69 メイクデビューにこそ大きな拍手を送るのが本当のファン
なぜ外れたのか、あれこれ推察しても意味はない。
競馬解説者でさえ、外した予想の顛末は語らない。
圧倒的に外れた方が多いのだから。
サークルのルールとして、馬券はひとり一日最大三十六枚百円ずつと決めてある。日に五千円も賭けることはご法度。
普段、全員が最大の三千六百円を投入しているし、顧問であっても同様だ。
一レース三百円。
これを減らして、重賞レースのみ五百円という配分はOK。
当てればよいということではなく、あくまで今日一日競馬を楽しむというスタンスは譲れない。
一レース数枚の勝馬投票券を握って的中を楽しむということになる。
「メイメイ。今日、馬券は買った?」
「はい。馬連を。当たりました」
今日から入部のメイメイにフウカが気遣ってやっている。
実際のところ、フウカよりメイメイの方がかなり年上だと思うが、皆、年齢には無頓着。
しかもメイメイ、時として見せる大人っぽい表情は別にして、控えめで目立たない存在。
今も、小さな低い声で受け答えしている。
「よかったね! 何レースめ?」
「当たったのは第五レースのメイクデビューです。買ったのはそれとメインレースだけ」
「へえ。五レースは配当千円以上あるね」
「ハイ!」
「応援してた幼子ちゃんが勝って、うれしいよね」
メイクデビュー、新馬戦。
生まれて初めてレースに挑む二歳馬たち。
サークルR&Hでは、メインレース以上にワクワクするし応援もする。
厳しいトレーニングを経て、競走馬人生のスタートラインに立った馬たち。いわば、我が子が幼稚園に入り、初めての運動会に出るようなもの。
しかも誰もが運動会に出られるわけでもないし、ここで勝つことのできる馬は生産馬全体の三割にも満たない厳しい世界。
親としては、最高にうれしいし、必死で応援する、そんな気持ち。
有名馬がズラリという重賞レースではないが、サークルR&Hではメイクデビューにこそ大きな拍手を送るのだ。
オーナーや厩舎関係者の気持ちに思いをめぐらし、無事に走り切ってくれと祈る。
それが競馬を本当に愛するファンの証。馬を愛する気持ち。




