ったのは陽香ちゃんだ。
巨大な槌を振り上げながら走る姿は圧巻である。本来なら、あんな大きなものは私たちの細腕では持ち上げられない。
だけど、この異世界ルストリアに来て、そして神力のおかげで身体能力が飛躍的に上がっている。だからこそできる芸当なんだ。
「おりゃああ!!!」
「ぐああ!?」
「なんだこの小娘はぁ!?」
思いっきり振り下ろしたことで、大地は割れ衝撃波により魔物達は吹き飛ばされる。それに、私達は追撃とばかりに武器を振りかざした。
「てやぁ!!」
「はあっ!!」
吹き飛んだ地面から地面へと飛び移り、私と望ちゃんが魔物達を切り裂いていく。
「神なる力をもって、我は悪しきを滅さん!! 聖なる焔……《セイクリッド・フレイム》!!!」
そして、後方で呪文を唱えていたソフィーちゃんの神聖術が炸裂。
天より降り下りるは、神力の塊。
悪しき者達は、その焔にて焼き尽くされていく。
「す、すごい! あれが本当に十代の女の子なのか!?」
「副団長も、キリアスさんもそうだったが……神力はやはりすごい!!」
「私達も負けてられません!!」
私達が先陣を切ったことで、騎士団の皆さんが更にやる気を上げてくれた。その後は、私達の優勢で戦況が進んでいく。
この調子ならば、押し切れる……けど。
「さあえ! どれくらい倒した!?」
「えっと……四十かな?」
「私は三十五! ……全然減ってる気配ない!!」
その通りなのである。
全員でもう、何百をも越える魔物達を倒しているというのに、全然減っている気配がないのだ。まだまだ始まったばかりだけど……この先、疲弊していっていずれはこちらがやられるかもしれない。
「危ない! 我、神なる力にて汝らを護らん!! 《グロリア・ウォール》!!」
「あ、ありがとうございます!」
「助かりました!!」
「い、いえ。あ、回復します!!」
ソフィーちゃんは、攻撃、護り、回復に大忙しだった。私達も、軽い神聖術は扱えるけど。ソフィーちゃんほどではない。
「一気にいくよ!! 望!!」
「わかってる!」
「《ブレイブ・チェイン》!!」
私が呪文を唱えた刹那。望ちゃん達に神力が宿る。私が唱えたブレイブ・チェインは、勇敢なる者達に力を与える神聖術。
しかも、それが連鎖するように次々に付与していく。
「おお! なんだか力が湧いてくるぞ……!」
「いける! まだまだ戦えるぞ!!」
まだ倒れるわけにはいかない。
私達を受け入れてくれた皆のためにも。そして、まだ行方知らずの飛鳥くんと再会するまでは。
「いいですわよ! 大分神力の扱いにも慣れてきていますわね!!」
「はい! キリアスさんの指導のおかげです!!」
「では……こんなものをお見せ致しましょう!!!」
私達の成長が嬉しかったのか。いつも以上にテンションを上げて、槍を振り回すキリアスさん。すると、聖なる雷が槍に纏う。
「いざ……瞬雷の如く!!!」
しかして、槍だけではなかった。一瞬にして体全体に聖なる雷が纏い、目にも止まらぬ速さで魔物達を次々に薙ぎ倒していく。
「すごい!」
「体全体に雷を纏うこともできるんだ……」
「もっと使い方に慣れればこんなことも出来ますわ! さあ、続きなさい!!」
「よーし! 負けない!!」
「私も!!」
「皆さん! 援護は任せてください……!」
「ほどほどに、ね!!」
戦ってからどれほど経っただろうか。
少なくとも数十分は続いているかもしれない。さすがに、私達にも疲労の色が見えてきている。それ以上に、騎士団の皆さんはもう立っているのもやっとの人達も多い。
それなのに……魔物が減っている気配がやっぱりない。
どういうことなの?
「ちょ、ちょっときつくなってきた……かな」
「ソフィー、大丈夫?」
「は、はい……でも、神力がだいぶ……」
「まったく……どういうことですか、これは。増殖でもしているというのですか?」
増殖……もしかして、どこかに、魔物を増やすところがある? そうじゃないと、こんなにも倒して減っている気配がないなんておかしい。
「ふははははは!!! まさか、ここまでやるとは思わなかったぞ! 人間ども!!」
「誰ですの!?」
突如として戦場に高らかに響く男性の声。
魔物の軍勢の中に人? ううん……角が生えているし、肌も紫。明らかに普通の人間じゃない。
「我が名はマディス・オーバド!!! 魔王軍第三部隊の総括!! 魔王様の命により、長きに渡るミィルド王国との戦いに終止符をうちにきた!!」
剣を抜き放ち、天へと掲げる。
すると、切っ先から邪悪なるエネルギーが集束していく。
「いけない!!」
瞬時に、あの力がやばいと感じ取ったキリアスさんはマディスへ目掛け駆ける。
「遅いわ!! 闇に沈むがいい!! 人間どもが!!!」
「せやあぁ!!!」
「キリアスさん!!」
私達を護ろうと、闇へと突撃していくキリアスさん。だけど、明らかに私達でもわかる。あんなものに突っ込んでいけばただではすまないことを。
でも、私達が今動いても間に合わない。
キリアスさん……!
「うわああああ!?」
「あれー」
「いっえーーい!!」
「え?」
そんな時だった。
重い空気に包まれていた戦場をぶち壊すかのように、複数の声が……上から聞こえてきた。それは、真っ直ぐマディス目掛け……落ちた。
「ぐあああ!?」
「いたたた……お、おい。大丈夫か?」
「あはは、なんとか……」
「いやぁ、やっぱり、完全に力が戻っていませんからこうなっちゃいましたね~」
「おー! ここがルストリアか!!」
砂煙が徐々に晴れていき、見えたその人達の姿は……。
「飛鳥くん……?」
「あっ……えっと、よっ。任せたな、皆」
ずっと探していたクラスメイト……飛鳥くんだった。
ようやく、再会。
次回から、飛鳥視点からです。




