91 ジン! 静かにしなさい
午後になり、雨は止んだ。
三限と四限、いずれも三年生の授業。
心理的提案技法論と先鋭色彩技術論。
ジン、ラン、メイメイ、そしてアイボリーが出席。
ハルニナの姿はなかった。
昼休みの部活にはいたのに。
最近、出席率が低い。
単位が危ういというのに。
出席は必須ではないが、出席してくれないことには救いようがない。
ともあれ、今は目の前の学生たちに集中。
授業中は、もちろん私語は禁止。
しかし、演習ともなると、互いに見せ合ったり相談したりして会話が生まれる。
少々は大目に見ているが、殺人事件、という声が聞こえた。
抑えた声だが、聴きなれない言葉だけに、幾人かが振り返る。
「ジン! 静かにしなさい」
発言の主はしおらしく謝ったが、話しかけられた方のアイボリーは少し驚いた眼をして親友を見返していた。
仲良しの二人である。いつも並んで座っている。つい、話してしまったのだろう。
至急、かん口令を敷かねば。
ただでさえ白い目で見られがちな競馬サークル。その上に、殺人事件の捜査に首を突っ込むなど、大学当局に知れたら印象悪化は免れない。
四限終了のチャイムが鳴った。
今日の居残りには、珍しくランがいた。
いつもは終業のチャイムともに、プリントを投げ出すように提出して教室を飛び出していくのに。
ハハア、一緒に駅まで帰ろうという気だな。
ランはくりくりした金色の瞳を向けてきては、プリントに目を落とす。
手はもう、動いていると見せかけているだけ。




