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87 娘を気にかけてくれて
昔のことだ。今更、なにが言いたいのだろう。
何十年も前に離縁された母親が、昨年、自殺した。こんな話を聞いたところで、楽しい話ではないし、もちろんなにか力になれる類のことではない。
大の大人の愚痴、なのだろうか。
「自殺の理由が分かったというんだ」
と言われても、頷くよりほかない。
「アイボリーが、か?」
「ああ」
ここ数年、高齢者の自殺死が急激に増えている。
世間は無関心であるばかりか、好感する風潮さえある。
社会を構成する人口ピラミッドが極端に歪な形となり、社会経済における高齢者福祉の負担があまりに膨れ上がっているからだ。
「娘を気にかけてくれて、俺は感謝している。娘の様子に、もし何か、変わったことがあるなら、そういうことじゃないかな」
結局、ヨウドウは母親の死について、それ以上は語らず、いつになく口数少なく食べ終えると、プレートを持って立ち上がった。
「なにかあったら、また話すよ」
箸やフォークは再利用の専用箱に、食器は流水で洗ってベルトコンベアーに、プレートはそれ用のテーブルに。
「ありがとう。次回の同窓会なんだが」
「それはまた今度。今から、部活がある」
「そうだったな」
友は話し足りなさそうだったが、すでに、広い食堂の奥にフウカのワンピースが見えていた。




