86 イレギュラーな配役
アイボリーの代役にノーウェ。
そうなった理由はある。
大柄なアイボリーに合わせて作られた着ぐるみ。
もう一人、マスコット役のアルバイトはいる。しかし、彼女はその日、休みだったのだ。
他にもアルバイトはいる。
しかし、体が合わない。
しかも彼女らには、彼女らにしかできない役割があった。
高齢者の日常の不安と財団に対する要望の聞き取りアンケート。より重要でイベントの主目的である仕事が。
それを財団職員であるノーウェ自身がするわけにはいかなかった。
あくまで、第三者によるヒアリングという点に重点が置かれていたからだった。
ケイキちゃんの着ぐるみを身に着ける、つまり着替えを手伝う役にしても、本来、周山企画のアルバイトが担う。
しかし、現場ではアイボリーの到着を待って、時間を空費してしまった。
イベントの本質であるヒアリング開始の時刻が迫っていた。
ケイキちゃんは、いわば、広告塔のようなもの。
つまり、幟のようなものであって、それを優先するわけにはいかない。
結果、その場に居合わせた競馬場職員のルリイアが着替えを手伝うことになった。
不自然とはいえ、それ以外に手がなかった。
イレギュラーな配役にならざるを得なかった。
ただ、ノーウェもルリイアも、ケイキちゃんに全く素人だったかというとそういうわけでもない。
ノーウェは、自身が財団の担当者としてよく理解していたわけだし、ルリイアも元はといえば周山企画のアルバイト。
そして、今は競馬場内のイベント担当者である。
見て見ぬふりはできなかった。




