71 私たちも、協力できないかなって
ノーウェ。
乃生恵。
授業を受けていた卒業生で、サークル出身者。
思い出の多い学生の一人だった。
もちろん、素晴らしい思い出が。
半年前。
この京都競馬場でいつも開かれている再生財団のPRイベント中に死んだ。
イベントマスコット「ケイキちゃん」の着ぐるみの中で。
階段を降りようとして足を踏み外して。
そのはずみで着ぐるみ内に張り巡らされたワイヤーの一本が外れ、首に絡まって。
あの悪夢の日は今でも思い出す。
昼飯時のスタンド。
冷めた串カツにかぶりつこうとしたとき、フウカが走りこんできたのだった。
先生! 大変! ノーウェ先輩が!
発見が遅れたのか、階段の中ほどで発見されたノーウェはすでに息がなかった。
AEDも、心肺蘇生処置もむなしく、帰らぬ人となった。
状況から見て、事故死との判断。
講師として顧問として警察の事情聴取を受けたが、卒業後のノーウェとの付き合いはない。
イベント関係者として競馬場に来ていることは聞いていたし、遠くから姿を見かけることもあった。話した機会はごくわずかだったし、それさえ挨拶程度。
ジーオと違って、サークルOGとして一緒に競馬を楽しんだり、ミーティングに参加することはなかった。
警察に話せることは何もなかった。
居住まいを正したフウカ。
「リオンから聞いたんですけど、先輩のこと」
誰もが座り直し、次の言葉を待った。
「事故死、一旦はそうなったんだけど」
ジーオの目が険しくなった。
ノーウェの友人として、あの事故を最も悲しんだ人だ。
「疑義があるらしくて、再捜査になったそうなんです」
一旦、事故死という結論になったものを再捜査。
そんなことがあるのだろうか。
よほどの理由があるのか、何か圧力があったのか。
あるいは新たな情報が寄せられたのか。
「警察の事情は何も知らないけど」
フウカはあっさり、結論に持っていこうとする。
「私たちも、協力できないかなって」
「協力……」
「警察の捜査に」
「協力要請とか?」
ジンは、リオンからの、とは言わなかったが、それが滲んでいたのか、
「協力じゃなくてもいい。私たち自身でも、もう一度考えてみようかなって」
と、言い直したフウカ。
ジーオは「確かに」と応じたものの、瞳には不安が浮かんでいた。




