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87 おばあちゃん子
「さあな。そんな感じはないぞ。もう、気にしてないだろ」
「なら、いいんや」
「ん? 何か、あるのか?」
「いや」
警察が再捜査を始めたことも、競馬サークルで「ケイキちゃん殺人事件」なるものの調査を始めたことなど、この友に話すことではない。
もし、アイボリーに再度の事情聴取が行われることになっても、きっと彼女には、改めて話すことなど何もないだろう。
ただ、彼女の気持ちに波風がまた立つかもしれない。ただ、それだけ。
「そんなことより」と、友は言う。
「実はな」
娘が最近、時々言うのだという。
「悔しがってるようなんだ」
「ほう。何を?」
俺の母親、アイボリーの祖母が自殺したんだ。
昨年のことだ。
それを思い出して落ち込むことがあるようなんだ。
お祖母ちゃん子でな。
たまにしか会わなかったのに。
「おまえには昔、話したことがあると思う」
ヨウドウの家系には小さな秘密がある。
そんな話を学生時代に聞いたことがある。
「おまえのお母さん、はその、離縁された、って話か?」
ヨウドウは言い出しておきながら、話すべきかどうか、迷ったようだ。
いつも大きなガラガラ声で話す男だが、声を潜めようとしている。
「そう……、それなんだが……」
箸を置き、髭剃り跡も青黒い、いかつい顎をさすった。




